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日本食品の輸入動向

シンガポールの日本酒輸入 ‐ 今後は微増か横ばいで推移

2010年11月
分野:食品・農林水産物

シンガポールでは、日本食の定着に伴い、日本酒をたしなむシンガポール人が増加している。当地で開催される日本の地方自治体による広報イベントや日系スーパーマーケットの催事では、日本酒が頻繁に紹介されている。最近は、独自のルートで輸入して、他店にない珍しい銘柄を提供している飲食店も現れ、人気を博しているようだ。ただ、ここ数年日本酒の需要は急激な高まりを見せてきたが、今後は微増か横ばいで推移するのではと、当地の業界関係者はみている。

輸入量・輸入額の推移

近年、シンガポールの日系食料品店で、日本酒の銘柄が数多く店頭に並ぶようになった。伊勢丹シンガポールの牧野俊夫食品統括部長は、「現在、日本酒購入者の6割以上がシンガポール人であり、ローカルの客層へ普及が進んでいるといえるが、2010年7~9月の売り上げは前年同期比で微増にとどまった」と述べている。

日本酒の輸入統計を見ると、輸入量は2006年から2008年までそれぞれ前年比15.5%増、27.5%増、16.9%増という高い伸び率を維持してきたが、2009年は一転して3.3%増にとどまった(表1)。2010年に入ってからは、1~9月の輸入量が23万9,000 リットルで、前年同期比で9.1%減だった2009年1~9月期の24万8,000リットルを下回る結果となっている(表2)。

輸入額についても数量と同様の傾向が見られる。2007年からは、前年比の増加率が20%を超える年が続いてきたものの、2010年1~9月は前年同期比で7.9%増と急ブレーキがかかった結果となっている(表2)。

表1:日本酒の輸入量推移
2005 2006 2007 2008 2009
年間輸入量(リットル) 198,590 229,412 292,571 342,027 353,455
輸入量前年比伸び率(%) 15.5 27.5 16.9 3.3
年間輸入額
(100万シンガポール・ドル)
2.35 2.48 3.18 3.88 4.77
輸入額前年比伸び率(%) - 10.5 28.1 22.1 22.8
表2:日本酒の輸入量(1~9月)
2005 2006 2007 2008 2009 2010
1~9月期の輸入量
(リットル)
142,323 168,261 197,011 273,306 248,339 239,473
1~9月期の輸入額
(100万シンガポール・ドル)
1.68 1.76 2.09 2.94 3.35 3.61

(表1および表2出所:シンガポール国際企業庁)

飲食店による日本酒PR活動

統計上では、日本酒の輸入量が2009年に急減したが、主には世界的大不況の影響と見ており、業界関係者には現地消費者の「日本酒離れ」を否定する声が依然として多い。日本食レストランでは、提供する料理に合った日本酒の紹介や、プロモーションの企画で大々的に日本酒をPRすることも少なくない。最近では、日本酒が和食料理店以外でも取り扱われ、フランス料理など西欧料理と組み合わせて紹介されることもある。こうした飲食店の販売促進活動により、日本酒に興味を持つ現地消費者は、むしろ増えていると見ているようだ。

また、もともと自宅で晩酌をする習慣がないシンガポール人が、外食店で口にした日本酒の味を求めて、小売店で日本酒を購入するケースが少しずつ増えていると言われる。業界関係者によると、シンガポール人の日本酒ファンは、価格よりも、より品質の高い日本酒を求める傾向にあるようだ。

輸入の減少は一時的なものか

2010年はシンガポール・ドルが対円で15~16%安くなった。シンガポールのアルコール商品に関しては、大半の輸入業者が為替差損の負担を余儀なくされており、体力のない輸入業者には死活問題にもなっているという。日本酒の輸入量が減少したのも、こうした事情と関係があるのではないかと話す業界関係者もいる。

また、伊勢丹シンガポールの牧野部長は、「統計で日本酒の輸入量が減っても、現実は高価な吟醸酒の占める割合が大きくなっている可能性があり、今後はグレード別に分析する必要があるのではないか」と話している。

2010年1~9月期の統計では、前年同期比で日本酒の輸入量が減少した。2009年1~9月期も同様に前年同期比で輸入量が下回っていたのが、10~12月期で盛り返し、年間の輸入量全体では前年を上回る結果となった。今回の前年同期比の輸入量減少もあくまで一時的なものではないかという見方が強い。しかしこれからは、以前のような輸入増加の勢いは期待できないとする見方が強く、輸入量は微増か横ばいで推移すると予想する業界関係者が多い。

シンガポール国内には、日本食レストランが少なくとも500店舗以上は存在し、現在も増加を続けているといわれる。その多くが日本酒を取り扱っていることから、飲食店を中心とした地道な販売促進活動を通じて、シンガポールの日本酒市場の裾野が今後も徐々に広がっていくとみられる。

(シンガポール・センター)