タイの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は2.5%、前年の2.0%から加速。
  • 輸出は堅調な米国向けが牽引し前年比5.4%増。
  • 対内直接投資認可額は前年比31.6%増の7,271億バーツ、国別ではシンガポールが首位に。
  • 日本からの直接投資認可額は前年比4.8%減の623億バーツ。

公開日:2025年6月24日

マクロ経済 
耐久財消費の低迷が足を引っ張るも前年から加速

2024年のタイの実質GDP成長率は2.5%と前年の2.0%から加速した。個人消費が前年から減速したものの引き続き経済成長を下支えし、公共投資や輸出の拡大も成長を後押しした。 需要項目別にみると、民間最終消費支出は前年比4.4%増と、前年の6.9%増から減速した。タイ政府の景気刺激策や好調なサービス消費がプラス要因となった一方、自動車を含む耐久財の消費が年間を通じて低迷したことがマイナス要因となった。家計債務の高止まりによるローン審査の厳格化の影響で、低中所得者がピックアップトラックを購入する際、ローンが却下されるケースが特に増加している。2024年の自動車販売台数は前年比26.2%減の57万2,675台と大幅に落ち込み、2009年(54万8,871台)以来の低水準を記録した。

国内総固定資本形成は前年から横ばいだった。2023年は5月の総選挙から内閣発足まで時間を要し、政府の予算承認、執行が遅れたものの、2024年は予算執行が順調だったことから、公共投資は4.8%増と前年(4.2%減)からプラスに転じた。他方、民間投資は自動車関連の機械設備投資の減少などの影響で1.6%減と前年(3.1%増)からマイナスに転じた。

財・サービスの輸出は前年比7.8%増で、2023年の2.4%増から伸び率が拡大した。うち、財の輸出が4.3%増と前年(2.6%減)からプラスに転じた。経済の不振が続く中国や日本向けが伸び悩む一方、経済成長の堅調な米国向けが好調で牽引役となった。他方、サービス輸出は25.5%増の高い伸びとなった。外国人観光客数が25.5%増と3年連続の2桁増を記録し、新型コロナ禍前の9割まで回復したことが要因である。

産業別にみると、GDPの6割以上を占めるサービス業が前年比3.9%増と2023年の4.2%増から減速するも堅調に推移した。サービス業で最大のシェアを占める卸売り・小売りが3.8%増と好調だったほか、金融・保険、情報通信、運輸・倉庫なども前年から加速した。一方、GDPの4分の1を占める製造業は0.5%減と、前年(2.7%減)からは回復したものの2年連続のマイナスとなった。

2024年のインフレ率は年間を通じておおむねタイ中央銀行のターゲットレンジ(1~3%)を下回り、通年で0.4%だった。低インフレの改善に加え、家計債務負担を軽減して低迷する景気をてこ入れするため、タイ中央銀行は2023年9月以降2.5%に据え置いてきた政策金利を2024年10月に2.25%へと引き下げた。2025年4月以降は、経済見通しの悪化にも備え、1.75%へとさらに引き下げている(同年5月時点)。

2025年のGDP成長率は、タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が1.3~2.3%、タイ中央銀行が1.3~2.0%、タイの主要経済3団体で組織するタイ商業・工業・銀行合同常設委員会(JSCCIB)が2.0~2.2%と予測し、軒並み前回予測から下方修正している。NESDCは公共投資の増加や、個人消費の拡大、低水準の失業率やインフレ率、観光活動の回復が成長を下支えするとしながらも、家計・企業債務の高止まりや世界経済・貿易の減速、各国の保護主義的な貿易措置、農業セクターの変動を下振れリスクとして挙げている。

表1 タイの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.6 2.0 2.5 1.7 2.3 3.0 3.2
階層レベル2の項目民間最終消費支出 6.2 6.9 4.4 6.6 4.5 3.3 3.4
階層レベル2の項目政府最終消費支出 0.1 △ 4.7 2.5 △ 2.3 0.4 6.1 5.4
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.2 1.2 0.0 △ 4.3 △ 6.1 5.0 5.1
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 6.2 2.4 7.8 4.1 5.9 9.9 11.5
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 3.4 △ 2.5 6.3 5.7 1.1 10.3 8.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)

貿易 
輸出入ともに過去最高を記録、輸出は米国向けが牽引

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比5.4%増の3,005億ドル、輸入が6.3%増の3,068億ドルといずれも増加し、輸出入共に過去最高を記録した。貿易収支は63億ドルのマイナスで、3年連続の貿易赤字となった。

輸出を品目別に見ると、主力の自動車・同部品が前年比3.6%減の310億ドルに減少した一方、コンピュータ・同部品(38.1%増の246億ドル)、宝石・宝飾品(24.6%増の184億ドル)をはじめ、機械・同部品(17.4%増の103億ドル)も2桁増を記録した。

輸入を品目別に見ると、原油が前年比1.3%増の326億ドルで引き続き首位となった。主要品目のうち、電子集積回路が24.7%増の244億ドル、宝飾品(金・銀地金を含む)が62.9%増の194億ドル、コンピュータ・同部品が150億ドルと大幅に増加した。一方、天然ガスは17.4%減少した。

また、輸出を国・地域別にみると、上位3カ国は米国(前年比13.7%増、550億ドル)、中国(3.1%増、352億ドル)、日本(5.3%減、233億ドル)だった。景気の減速や低迷が続く中国や日本向けが伸び悩む一方、経済成長の堅調な米国向けが好調で牽引役となった。また、世界から注目される有望市場インドへの輸出も16.2%増の118億ドルとなった。米国は、主要品目のコンピュータ・同部品が48.2%増の106億ドル、電話関連機器・同部品が22.3%増の47億ドルといずれも2桁増を記録した。中国は最大の輸出品目である果物(生鮮・冷凍・乾燥)が、国内需要の鈍化などから8.4%減の58億ドルに縮小した一方、コンピュータ・同部品が25.3%増の44億ドル、ゴム製品が7.8%増の31億ドルと拡大した。同年、中国の米国向け輸出が拡大したことで、コンピュータ・同部品のASEANからの調達が増えたと考えられる。

輸入を国・地域別に見ると、上位3カ国・地域は中国(前年比13.8%増、806億ドル)が引き続き首位で、日本(7.9%減、287億ドル)、台湾(24.4%増、207億ドル)が続いた。国内での生産過剰が指摘される中国からの製品流入が増加するとともに、台湾も2桁増と大きく伸長した。中国は主要品目の電子機器・同部品(26.5%増の112億ドル)、機械・同部品(23.5%増の82億ドル)が好調だったほか、宝飾品(金・銀地金を含む)が2.9倍の66億ドルに急増した。台湾は主要品目の電子集積回路が45.4%増の107億ドル、コンピュータ・同部品が99.0%増の52億ドルと大きく伸びた。米中対立などを背景に、中国や台湾企業によるタイでの生産拠点設置が加速する中、両国・地域からの製造業分野における輸入も拡大したとみられる。また、ASEANは4.0%増の505億ドルで、うちベトナムは18.1%増加し、域内でマレーシアに次ぐ輸入相手国となった。

表2-1 タイの主要品目別輸出 [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 輸出(FOB)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車・同部品 32,184 31,042 10.3 △ 3.6
コンピュータ・同部品 17,820 24,610 8.2 38.1
宝石・宝飾品 14,787 18,425 6.1 24.6
ゴム製品 13,237 14,239 4.7 7.6
機械・同部品 8,791 10,316 3.4 17.4
精製燃料 10,194 9,195 3.1 △ 9.8
エチレンポリマー等 8,877 8,794 2.9 △ 0.9
電子集積回路 9,702 8,687 2.9 △ 10.5
化学製品 8,056 8,422 2.8 4.6
電話関連機器・同部品 6,441 7,963 2.7 23.6
合計(その他含む) 285,074 300,529 100.0 5.4

〔注〕再輸出を含む。
〔出所〕タイ商務省

表2-2 タイの主要品目別輸入 [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸入(CIF)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
原油 32,179 32,604 10.6 1.3
電子集積回路 19,587 24,428 8.0 24.7
機械・同部品 21,236 21,986 7.2 3.5
電子機器・同部品 21,567 21,716 7.1 0.7
宝飾品(地金銀、金を含む) 11,924 19,424 6.3 62.9
化学製品 17,817 17,733 5.8 △ 0.5
コンピュータ・同部品 9,977 14,956 4.9 49.9
その他金属・スクラップ 11,230 12,943 4.2 15.3
鉄・鉄鋼製品 13,168 12,225 4.0 △ 7.2
天然ガス 11,520 9,511 3.1 △ 17.4
合計(その他含む) 288,509 306,810 100.0 6.3

〔出所〕タイ商務省

表3 タイの主要国・地域別輸出入(再輸出を含む総額ベース)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 171,585 175,916 58.5 2.5 192,054 208,094 67.8 8.4
階層レベル2の項目日本 24,594 23,286 7.7 △ 5.3 31,195 28,735 9.4 △ 7.9
階層レベル2の項目中国 34,173 35,243 11.7 3.1 70,827 80,608 26.3 13.8
階層レベル2の項目香港 11,097 10,851 3.6 △ 2.2 2,612 6,188 2.0 136.8
階層レベル2の項目台湾 4,814 4,757 1.6 △ 1.2 16,603 20,661 6.7 24.4
階層レベル2の項目韓国 6,073 5,938 2.0 △ 2.2 8,671 9,343 3.0 7.7
階層レベル2の項目ASEAN 67,095 70,165 23.3 4.6 48,543 50,463 16.4 4.0
階層レベル3の項目マレーシア 11,965 12,335 4.1 3.1 13,118 13,721 4.5 4.6
階層レベル3の項目ベトナム 11,217 11,770 3.9 4.9 7,738 9,139 3.0 18.1
階層レベル3の項目シンガポール 10,240 10,364 3.4 1.2 8,128 7,395 2.4 △ 9.0
階層レベル3の項目インドネシア 10,092 9,472 3.2 △ 6.1 8,278 8,763 2.9 5.9
階層レベル3の項目フィリピン 7,982 7,769 2.6 △ 2.7 3,104 3,212 1.0 3.5
階層レベル3の項目カンボジア 6,445 9,239 3.1 43.4 1,598 1,211 0.4 △ 24.2
階層レベル3の項目ラオス 4,644 4,929 1.6 6.1 2,987 3,358 1.1 12.4
階層レベル3の項目ミャンマー 4,411 4,174 1.4 △ 5.4 3,024 3,001 1.0 △ 0.8
階層レベル3の項目ブルネイ 98 112 0.0 15.0 568 664 0.2 16.9
階層レベル2の項目インド 10,116 11,755 3.9 16.2 5,925 5,697 1.9 △ 3.8
階層レベル2の項目オーストラリア 12,215 12,329 4.1 0.9 6,840 5,513 1.8 △ 19.4
階層レベル2の項目ニュージーランド 1,407 1,591 0.5 13.1 838 887 0.3 5.8
EU 21,959 24,205 8.1 10.2 19,754 19,328 6.3 △ 2.2
英国 4,074 4,196 1.4 3.0 2,668 2,462 0.8 △ 7.7
アラブ首長国連邦 3,315 3,641 1.2 9.8 15,747 17,047 5.6 8.3
サウジアラビア 2,732 2,850 0.9 4.3 6,149 5,044 1.6 △ 18.0
米国 48,353 54,956 18.3 13.7 19,307 19,529 6.4 1.1
合計(その他含む) 285,074 300,529 100.0 5.4 288,509 306,810 100.0 6.3

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕タイ商務省

対内直接投資 
対内直接投資認可額は初の7,000億バーツ越え

タイ投資委員会(BOI)によると、2024年の対内直接投資の認可額は前年比31.6%増の7,271億バーツとなり(2025年2月10日付ビジネス短信参照)、統計をさかのぼることができる1995年以降初めて7,000億バーツを超えた。

国・地域別にみると、首位はシンガポールで前年比2.3倍の2,244億バーツとなり、全体の30.9%を占めた。2位が中国で、39.8%増の1,744億バーツ、3位が香港で3.6倍の714億バーツ、4位がオランダで9.9倍の672億バーツとなった。日本は5位で4.8%減の623億バーツとなり、2023年の4位から更に順位を下げた。

2024年は、前年に続き中国からの電気自動車(EV)関連投資が好調で、比亜迪汽車(BYD)や広州汽車グループ傘下の広汽埃安新能源(AION)が相次いでタイ工場を完工した。対内直接投資認可額の国・地域別の順位ではシンガポールが首位となったものの、タイ政府によれば、シンガポールからの投資に占める中国系企業の割合は小さくないと言われており、中国の存在感は依然として大きい。

タイ政府が産業高度化を目指す「タイランド4.0」で重点産業とする12分野(Sカーブ産業、注1)への投資状況をみると、タイ資本も含めた投資申請額は前年比26.0%増の7,867億バーツとなった。産業分野別ではデジタルが25.6倍の2,433億バーツで最大となり、電気電子・エレクトロニクス(33.5%減、2,317億バーツ)が続いた。その他、自動システム・ロボット(4.9倍、145億バーツ)、観光(97.6%増、308億バーツ)、航空(62.3%増、20億バーツ)が大幅に増加した。

デジタル分野ではデータセンターを中心に大型の外国直接投資案件があった。BOIに承認された案件として、例えば、グーグル(Google)やデイワン(DayOne)による10億ドルの投資などが挙げられる。

また、Sカーブ産業のうち、デジタルに次いで投資額が多かったのは電気電子・エレクトロニクスで、大型案件として、ウエスタンデジタル(Western Digital)によるハードディスクドライブ生産設備の拡張や、ハイアール(Haier)によるエアコン製造工場の新設案件があった。また、ハナ・マイクロエレクトロニクス(タイ)とタイ石油公社(PTT) の合弁によるシリコン・カーバイド(SiC)ウエハー(注2)の加工事業は、国内で初めて半導体の前工程を手掛ける案件として注目されている。同分野では近年、プリント回路基板(PCB)やプリント回路基板組み立て(PCBA)事業への投資が拡大しており、BOIによると、これら産業への投資申請額は2022年の159億バーツから、2023年の1,009億バーツへ、6.3倍に拡大した。この拡大傾向は2024年以降も継続している。(2025年3月11日付地域・分析レポート参照)。

注1:
対象業種は、デジタル、エレクトロニクス、自動車・部品、農業・食品加工、石油化学・化学、観光、医療、自動システム・ロボット、バイオテクノロジー、航空、防衛、人材開発・教育の12分野。
注2:
SiCウエハーは、ケイ素(Si)と炭素(C)を材料とし、従来の主にSiのみを利用した半導体に比べ、高温域での稼働、高い電流搬送容量、高い電圧容量などの優位性がある。

日本からもデジタル分野へ投資、GXなどでも現地進出の動き

2024年は日本からもデジタル分野への投資がみられた。大型案件では、メクテックがアユタヤ県の工場にて、フレキシブルプリント基板(FPCB)などの生産拡大を計画しており、同プロジェクトがBOIに承認された(約37億円)。ソニーセミコンダクタソリューションズはバンコクに隣接するパトゥムターニー県で半導体の新工場を完成させた(約100億円)。先進運転支援システム(ADAS)の導入で、需要が旺盛な車載向けイメージセンサーなどの生産拡大を目指す一方、事業拡大が見込まれるデータセンター向け半導体レーザーも製造する。また、ニデックも人工知能(AI)サーバー用の水冷式冷却モジュールの生産ラインの拡張を発表した。

また、GX分野では、スタートアップによる現地進出の動きもある。アスエネが11月に現地法人を設立し、二酸化炭素排出量可視化・削減クラウドサービス「ASUENE」とESG評価サービス「ASYEBE ESG」の提供を開始した。

その他の日本からの投資案件としては、三越伊勢丹がバンコク最大の複合開発施設「ワンバンコク(One Bangkok)」のオフィス事業および小売事業への参画を発表した。うち小売事業では、2024年10月にワンバンコクの地下1階に「MITSUKOSHI DEPACHIKA」を先行開業した。同社は2020年にバンコク伊勢丹を閉店したが、タイでの食の発信地を目指し、事業を再出発させた(2025年2月17日付地域・分析レポート参照)。

表4 タイの国・地域別対内直接投資 [タイ投資委員会認可ベース](単位:100万バーツ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 387,520 623,076 85.7 60.8
階層レベル2の項目日本 65,472 62,304 8.6 △ 4.8
階層レベル2の項目中国 124,781 174,440 24.0 39.8
階層レベル2の項目香港 20,027 71,365 9.8 256.3
階層レベル2の項目台湾 47,417 51,873 7.1 9.4
階層レベル2の項目韓国 21,434 7,325 1.0 △ 65.8
階層レベル2の項目ASEAN 101,979 235,517 32.4 130.9
階層レベル3の項目マレーシア 2,189 3,021 0.4 38.0
階層レベル3の項目インドネシア 88 7,865 1.1 8,837.5
階層レベル3の項目シンガポール 99,285 224,362 30.9 126.0
階層レベル3の項目フィリピン 378 88 0.0 △ 76.7
階層レベル2の項目インド 1,021 829 0.1 △ 18.8
階層レベル2の項目オーストラリア 5,383 19,255 2.6 257.7
米国 87,992 30,575 4.2 △ 65.3
欧州 50,328 93,047 12.8 84.9
階層レベル2の項目英国 4,775 5,053 0.7 5.8
階層レベル2の項目EU27 38,505 86,059 11.8 123.5
階層レベル3の項目オランダ 6,800 67,214 9.2 888.4
階層レベル3の項目フランス 7,830 665 0.1 △ 91.5
階層レベル3の項目ドイツ 6,230 6,811 0.9 9.3
階層レベル3の項目スイス 5,713 1,973 0.3 △ 65.5
階層レベル3の項目ベルギー 5,628 18 0.0 △ 99.7
英領ケイマン諸島 4,902 5,523 0.8 12.7
合計(その他含む) 552,478 727,105 100.0 31.6

〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔注2〕複数国による投資はそれぞれの国に重複して計上されている。
〔注3〕タイ投資委員会(BOI)の認可ベースのため、投資奨励非対象業種など、認可を受けていない投資は含まれていない。
〔出所〕タイ投資委員会(BOI)

表5 タイの主な対内直接投資案件(非日系外資、2024年)(単位:100万ドル)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
ICT グーグル(Google) 米国 2024年9月 1,000 グーグルクラウド、AIイノベーションへの需要増に対応し、チョンブリー県にデータセンターを建設すると発表。2022年8月にバンコクに開設したクラウドリージョンを拡張する。
ICT デイワン(DayOne)(旧:GDSインターナショナル) 中国 2024年11月 1,000 高パフォーマンスデータセンターの開発・運営企業。アマタシティ・チョンブリー工業団地に大規模なデータセンターを設立すると発表。
電気電子 ウエスタンデジタル〔Western Digital(WD)〕 米国 2024年8月 676 アユタヤ県バンパイン工業団地およびプラチンブリー県の304工業団地にあるハードディスクドライブの組み立て・検査工場を拡張すると発表。
ICT エクイニクス(Equinix) 米国 2024年10月 500 タイにおけるデジタル基盤導入に向けて、今後10年にわたり段階的に投資すると発表。バンコクのバンナー地区で取得済みの1万8,700平方メートル以上の土地に、データセンターを2カ所設置する予定。
輸送機器部品 コンチネンタル(Continental) ドイツ 2024年10月 400 ラヨーン県にあるタイヤ工場の生産能力を増強するために追加投資を行うと発表。年間300万本分の増産を目指す。既存の900人以上の従業員に加え、約600人の雇用が創出される見込み。
ICT ネクストDC(NextDC) オーストラリア 2024年9月 395 クラウドサービスやAI関連の需要に対応するため、バンコクに大規模データセンターを設置する予定と発表。
電気電子 ハイアール(Haier) 中国 2024年9月 385 同社としてASEANで初となるエアコン製造工場をチョンブリー県のWHAイースタンシーボード3工業団地内に設立すると発表。本格的なエアコンの生産・輸出拠点とする。
電気電子 ハナ・マイクロエレクトロニクス(Hana Microelectronics) タイ 2024年8月 330 タイ石油公社(PTT)との合弁会社FT1にて、炭化ケイ素(SiC)を基盤とするパワー半導体向けのウェハーを製造する。
環境技術 Gスター(G-star) シンガポール 2024年8月 300 ラヨーン県のラバー工業団地内に、同社初となる高効率太陽光電池セルの生産ラインを設置した。生産能力を段階的に拡大し、年間8ギガワット(GW)を目指す。

〔出所〕fDiMarkets、BOI、各社プレスリリース、報道などから作成

表6 タイの主な対内直接投資案件(日本、2024年)(単位:100万ドル)
業種 企業名 時期 投資額 概要
電気機器 ソニーセミコンダクタソリューションズ 2024年3月 66 バンコクに隣接するパトゥムターニー県のバンカディ工業団地にある半導体製造工場にて新たな生産棟(4号棟)が稼働を開始したと発表。車載用イメージセンサーやディスプレイデバイス、データセンター向け半導体レーザーなどを製造する。
電気機器 メクテック 2024年11月 26 バンパイン工業団地(アユタヤ県)の工場にて、フレキシブルプリント基板(FPCB)等の製造能力を拡大するプロジェクトが、タイ投資委員会(BOI)より承認。増加するEV需要に対応する方針。
運輸・倉庫 丸全昭和運輸 2024年2月 7 レムチャバン港近くに倉庫業の子会社サイアム丸全昭和(Siam Maruzen Showa)を3月に設立すると発表。同社が99.9%出資する。高機能・多機能倉庫の自社運営を通じて、国内外一貫物流サービスの品質を高める。2025年7月に営業開始予定。
電気機器 アズビル 2024年8月 4 チョンブリー県の子会社に対する増資を発表。増資を通じて、現地での部品調達先の多様化や部品保有レベルの強化、在庫確保など生産基盤の強化を目指す。
食品 フジ日本 2024年8月 3 機能性食品素材イヌリンや各種食品事業を行う現地子会社を完全子会社化すると発表。卸売業のさらなる推進とタイおよび周辺国での事業拡大を目指す。
情報・通信 メディカルネット 2024年3月 2 タイでPOSシステムを開発する現地企業Aビジョン(AVision)の株式を取得すると発表。既存事業であるタイでの歯科クリニック運営に加え、AVisionのIT技術を生かしたクリニックのIT化促進を図る。2022年に連結子会社化したNU-DENTの歯科商社事業のDX化も推し進め、タイで歯科プラットフォーム構築に向けて事業拡大を図る。
金属製品 トーカロ 2024年6月 2 溶射・溶接加工業の現地関連企業ナイス・アンド・トーカロ(タイランド)〔NEIS & TOCALO (Thailand)〕の株式を追加取得し、完全子会社化すると発表。タイにおける溶射加工事業の拡大を図る。
電気機器 ニデック 2024年4月 n.a. AIサーバー向け水冷式冷却モジュール用の生産能力を拡大すると発表。AIサーバーメーカーである米スーパー・マイクロ・コンピューターからの受注を受け、アユタヤ工場の生産能力を月産200台から月産2,000台に拡大する。
運輸・倉庫 東京建物 2024年6月 n.a. 現地法人を設立し、物流施設の開発に参画すると発表。同分野の海外事業は同社として初めて。現地不動産デベロッパーのSCアセット(SC Asset)の子会社と共同で、サムットプラカーン県とチョンブリー県近くで物流拠点の開発を進める。
不動産・小売 三越伊勢丹 2024年5月 n.a. バンコク最大の複合開発施設「ワンバンコク(One Bangkok)」(投資額約1,200億バーツ)のオフィス事業と小売事業への参画を発表。TCCグループ傘下のTCCアセッツ(TCC Assets)と、多国籍企業フレイザーズ・プロパティ(Frasers Property Limited)の子会社と共同。

〔出所〕fDiMarkets、各社プレスリリース、報道等から作成

対日関係 
対日輸出額は前年比5.3%減の232億8,600万ドル

2024年の日本への輸出額は、232億8,600万ドル(前年比5.3%減)となり、タイの輸出総額の7.7%を占めた。上位3品目は自動車・同部品(19億5,700万ドル、4.7%減)、加工鶏肉(13億9,100万ドル、1.5%増)、その他電気設備・同部品(9億9,000万ドル、2.9%増)となった。日本の自動車生産台数が減少している影響などから、主要輸出品目である自動車・同部品が減少したほか、機械・同部品(9億6,700万ドル、8.9%減)、化学製品(8億4,900万ドル、15.3%減)も減少し、輸出減につながった。

日本からの輸入額は287億3,500万ドル(前年比7.9%減)となり、タイの輸入総額の9.4%を占めた。主要品目のうち鉄・鉄鋼製品(42億2,800万ドル、13.5%減)、機械・部品(40億5,200万ドル、17.7%減)、自動車部品(23億7,600万ドル、22.9%減)などで2桁減となった。上位10品目では、金属くず・スクラップ(16億9,700万ドル、2.6%増)、貴金属・宝石加工品(9億2,700万ドル、37.7%増)のみが増加した。鉄・鉄鋼製品、機械・部品、自動車部品の減少には、タイでの自動車生産の減少や中国からの安価な製品の流入なども影響している。

なお、対日貿易赤字は54億4,900万ドルとなり、赤字幅が2023年の66億100万ドルから減少した。

表7‐1 タイの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車・同部品 2,054 1,957 8.4 △ 4.7
加工鶏肉 1,371 1,391 6.0 1.5
その他電気設備・同部品 962 990 4.3 2.9
機械・同部品 1,061 967 4.2 △ 8.9
化学製品 1,003 849 3.6 △ 15.3
プラスチックペレット 792 811 3.5 2.4
コンピュータ・同部品 742 778 3.3 4.8
プラスチック製品 710 692 3.0 △ 2.6
電子集積回路 1,040 686 2.9 △ 34.0
加工魚類、甲殻類、軟体動物 645 587 2.5 △ 9.0
合計(その他含む) 24,594 23,286 100 △ 5.3

〔出所〕 タイ商務省

表7‐1 タイの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸入(CIF)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉄・鉄鋼製品 4,886 4,228 14.7 △ 13.5
機械・部品 4,925 4,052 14.1 △ 17.7
電子機器・同部品 3,133 3,007 10.5 △ 4.0
自動車部品 3,080 2,376 8.3 △ 22.9
電子集積回路 2,081 2,047 7.1 △ 1.6
化学製品 2,388 1,942 6.8 △ 18.7
金属くず・スクラップ 1,654 1,697 5.9 2.6
科学・医療試験機器 1,403 1,262 4.4 △ 10.0
貴金属・宝石加工品 673 927 3.2 37.7
プラスチック製品 761 701 2.4 △ 7.8
合計(その他含む) 31,195 28,735 100 △ 7.9

〔出所〕 タイ商務省

製造業では特に中国企業との競争が激化

バンコク日本人商工会議所(JCC)が2024年11月26日~12月18日に実施した「2024年下期タイ国日系企業景気動向調査」の結果によれば、在タイ日系企業の経営上の課題として「他社との競争激化」と回答する企業の割合が66%と最も多かった。この結果は2022年下期調査から継続して首位となっていたことから、今回の調査では、競争が激化している相手・対象を設問に加えた。回答では、「タイ国内で中国企業」、「中国企業からの輸入」が、それぞれ43%と最も多く、次いで「タイ国内で日系企業」(37%)、「タイ国内でタイ企業」(34%)が続いた。タイのEV奨励策や米中対立を背景として、中国企業のタイへの製造拠点の設置、移設が増加している。加えて、中国経済の不振から、過剰に生産された製品がタイにも流入しており、これまでにも増して中国企業との競争が激化しているといえよう。なお、同調査では、製造業で中国企業との競争が激しいとの回答が多い一方、非製造業ではタイ国内での日系企業やタイ企業との競争の激しい現状も示唆する結果となった。

表8 現在、競合が激しくなっている相手(単位:%、複数回答)
順位 現在、競合が激しくなっている相手 製造業
(268社)
非製造業
(244社)
全体
(512社)
1 タイ国内で中国企業 45.1 40.2 42.8
1 中国企業からの輸入 47.0 38.1 42.8
3 タイ国内で日系企業 27.6 47.5 37.1
4 タイ国内でタイ企業 26.9 42.2 34.2
5 輸出市場で中国企業 26.9 9.4 18.6
6 輸出市場で日系企業 10.4 6.6 8.6
7 タイ国内で欧米企業 8.6 7.8 8.2
8 ASEAN企業からの輸入 4.9 3.7 4.3
9 輸出市場でタイ企業 2.2 2.9 2.5
10 輸出市場で欧米企業 3.0 1.6 2.3

〔注〕製造業・非製造業のカッコ内は母数。
〔出所〕バンコク日本人商工会議所「2024年下期タイ国日系企業景気動向調査」

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.6 2.0 2.5
1人当たりGDP (米ドル) 7,073 7,351 7,492
消費者物価上昇率 (%) 6.1 1.2 0.4
失業率 (%) 1.3 1.0 1.0
貿易収支 (100万米ドル) 13,543 19,379 19,274
経常収支 (100万米ドル) △ 17,162 7,412 12,347
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 202,274 208,281 217,261
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 201,426 196,547 191,685
為替レート (1米ドルにつき、バーツ、期中平均) 35.1 34.8 35.3


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率:タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):タイ中央銀行(BOT)
1人当たりGDP、失業率、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF