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外食産業の動向

日本の洋食が人気 ‐ 日本式洋食のブランド化に向けて

2011年2月
分野:食品・農林水産物

日本食の定着に伴い、近年は「日本式洋食」にも注目が集まっている。洋食に和の食材を取り入れたメニューや、日本で人気の高い洋食を提供する洋食店が人気を集めている。シンガポールにおいて、日本人用にローカライズされた洋食が「日本式洋食」として明確にカテゴライズされているわけではないが、今後も「和の洋」を主張する洋食店の店舗数拡大や、日本で洋食店を経営する外食企業の新規進出も見込まれている。日本式洋食という新カテゴリーの確立に向けた外食企業の動きが注目される。

シンガポールの日本式洋食店

食品情報雑誌“appetite”を発行しているエディプレス・シンガポール社(Edipresse Singapore Pte Ltd) が2010年11月に出版した日本食レストランのガイドブックによると、シンガポール国内で営業している日本食レストラン342店舗のうち、広義の日本式洋食店は22店舗存在する。

シンガポールの日本式洋食店は、日本では名古屋を中心に飲食店事業を展開するマ・メゾンが1995年にMa Maisonを初出店して、「日本の洋食屋さん」というコンセプトを前面に打ち出したのがはじまりだといわれている。日本式洋食をシンガポールで浸透させ、2007年4月に2号店を、そして2010年3月には3号店を出店し人気となっている。また、和食のカジュアルダイニングを中心に飲食店を経営している和楽ホールディング社(Waraku Holdings Pte Ltd)も2007年から和風パスタ専門店やカフェを次々にオープンさせ、日本式洋食店としても知名度を上げた。

2010年に入り、和風パスタの専門店、日系ベーカリーショップの新規進出、あるいは既存の外食企業によるベーカリーカフェなどの開業により、あらためて「和の洋」がクローズアップされるようになった。飲食店に限定すれば、日本でも家族連れや若年層に人気が高い和風パスタ専門店の “洋麺屋五右衛門”と“壁の穴”がそれぞれ11月と12月にシンガポールで初出店を果たしている。どちらのレストランも日本における運営会社と現地の外食店運営会社との合弁会社により運営されており、近い将来、シンガポール国内で店舗数を増やすことを視野に入れているようだ。

対象は家族連れや若年層

シンガポールにおける日本式洋食店の多くは、カジュアルなレストランであり、家族連れや若年層を対象にしたメニュー構成や価格設定になっている。お子様セットや子供用のおもちゃなどを粗品として提供したり、家族連れの客には無料ドリンクのサービスを行ったりする洋食店もあり、日本のきめ細やかなホスピタリティーをそのまま導入しているようだ。10Sドル(1Sドル=64.12円、2011年02月25日時点)以下のランチメニューを提供する洋食店もあり、対象とする客層へのサービスに注力していることがうかがえる。価格帯としては、一般大衆向けのカジュアルな和食店同様、ランチセットも含めれば、9Sドルから20Sドルまでのメニューが主流となっている。店舗ロケーションについても、家族連れや若年層が多く集まる市街地あるいは居住区内のショッピングモールに店舗を構えており、ランチ、ディナー問わず大勢の客で賑わっている。

プロモーション活動

各日本式洋食店のプロモーション活動をみると、ウェブサイトや現地フリーペーパーなどで、メニューの紹介や、イベントの告知をする活動が目につく。特筆すべきは日本人向けの日本語による宣伝活動が充実していることだ。シンガポールの人口は約508万人で市場規模が大きいとはいえず、またシンガポール人をターゲットとしない外食ビジネスは極めて難しいといわれているが、日本人客を囲い込むことで、「日本人御用達の洋食店」であることをローカル客にアピールする狙いがあるものとみられる。

ほとんどの日本式洋食店では、日本人客の姿も多くみられる。日本人にはあまり馴染みのない郊外の居住区に位置するショッピングモール“NEX”に店舗を構える和風パスタ専門店“壁の穴”は、開業時から日本人が客全体の30%を占めているという。“壁の穴”を共同運営する地場の外食企業、RE&S エンタープライズ社(ENTERPRISES PTE LTD)によると、来星前、日本で“壁の穴”によく足を運んでいた当地日本人駐在員が懐かしさを求めて来店するケースも少なくないという。同社のウィニー・ロウ氏は、日本人客の来店には大きなメリットがあると話した。はじめて来店するローカル客の多くは、「カルボナーラ」や「ナポリタン」といった一般的によく知られているパスタに似たメニューを注文する傾向が強いという。ロウ氏は、「日本人客がさまざまな種類の和風パスタを注文する姿をみて、店内スタッフにメニューについての質問をするローカル客も増えており、より多くのメニューを知ってもらうきっかけとなっている」と話した。

ローカル客の獲得を目的とした店側のプロモーション企画としては、店内スタッフによるメニュー紹介や低価格なランチセットの提供が挙げられる。特に低価格なランチセットにより、ローカル客のリピート率向上を狙っているようだ。ロウ氏は、「多くのローカル客が明太子やしそといった日本の具材を使用したパスタを注文するようになるまでには、必要な情報を提供し続ける努力が不可欠だ」と今後の課題についても触れた。そのためにもショーケースを充実させ、ローカル客の目を惹くような工夫も施しているという。

人気の背景

多民族国家で西洋の食文化も浸透しているシンガポールでは、近年、ホーカーセンター(屋台村)やフードコートでも低価格な洋食を提供している。ただし、その多くが現地のシンガポール人用にアレンジされた味付けになっていることから、すでに日本において日本人好みにローカライズされた洋食がタイミングよく、新しい味を求めるシンガポール人に受け入れられているのではないかと分析する外食企業関係者もいる。一方で、ビジネスや観光で日本を訪れ、「日本の味」を覚えたシンガポール人が増えていることも、日本式洋食店には追い風となっているとみている関係者もいる。

外食店の企画・運営サポートを手がけるT&K フューチャー・プランニングの福井利之代表は、日本式洋食店が人気となっている背景として、新しい食品に対するシンガポール人の好奇心の旺盛さを挙げている。もともと国土も小さく、娯楽に乏しいシンガポールでは、人々が食に楽しみを求める傾向が強く、海外の食べ物も比較的容易に受け入れられてきたのではないかと福井代表は分析している。こうした環境下において、日本式洋食が人気となるのは自然の成り行きで、「今後は、ブランド化をより強化することで、日本式洋食という新しいカテゴリーが確立される可能性は十分ある」と話した。

「日本式」へのこだわり

日本式洋食店の人気メニューをみると、ステーキ、ハンバーグ、パスタ、ピザなど、日本のカジュアルな洋食店では馴染み深いメニューがほとんどだ。注目すべきは、シンガポール人用に味付けがアレンジされたメニューがほとんど見当たらないこと。ある日本式洋食店の関係者は、「現地でローカライズ化したメニューも提供して、人気を博しているラーメン店“AJISEN”を参考にして、シンガポール人用に味をアレンジしたメニューの提供を検討したが、日本式洋食というコンセプトから反れてしまうこと、それにより日本式洋食の価値を下げてしまうリスクが高いことなどの理由から、日本人用にローカライズされたメニューのみ提供し続けている」と話してくれた。独自のマーケティングにより、客側の心理面からも、現段階では「日本式」に固執したほうが得策だという結論に至ったそうだ。さまざまなスタイルの洋食があるなかで、本格的な西欧料理よりも、同じアジア人が口にする洋食のほうに親しみを感じるローカル客層や、西欧料理は受け付けないが日本式洋食なら受け入れられるという客層がおり、こうした客層をさらに魅了する洋食店を目指すには「日本式」であることが必要不可欠だと強調した。

専門店への疑問

シンガポールにおいて、和食店はすでに飽和状態といわれている。しかし、日本式洋食は今後も需要が伸びていくのではないかという業界関係者もおり、日本のステーキ、オムライス、コロッケなどの専門店が新規進出してくる可能性を示唆する。その一方で、店の形態によっては、日本式洋食も一時的な人気で終わってしまうのではないかという意見も聞かれる。疑問を呈する飲食店経営者の一人は、「特定のメニューで味付けや具材が違うだけの専門店はすぐに飽きられてしまうのではないか。外食に依存する傾向の強いシンガポール人はホーカーセンターやフードコートで食事をする機会が多いが、それらの場所は飲食専門店の集合体といっても過言ではなく、数多くのメニューを容易に楽しむことができる。専門性を追求するあまり、偏ったメニューばかりになってしまう専門店では、シンガポール人のニーズに応えることができず、客足が遠のいてしまうのではないか」と話した。事実、近年ブームとなっているラーメン専門店でも、客を飽きさせないために、ラーメン以外のメニューを数多く揃えている店が多い。また、同じ理由で、新メニューの商品開発に力を入れている飲食店も少なくはない。

T&Kフューチャー・プランニングの福井代表は、「表向きには専門店として、その店が推奨する洋食メニューをアピールする必要性がある一方で、メニュー全体としては、日本のファミリーレストランのコンセプトに習い、幅広い客層に対応できるだけの種類が要求されているのではないか」と話した。また、シンガポールでは、外食することが娯楽の一つと捉えている同代表は、提供するメニューも定期的に見直し、新しいものを取り入れる工夫をして、客を飽きさせないようにすることの重要性にも言及し、特に大事なのはメニューのプレゼンテーションだと強調した。ローカル客に何度も店に足を運んでもらうためには、日本人用にローカライズされた味付けの洋食を提供しつつ、その見せ方にバリエーションを持たすことが必要だという。

ブランド化に向けて

近年シンガポールでは、「和」の要素を取り入れた食品が、パン、ペストリー、スイーツの分野にまで広がりをみせている。食材に大豆を取り入れた商品が健康志向の強い消費者の間で人気となっているようだ。外食企業関係者A氏は、「和」の要素が見え隠れするだけで「健康」と関連付けるローカル消費者がいると指摘し、日本式洋食が健康食であると主張できるのであれば、日本式洋食のブランド化はそれほど難しくないのではという。A氏は、「シンガポール人の間で健康志向が強くなっていることから、カロリーや塩分にも配慮した日本式洋食を提供することで、一般的な西欧料理あるいは欧米のファストフードと差別化することができる。これこそが時宜を得たブランド化であり、日本式洋食のブランド化の近道なのではないか」と語った。

すでに現地の食文化の一つとして定着している和食の影響で、日本食は質も味も高級であるという固定観念を持ったシンガポール人は少なくない。「日本式」あるいは「Japanese Style」という名称だけで、プレミアムがついてしまうケースもある。ビジネス戦略として、「日本式」を主張するためには、日本で定着している日本人用にローカライズされた味の洋食をそのまま提供することも重要だろうが、「日本式」という名称そのものに付加価値が付くようなブランド化が必要だと考える。和食、洋食あるいはフュージョンというカテゴリーが存在するなか、今後、日本式洋食という新たなカテゴリーが確立されるかどうか注目していきたい。

(シンガポール・センター)

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