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市場・トレンド情報

タイにおける日本産果実の輸入
‐高所得層の嗜好に合う「高品質(美しい外観と甘み)」がカギ‐

2010年9月
分野:食品・農林水産物

タイでは、日本産のりんご、いちご、なしなどの輸入単価は、他国産と比較して圧倒的に高いものの、日本からの輸入量、輸入額は、ともに増加を続けている。高所得層は日本産果実に「安さ」を求めることはなく、つねに「高品質(美しい外観と甘み)」を求めている。

反政府デモ被害により、2010年上半期の日本産果実の輸入は減少

タイの首都バンコクでは、2010年4月から大規模な反政府デモが行われ、日本食品の販売の大部分を占めるバンコク中心部の大型ショッピングセンターの多くが、営業停止を余儀なくされた。反政府デモは5月20日に軍による強制排除で収束したが、一部のデモ隊が暴徒化しショッピングセンターなどが火災被害などを受けた。6月24日、伊勢丹バンコク店は約2カ月ぶりに営業を再開し、9月28日には火災被害を受けたセントラルワールドも一部の被害が大きかった部分を除いて営業が再開された。

日本産果実はデモ被害が大きかったバンコクの中心部のショッピングセンターでの販売が大きい割合を占めていたため、2010年上半期(1~6月)の輸入量は減少した。特に桃、ぶどうは出荷が始まる5~6月にバンコクの治安状況が不安定であったため輸入が控えられた。なお、中国、米国、オーストラリアなど、他国産の果実は今回のデモが発生した時期にも輸入量は減少しなかった。これは販売拠点がバンコク中心だけに限られておらず、販売に大きな影響がなかったためと考えられる。

表1:2010年上半期の日本産果物の輸入
品目名 輸入量・輸入額・単価 2010年上半期
(1~6月)合計
前年同期比
(%)
りんご 輸入量(kg) 86,119 △14.54
輸入額(バーツ) 14,808,987 △15.10
単価(バーツ/kg) 172 △1.7
いちご 輸入量(kg) 2,730 15.6
輸入額(バーツ) 2,926,249 27.2
単価(バーツ/kg) 1,072 10
なし 輸入量(kg) 1,580 △95.8
輸入額(バーツ) 152,775 △86.2
単価(バーツ/kg) 97 232.2
かき 輸入量(kg) 85,418 45.7
輸入額(バーツ) 5,898,428 91.6
単価(バーツ/kg) 69 31.5
輸入量(kg) 0
輸入額(バーツ) 0
単価(バーツ/kg) - -
ぶどう 輸入量(kg) 0
輸入額(バーツ) 0
単価(バーツ/kg) - -

(出所:タイ関税局)

国内産にはない食味、外観の美しさが求められる輸入果実

日本産果実は、他国産果実とは一線を画すプレミアム品として扱われている。日本産果実(ここでは、りんご、いちご、なし、かき、桃、ぶどう)の輸入単価は、他国産と比較して圧倒的に高いが、ここ数年輸入量、輸入額ともに増加を続けている。このことは日本産果実の高い価格を踏まえた上で、価格に見合った品質に、より高い需要があることを示している。

表2:2009年の品目別、輸入相手国別の輸入量、輸入量シェア、単価
品目 輸入相手国 輸入量
(トン)
輸入量シェア
(%)
単価
(バーツ/kg)
りんご 中国 95,084 78.5 26
米国 13,854 11.4 32
ニュージーランド 9,044 7.5 38
日本(5位) 323 0.3 152
いちご 米国 199 47.3 169
オーストラリア 100 23.6 170
ニュージーランド 62 14.7 180
日本(6位) 3 0.6 978
なし 中国 43,062 99.5 22
米国 78 0.2 31
日本 53 0.1 80
かき 中国 6,103 88.8 20
韓国 327 4.8 28
日本 265 3.9 108
オーストラリア 307 79.5 97
米国 64 16.6 109
中国 14 3.5 36
日本(4位) 1 0.2 539
ぶどう 中国 24,819 58.3 40
オーストラリア 8,072 18.9 54
米国 7,303 17.1 54
日本(13位) 1 0 1,004

(出所:タイ関税局)

日本産果実の主な競合相手国は、中国、米国、オーストラリア、ニュージーランドである。特に中国産が、ほとんどの果実で全輸入量の過半数を占めている。特に、なしは顕著な例であり、輸入量の99.5%を占めている。

日本産果実が販売されているのは、バンコク市内のショッピングセンター、スーパーマーケットの中でも特に高所得層を顧客としている高級店3~4カ所に限られている。一方中国産、米国産などは、中間所得層が買い物に訪れるモダントレードと呼ばれる大型ショッピングセンターで販売されている。このような大型ショッピングセンターはバンコクだけでなく、地方都市にも多くの店舗を構えており、それらの店舗でも中国産、米国産果実は販売されている。これが2010年4月の反政府デモにより他国産果実の輸入に影響が出なかった要因である。

なおタイの小売店の中で最も顧客単価が低いウェットマーケットと呼ばれる生鮮食品市場では、主にタイ国産のパイナップル、マンゴー、ドリアン、マンゴスチン、バナナなど熱帯果実が販売されている。タイは元来熱帯果実が豊富な国であり、パイナップル、バナナなどの果実は年間を通じて店頭に並んでいる。国内に熱帯果実が豊富なことから、輸入果実に求められるのは、国内産にはない食味、外観の美しさなのである。

日本産果実のプレミアム感は、贈答品に最適

日本産果実を販売している高級スーパーマーケットの担当者に聞き取り調査を行ったところ、日本産果実が購入される理由として、皆一様にプレミアム性を挙げていた。日本産果実は輸入単価をみても圧倒的に高い。りんごを例にとると、中国産の輸入単価は26バーツ/kg(1バーツ=2.76円、2010年9月30日時点)、米国産が32バーツ/kgに対して、日本産は152バーツ/kgである。いちごは米国産が169バーツ/kg、オーストラリア産が170バーツ/kgに対して、日本産は978バーツ/kgである。

タイには年末に、果実、飲料、乾物などをバスケットに詰めて贈り物をする風習がある。この時期には日本産果実は大変重宝されるという。贈り物をする時に一番必要とされるのは、見栄えの良さだからである。例を挙げると、日本産りんごは、価格は高いが他国産と比較して圧倒的に果実が大きく外観が美しい。加えて甘みも他国産より強い。このような商品の質に加えて、日本産果実は高価なものであるという認識が、タイの高所得層では定着している。プライドが高く面目を重視するタイ人高所得層にとって、高価でプレミアム感があるものは贈答品に最適なのである。

日本産果実に求められるのは「より大きく美しい外観」と「強い甘み」

日本産果実に安さは求められていない。また実際に、日本産果実が価格面で中国産と渡り合うことは不可能である。タイの高所得層は日本産果実に、より高い品質、まだ食べたことがない食味を求めている。タイの消費者の特徴として挙げられるのは、明確な違いが認められれば高い対価を払うことは厭わないという点である。果実の外観は、より大きく色も鮮やかであるほうが喜ばれる。食味はより明確に甘みが強く、香りが高いほうが良い。注意しなければならないのは、タイの消費者は日本人が価値を見いだす「わずかな違い」は評価しないという点である。他国産よりも圧倒的に違う質の高さを打ち出せる品目が有利である。渋み、こくなどといった食味は、タイの消費者には受け入れられにくい。現在、タイの高所得層には、日本に行ったことのある人や、一般的な日本人よりも多様な日本の食材を利用している人もいるが、ターゲットとすべきタイ人消費者の多くは、そこまで日本の食材に対する知識を持っていない。より高い評価を得るためには、最もわかりやすい食味である「甘み」が強い果実であることが求められる。

日本産果実をタイでより多く販売するためには、このようなタイの高所得の消費者の特徴を把握したうえで、品目を選択し販売促進を行うことが必要である。

(バンコク・センター)