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外食産業の動向 ‐ 本物を求めるタイの富裕層消費者

2010年10月
分野:食品・農林水産物

タイにおいて日本食が一般的に普及し始めたのは、1999年頃に低価格帯の大衆向け日本食レストランがオープンした頃からである。それまでタイで日本食というと日本人駐在員向けのものであり、刺身も受け付けないタイ人が多かった。今となっては、タイ国全体で1,300軒に上る日本食レストランがあり、大衆向け日本食レストランでは、客のほとんどがタイ人で日本人を探す方がたやすくない。

タイ人富裕層が通う超高級日本食レストラン

高級日本食レストランではタイ人と日本人の逆転現象が起こっている。バンコクに数店ある超高級日本食レストランの常連客の多くはタイ人だ。日本人は日本での価格相場を考えてしまうためか、高級食材にはなかなか手をつけられないが、タイ人の富裕層は美味しいもの、より上質なものを食べるためには金に糸目をつけない。

2009年に第1号店をオープンし、その後わずか一年で4店舗の開店を果たした高級すし店「本物寿司(Honmono Sushi)」も、そのようなタイの富裕層が足しげく通う日本食レストランの一つである。社長兼エグセブティブ・シェフを務めるのはブンタム氏とバントゥーン氏。両者とも20年以上にわたり、在タイ日本食レストランで板前のキャリアを積んできた。

以下、ブンタム氏に「本物寿司」オープンにいたったきっかけを尋ねた。

二人は長年自分の店を持つことを目標にしており、2009年にバンコク市内の高級住宅街であり、高級レストランが並ぶトンローに、閉店間際の日本食レストランの店舗を幸運にも借りることができた。二人は「日本に行かなくても本物のすしを食べることができる店」をコンセプトに店名は「本物寿司」と名付けた。

日本に行くことなくタイで本物のすしを提供したい

第1号店であるトンロー店をオープンしたのは2009年9月。二人をよく知る常連客は、すぐに「本物寿司」に通うようになった。その後、第2号店も同様に高級住宅地であるスクンビット通りのソイ・エカマイに出店し、第3号店は高級百貨店セントラルデパート・チットロム店の3階に出店した。

わずか一年間で4店舗まで事業を拡大

2010年9月には「本物寿司」の一周年を祝い、常連客を招いて盛大なパーティーを行った。メインイベントは250キロの本まぐろの解体ショーである。現職の文部副大臣も常連客の一人でパーティーに駆けつけたという。そして2010年11月には、第4号店となるサートーン店がオープンした。サートーン通りはバンコクのビジネス街であるシーロム通りの一筋北に当たる。第1店舗は自らの資金を捻出して300万バーツを投資したが、サートーン店は一戸建ての店舗に2,100万バーツもの資金を投入して、日本の雰囲気を強調した内装に仕上げている。2011年2月時点、全4店舗で180人の従業員を雇用している。顧客の75%がタイ人であり、日本人は15%、残りの10%が中国人など他の外国人である。

本物を提供するために食材には妥協しない

本物のすしを提供するためには、すしネタには妥協することはできない。「本物寿司」で使用している食材は95%が日本産であり、新鮮な食材を入手するために週に5回空輸して日本から食材を調達している。すしネタの多くは日本産だが、サーモンなど一部のネタはノルウェーなど北欧から調達している。

野菜については、大部分をタイで調達可能なため、タイ産を使用しているが、タイでは栽培できない山芋、里芋、みょうが、しめじなどは日本産を使用している。また大葉、たけのこなどはタイでも生産されているが、タイ産は食味が劣ることを理由に日本産を調達することもあるという。果物に関しては、ランチセット用のメロンはタイ産を使用しているが、別途アラカルト用に日本からメロンを輸入しており、夕食のデザートには日本産を提供するという。

基本的に日本本来の味を、常連客には臨機応変に対応

食味に関して、味をタイ人向けに調整しているかと質問すると「タイの消費者の中でも特に裕福な層は、日本へ何度も行っており、日本で質のいい食材を食べている。彼らが求めるのは、日本で提供されている味である。ただ一部の常連客は味付けが濃いものを好むので、客に合わせて臨機応変に対応している」とのことだった。また「常連客の好みは魚の焼き加減まで覚えている」とのことで、「本物寿司」の追及する品質は食材のみならず、日本式のもてなしの心も含まれている。今後の事業展開については、2011年の売上目標は3億6,000万バーツ、2011年の予定では、バンコク中心部から車で東に30分ほどの距離にあるセントラルデパート・バンナー支店に新店舗を開店する予定とのことだった。地方都市での店舗拡大については、バンコクと比べると購買力が低く、「本物寿司」のニーズがあるとは思えないためまだ予定はしていないとのこと。

タイの富裕層には日本産食品のニーズは高い

タイは貧富の差が激しく、富裕層はタイの平均的な所得層とはかけ離れた所得を得ている。これらの消費者は日本に何度も行っており、日本の美味しい物を理解している。タイで本当に質の高い日本産食品を販売するならば、ターゲットであるタイ人富裕層のニーズをよく理解することが不可欠である。

(バンコク・センター)