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市場・トレンド情報

外食産品の先行事例分析 ‐ 社会現象を起こしたクリスピー・クリーム

2010年11月
分野:食品・農林水産物

米国発ドーナツチェーン・クリスピー・クリーム(Krispy Kreme)は、2010年9月にタイ国第1号店開店以来、店頭では連日クリスピー・クリームのドーナツを買い求める客が列をなしている。タイにおけるフライチャイジーであるKDN社は、インターネットのソーシャルネットワークを駆使したマーケティング手法を用いてタイ人消費者から高い支持を得ている。

フランチャイズはKDN社が獲得

クリスピー・クリームは米国で1937年に創業したドーナツチェーンであり、日本、英国、オーストラリア、韓国など、世界中で約400店舗を展開している。2010年9月28日、タイの高所得消費者が買い物を楽しむ高級ショッピングセンター「サイアム・パラゴン」1階にクリスピー・クリームのタイ第1号店がオープンされた。タイにおけるフランチャイズを獲得したのはウサニー・マハーギットシリ氏が代表を務めるKDN社(KDN Co., Ltd.)である。クリスピー・クリームのフランチャイズは15年間という長期契約、売り上げの6.5%をロイヤルティーとして親会社に支払うなど、ハードルが高いことで有名である。主力商品である「オリジナル・グレーズド(Original Glazed)」の価格は1個27バーツ、1ダースで249バーツ、各種トッピングが施された「アソーテッド・グレーズド(Assorted Glazed)」が1ダースで315バーツに設定されている。

クリスピー・クリーム、サイアム・パラゴン店は開店初日から、店内には収まりきらないほどの行列客が集まり、この様子は各種メディアで大きく報じられた。このような状態は2010年11月時点でも続いている。

「バズマーケティング」を活用

タイの名門国立大学であるチュラロンコン大学マーケティング学科ティーラユット・ワタナスパチョーク副教授は、タイにおけるクリスピー・クリームの戦略をバズマーケティング(Buzz Marketing=クチコミによるマーケティング)に当てはめて説明している。まずインフルエンサー(Influencer、クチコミする人々)は、タイ社会のハイソサエティーに属する消費者であり、彼らの多くは欧米への留学経験を持ち、クリスピー・クリームを食べ、その評判を身をもって感じたことがある。また彼らはインターネット上のソーシャルネットワーク(フェイスブック,ツイッターなど)の活用にも長けており、自分の体験をインターネットを介して、他の消費者にダイレクトかつスピーディーに伝達していく。メッセンジャー(Messenger、クチコミを伝える人々)は、人々が列をなしてクリスピー・クリームを買い求める状況をセンセーショナルに報道するマスコミである。コンシューマー(Consumer、クチコミを消費する人々)は、タイの一般消費者である。彼らの多くは海外におけるクリスピー・クリームの評判を聞いたこともなければ、当然ながら食べたこともなかった人々である。 彼らはインターネット上の噂やマスコミによるニュースに好奇心をかき立てられ、クリスピー・クリームを買い求める列に加わることになった。

効果的なマーケティング戦略と価格設定

同じくタイの名門国立大学であるタマサート大学マーケティング学科ギティ・シリパンロップ副教授は、クリスピー・クリームはマーケティングミックスのすべての要素を効果的に設定していると評価している。まず海外の有名ブランドであることから知名度は高い。そして先着200人に無料で提供するというプロモーションも行った。また、市場の中でも新しいトレンドに敏感なイノベーターと呼ばれる消費者を刺激して行列を作ることにより社会に話題を作った。イノベーターは誰よりも早く話題の商品を入手し、体験しようとする。そして、その体験をほかの消費者(フォローワーズ)に触れ回るのである。イノベーター達はインターネット上のソーシャルネットワークを駆使して、瞬く間にフォローワーズを刺激していく。このスピードと影響力は従来のマスコミ媒体をはるかに上回っている。KDN社はタイ語版クリスピー・クリームのフェイスブックアドレスも作成し、上記のような新時代のマーケティング手法を最大限に活用している。

価格面でも、KDN社はタイにクリスピー・クリームを導入するにあたり、思い切った戦略をとっている。タイにおける価格は諸外国より大幅に低く抑えられている。主力商品である「オリジナル・グレーズド」の他国での販売価格はバーツ換算すると1個当たり70~80バーツだが、タイでは1個27バーツに設定されている。タイではマクドナルドのハンバーガーが1個23バーツ、325ccのコカコーラが1缶14バーツであることを考えれば決して安くないが、かろうじて一般消費者の手が届く価格帯に設定されている。

クリスピー・クリームは一時的なブームで終わるのか?

上記のようなクリスピー・クリームのブームが高まるにつれ、新聞および雑誌でみられるようになってきているのが、2005年にタイで同様のブームを起こした菓子パン・チェーン店「ローティボーイ(Rotiboy)」との比較である。

ローティボーイは、パンの上にコーヒー風味のクリームを乗せオーブンで表面がカリカリになるまで加熱した菓子パンである。マレーシアの親会社からフランチャイズを獲得したNoodie1991社(Noodie 1991 Co., Ltd.)は、2005年にタイのビジネス街シーロム通りとタイの流行の発信地であるサイアム・スクエアに出店し、現在のクリスピー・クリームと同じように、焼き上がりを待つ客が行列を作るというローティボーイの一大ブームを起こした。

しかし、このような行列ができたのは半年程度であり、その後客足は遠のいていった。2007年5月、タイにおけるローティボーイのフランチャイジー、Noodie 1999 Co., Ltd.は「タイにおけるローティボーイの事業を終了する」と発表している。客足が遠のいた理由は「アイテムのバリエーションを増やすことができなかった」などさまざまな分析が行われている。

ウサニーKDN社代表は、これらの比較に対し「クリスピークリームは70年以上の歴史を持っており、現在でも世界各国で消費者から愛されているとして、今後も長期的にタイにおける事業を継続し、今後5年間で20店にまで店舗を展開する」と述べている。

タイ市場に参入する企業が参考にすべき戦略

クリスピー・クリームはターゲットとする消費者を明確に持っており、それに応じたロケーション、価格、マーケティング戦略を用いている。これからタイに進出する日本企業も参考にできる点が多い。

(バンコク・センター)

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