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市場・トレンド情報

報道等にみられる食に関する消費動向・トレンド

2011年1月
分野:食品・農林水産物

食生活改善の重要性を強調 ‐ 政府が肥満人口増加に警告

シンガポール政府は、肥満人口が増加していることから、健康をより意識した規則正しい食生活を推奨している。シンガポール健康促進局による国民の健康に関する調査結果と食生活改善を訴えるキャンペーンについて報告する。

10人に1人が肥満

シンガポール健康促進局(Health Promotion Board: HPB)は2010年11月7日、国民の健康に関する調査(National Health Survey 2010)の結果を一部公表した。HPBによると、この調査は6年に1度行われるもので、最終報告書は2011年半ばに公表されるという。報道機関はこの発表を受けて「全人口の10.8%が肥満」と大きく取り上げ、肥満防止策や食生活改善の重要性を訴えた。

2004年の調査結果では、全体の6.9%が肥満にあたると報告されており、2010年までの6年間に、肥満人口が大幅に増加したことが明らかになった。肥満に関連するニュースは、その後も幾度となくメディアで取り上げられており、問題の深刻さと関心の高さがうかがえる。2010年11月8日の地元英字紙「TODAY」の記事では、「3人に1人が肥満である欧米諸国のような状況は望まない」というHPBのラム・ビンウーン事務局長のコメントが掲載され、肥満が大きな社会問題となりうる可能性を示唆した。

肥満は生活習慣病のリスクを高める要因だといわれており、肥満防止策として適度な運動と共に規則正しい食生活が求められている。シンガポールでは、国民の多くが外食に依存する傾向が強いため、外食時の留意点や健康食についての報道記事も目立ち、食生活を改善することの重要性が連日報道されている。

外食時の留意点

肥満との関係が指摘されている外食への依存について、2010年12月1日の地元英字紙「ストレーツ・タイムズ」は「1週間に複数回外食をするシンガポール人の比率は、国民人口全体に対して、2004年当時の49%から、2010年には60%に上昇した」とHPBの報告を報じ、国民による外食への依存傾向が強くなっていることを強調した。

同記事では、ある栄養士が「ホーカーセンター(屋台街)の中で一般的に健康に良いと思われているメニューでも、すべてが健康食であるとは限らない」と指摘した上で、数種類の代表的なローカル人気メニューの、塩分、脂肪分、カロリー、コレステロールの数値を掲載している。「一般的に、ホーカーセンターが提供している魚のスープは健康食だと思われているが、ボウル1杯に含まれる塩分だけでも1日の塩分摂取許容量の70%に当たる」と指摘して、いくつかの外食メニューには塩分が予想以上に含まれているにもかかわらず、それに気づいていない外食依存者が多いと伝えている。

一方で、同記事は「屋台店舗に対し、より多く野菜を取り入れて欲しいという要望が増えてきており、フィッシュボールスープを売る屋台店舗にさえ、同じような要望が寄せられている」と、健康を意識した消費者からの注文が増えていることにも触れている。外食に依存するシンガポール人にも健康に対する意識変化が芽生えてきていることがわかる。

食のマナーを見直し

外食依存や不健康な食生活以外にも、伝統的な食を粗末にしてはいけないという考え方が肥満増の要因となっているという。2010年11月9日付けの「ストレーツ・タイムズ」紙に掲載された記事は、「食べ残しはいけない」というマナーを見直す必要があるのではないかと指摘している。国立大学病院のアシム・シャビエル医師の「お腹が満たされたら、食べることを率先して止める習慣を身につけるべきで、目の前に出された食事を全て平らげる必要はない」というコメントも載せており、必要以上に食べ過ぎてしまうことに対して注意を促している。

肥満の低年齢化を防ぐために

国民の健康に関する調査では、肥満の低年齢化が進んでいることも取り上げている。HPBは教育機関を通して、肥満におけるリスク、防止対策などの学習指導に本格的に取り組む姿勢をみせている。子供の肥満に対する問題解決策の一つとして、「HPBが2011年以降、肥満につながる恐れがあると思われる食品や飲料の無差別な広告活動を規制するガイドラインを導入する予定」と、2010年11月14日付けの「サンデー・タイムズ」紙が報道している。同記事では、「すでに子供の肥満が社会問題となっているアメリカでは、市や郡がレストランに対して新しく規制を設ける動きもあり、2011年12月から、レストランは600カロリー以下のメニューに限り、おもちゃを景品として一緒に提供することが許可される」と伝え、米国における管轄機関のように、徹底した規制をHPBが打ち出す可能性もあると示唆している。子供の肥満に関しては、ポテトチップス、ファストフード、ソフトドリンクの摂取量にも問題があるといわれており、HPBが今後どのようなガイドラインを導入するか注目される。

低カロリー食品の摂取を奨励

HPBは肥満防止、あるいは減量を目的とした食の改善を以前からウェブサイト上で訴えている。外食の際は、できるだけ低カロリーのメニューを選ぶこと、飲料はジュース類を避け、飲料水に限定すること、また、内食の際にも、全粒穀物の摂取を心掛けることや、「Healthier Choice Symbol (HCS)」というロゴマークがついた脂肪分、糖分、カロリーが低い食品を摂ること等も奨励している。

2010年11月12日付けの「ストレーツ・タイムズ」紙では、健康促進キャンペーンの一環として、「HPBはフードコート26カ所の経営者に1食600カロリー未満のメニューを提供することを促した」とカロリー数値をこれまで以上に意識するHPBの動きにも関心を寄せている。「健康食」であるか否か判断する一つの要素として、カロリー数値が注目されており、HPBのウェブサイトには、カロリー摂取を意識した食生活を国民に促すために、人気ローカル食のカロリー数値が表示されるようにもなった。
“Caloric Content Of Commonly-Eaten Dishes”外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

こうしたHPBの健康促進キャンペーンにより、シンガポール人の健康志向はこれまで以上に強くなることが予想される。特に、肥満増加という調査報告から、これまであまり取り上げられなかったカロリー数値に焦点が当てられたことで、食材・食品を提供する側の意識も変化していくと思われる。これは現地で需要が高い日本食やそれを提供する外食企業も例外ではないと考えられる。

地元産の食材に注目が集まる ‐ 地産地消が流行の兆し

地元産食材に目を向ける “ロカボア(Locavore)”と呼ばれる地産地消主義者の動きが活発になりつつあり、ここ数年、地元産の野菜、鶏卵、魚介類の需要が伸びている。安全・安心志向の高まりによる地産地消の動きを通して、地元産食材の需要の高まりについて報告する。

地産地消の動き

シンガポール国内では地産地消の動きが活発になりつつある。2010年5月に “ロカボア(Locavore)”と呼ばれる地産地消主義者のグループが結成され、現在のメンバーは200名ほどだ。グループを創設したクリスティーナ・クレーン氏は、現在、地元産食材を使った料理を提供するレストランのオーナーでもある。

2010年12月7日付の地元英字紙「ストレーツ・タイムズ」によると、2010年11月に開店した当初は、1日の販売数が20食にすぎなかったが、12月に入ってからは販売が軌道にのり、1日に50食販売できるようになったという。フェイスブック等のソーシャルネットワーキングを駆使した口コミ活動により地産地消の認知度が高まった。

シンガポールにおける地産地消の動きは、一般消費者による安全・安心志向の高まりと共に活発化したと考えられる。シンガポールでは2008年に、有害物質メラミンが混入した中国メーカーの粉ミルクや乳製品が小売店で回収されたのを機に、食の安全性が大きく問われるようになり、特に生産元を特定できるという点で、地元産の食材が注目されるようになった。

地元産食材の現状

地元産食材に注目しているのは、“ロカボア”だけではなく、国内における食糧の安定供給を目指すシンガポール政府も同様である。国内で流通する食糧の9割が輸入品といわれているなかで、シンガポール政府の農食品・家畜庁(Agri-food and Veterinary Authority: AVA)は、魚介類の自給率を現在の4%から15%へ、鶏卵は23%から30%、レタスなどの葉物野菜は7%から10%とする明確な生産目標を打ち出している。前出のストレーツ・タイムズの記事は、「AVAの統計に基づいて、2008年と2009年の生産量を比較すると、鶏卵は3億3,800万個から3億3,300万個に減少しているものの、魚介類は5,141トンから5,689トンに、野菜は1万8,967トンから1万9,584トンに増加している」と、AVAの政策が結果を出しつつあることに言及している。将来的には地産地消への動きが活発化することで、地元産食材に対する需要は、これまで以上に高まり、生産増大に拍車がかかるのではないかと期待されている。

地場のスーパーマーケットの動向

地元産食材が注目を浴びるなか、2010年12月7日付の「ストレーツ・タイムズ」紙は、地場のスーパーマーケット3社において、地元産食材の取り扱いが伸びていることを報じている。同記事は、地場のスーパーマーケット最大手のフェアプライスで、地元産の魚介類と野菜の需要が3年間で40%と大きく伸びたのをはじめ、高級食材を多く扱うコールド・ストレージでも地元産の魚介類、鶏卵、野菜の売り上げが過去3年間で30%増加し、センソン・スーパーマーケットでも地元産の野菜・鶏卵の売上げが2009年1年間で5~10%増加したと伝えている。こうした新聞報道からも、ここ数年のスーパーマーケットにおける地産地消トレンドが読み取れる。

地元産食材人気の背景

前出の記事には、シンガポール・ポリテクニック・ビジネススクールのサラ・リム講師がコメントを寄せており、そのなかで、「シンガポール人消費者が地元生産者に信頼を寄せていると同時に、食材の生産元を強く意識するようになっている」ことを、地元産食材の人気の背景として挙げている。また、そのターニングポイントとしては、やはり2008年のメラミン混入事案があったと語っている。この事案は単に中国からの輸入食材への不信感だけでなく、海外からの輸入食材全般に対して、懐疑の念を抱く消費者を増やす結果を招くことになり、「輸入品への不安感が強まるにつれて、地元食材への信用度が高まっている」とリム講師は語っている。

消費者心理の変化

シンガポール食品製造者協会(Singapore Food Manufacturers' Association)のアラン・タン前会長は、地元産の食材がトレンドとなっていることについて、前出の「ストレーツ・タイムズ」で、「消費者は、地元生産者と共に得をしていると感じ始めている」と、消費者心理の変化にも触れている。また、「より多くの消費者が地元産食材を消費することで、地元生産者の収入も増大し、結果として地元生産者による安定した食糧供給が期待できる」と、地産地消による利点についてコメントしている。地産地消が地域経済、とりわけシンガポールの第1次産業の発展に貢献するものと捉えているわけだ。

メラミン混入事案が大きな問題となる前は、消費者の多くは、食材の原産国を意識することはあまりなく、食に対する安全・安心の意識も希薄であり、単純に安価な食材を求める傾向が強かった。食品のほとんどを海外からの輸入に依存する国で、生産者との距離を重視する“ロカボア”が増えているのは、非常に興味深い。政府が農水産物の自給率アップを目指していることもあり、地元生産者の役割はより大きなものになっていくことになろう。

(シンガポール・センター)