外資に関する奨励

最終更新日:2023年11月09日

奨励業種

投資促進分野通達に奨励業種の詳細が規定されている。

2017年4月1日に投資法に基づき公布された投資促進分野通達(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)PDFファイル(604KB)に基づき、農業、林業、畜産業・漁業、製造業、工業団地建設、新都市建設、都市開発、道路・橋・線路建設、海港・河港・ドライポート、空港の管理・運用・保守部門、飛行機の点検、供給・輸送サービス、発電・変電・送電、再生可能エネルギーの生産、通信業、教育業、保健サービス、情報技術サービス、ホテル・観光業、科学研究開発業の全20分野に分けられた上、分野内でさらに業種が細分化されている。

各業種には、業種コード(ISIC:International Standard Industrial Classification、CPC:Central Product Classification)が付されている。外国投資法下では、業種コードは付されておらず、定義が不明確であることが多かったため、業種コードが付された意義は大きい。
投資が促進されている主な業種は、農業(30業種)および製造業(92種類)である。

各種優遇措置

投資を奨励する法律として、投資法と経済特区法が存在する。
投資法は、第11章、12章、14章、15章、18章(第48条、50条、52条、56条、57条、75条、77条、78条)を参照。
経済特区法は、第32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条、58条、79条を参照。

各法律に基づく奨励措置の内容は次のとおり。

投資法

  1. 租税優遇措置
    1. 所得税の免税対象業種
      前述した投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となる(投資法75条(c))。
    2. 手続
      ミャンマー投資委員会は、受理した日から30日以内に是認(Endorsement)申請書を審査する。
    3. 判断基準
      ミャンマー投資委員会は、すべての税制優遇措置申請を評価し、法の目的、原則、権利および義務ならびに次の基準を考慮し、投資家が申請している税制優遇措置にふさわしいか否かを決定する。
      1. 投資家が法律に従って行動しており、投資が将来法律に従って行われるであろうこと。
      2. 税制優遇措置の申請が本法に従って行われていること。
      3. 所得税の免除に関しては、すべての投資が促進セクターで行われること。
      4. 30万ドルを超える額の追加資金の支出またはさらなる資本の適用を含むこと。
      5. 投資家が、当該投資について、MIC許可または是認を受け、または申請中であること。
      6. 所得税免除の場合、ミャンマー投資委員会の通達によってゾーン1、ゾーン2またはゾーン3(または複数のゾーン)として指定された場所で(または複数のゾーンにまたがって)投資が行われていること。
      7. 投資が、新たな雇用機会の創出および熟練労働力の発達を支援すること。
      8. 投資が、新たな若しくはより良い技術またはビジネススキルをミャンマーにもたらすこと。
      9. 投資が、ミャンマー国内における市場競争の強化、効率性若しくは生産性の向上、より良いインフラストラクチャまたはサービスの提供をもたらすこと。
      10. 投資がミャンマーの輸出収入を増加させること。

      ⅰ~ⅵは必須基準でありすべて満たす必要があるのに対し、ⅶ~ⅹは非必須基準とされており、ミャンマー委員会がこの中から当該投資および投資家に最も関係する基準を選び、その基準が実質的に満たされるか判断すると定められている(規則92条(a)(b)参照)。

    4. 所得税免税期間
      投資促進分野に該当する場合においても、投資を行う地域に応じて所得税免税措置を享受できる期間が異なる。具体的には、2017年2月22日に発布されたゾーニング通達(MIC Notification No.10/2017, Designation of Development Zone)に基づいてミャンマー国内15州/管区の333タウンシップが3つのゾーンに分けられ、ゾーン1の「開発が進んでいない地域」では7年間、ゾーン2の「適度に開発が進んだ地域」では5年間、ゾーン3の「開発が進んだ地域」では3年間の所得税減免措置を享受できる旨規定されている(投資法75条(a))。
      投資が集中するヤンゴンでは32タウンシップがゾーン3 、13タウンシップがゾーン2と規定されている。
    5. 関税およびその他の内国税の免税および減税
      投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、次の関税その他の国内税の免税または減税を許可することができる(投資法77条)。
      1. 投資事業の建設期間または準備期間に実際に必要なものとして輸入された機械、設備、機器、機械部品、スペアパーツ、ミャンマー国内で入手できない建築資材、事業で使用する資材に対する関税、またはその他の国内税、またはその両方の免税または減税
      2. 輸出用製品の製造を目的とした輸出型投資事業による原材料、および半完成品の輸入に対する関税、もしくはその他の国内税、またはその両方の免税または減税
      3. 輸出用製品の製造に使用される原材料、および半完成品の輸入に対する関税、もしくはその他の国内税、またはその両方の払い戻し
      4. 投資額がミャンマー投資委員会の承認によって増加し、許可された投資期間中に元々の投資事業を拡張するとき、拡張する事業に使用するために実際に必要な輸入された機械、設備、機器、機械部品、スペアパーツ、ミャンマー国内で入手できない建築資材、事業で使用する資材に対する関税もしくはその他の国内税もしくはその両方の免税または減税
    6. その他の免税
      投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は次のような減税および免税措置を与えることができる(投資法78条)。
      1. MIC 許可または是認(Endorsement)を得た投資事業から得られた利益を、当該投資事業または類似の種類の投資事業に、1年以内に再投資する際の所得税からの免税または減税
      2. 投資に使用される機械、設備、建物または資本資産の規定耐用年数よりも短い減価償却期間に基づく、商業活動開始年からの減価償却計算後の所得税申告を目的とする減価償却費を計上する権利
      3. ミャンマー国の経済発展に実際に必要な、ミャンマー国内で実施されている投資に関する研究開発から生じた課税所得からの費用減額の権利
  2. 土地の長期賃貸借
    MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められる(投資法50条)。
  3. 海外送金
    従来、外国送金については、MICの投資許可を得た外国会社に対する優遇措置の一環として一定の場合の外国送金の権利が保障されていたが、投資許可を得ていない外国会社については、法律上明確に権利を保障する規定が存在しなかった。新投資法では、すべての外国会社について、新投資法に規定される資金につき、投資許可を得ていない場合でも送金することができることが明記された。

    外国投資家は、本法に基づき投資に関する次の資金を海外に送金することができる(投資法56条)。

    1. 資本金。ただし、ミャンマー中央銀行の資本取引に関する規則に従うものとする。
    2. 利益、キャピタルゲイン、配当金、ロイヤルティー、著作権料、ライセンス料、技術的支援およびマネジメント費用、株式およびその他の本法に基づく投資に関する経常利益
    3. 投資または投資に関連して所有していた財産の全部もしくは一部の売却による利益
    4. ローン契約を含む契約に基づく支払い
    5. 投資に関する紛争の和解に基づく支払い
    6. 投資または没収に際して行われた補償やその他の支払い
    7. ミャンマー国内で適法に雇用された外国人駐在員の収入や報酬

    前記d.のローンに関する送金や受領は規則に基づき、ミャンマー中央銀行の承認を得て行う必要がある(投資法57条)。

  4. 投資家の取り扱い
    投資家の取り扱いに際し、連邦政府は、次の義務を負う(投資法47条)。
    1. 法律、規則や告示に別途規定がない限り、直接投資の拡張、管理、運営、販売またはその他の処分に関して、本法に従い、外国投資家および外国投資に、ミャンマー投資家と同等の待遇を与える。
    2. 類似の状況の場合、直接投資に関する設立、買収、拡張、管理、運営、販売またはその他の処分に関して、特定の国の外国投資家およびその投資をその他の国の投資家および投資と同等に扱う。
    3. 前記b.の規定は、外国投資家に、以下に基づくいかなる待遇、優遇、特権を与えるものと解釈されてはならない。
      1. 関税同盟、自由貿易地域、経済同盟、関税同盟、自由貿易地域または経済同盟を形成する結果となる国際的協定
      2. 国際協定、二国間、地域的または国際的協定に従い与えられる投資家もしくはその投資に与えられる優遇、地域国間で行われる合意や取り決め、もしくは、全体にもしくは部分的な税金に関する取り決めに応じて投資家や投資に対して与えられる優遇

    連邦政府は、次に関して、投資家に対する公平かつ公正な取り扱いを保証する(投資法48条)。

    • 投資家またはその直接投資に対して重大な影響のある措置や決定に関する情報を入手する権利
    • 連邦政府から投資家またはその直接投資に対して与えられたライセンスやMIC 許可および是認(Endorsement)に際しての条件に関する修正や類似の措置等を含む、投資家またはその直接投資に関する事項に関して、適正手続きを経る権利および不服を申し立てる権利
  5. 投資の保証
    連邦政府は、法律に基づき行われる投資につき、国有化しないことを保証する。次の条件による場合を除き、連邦政府は直接的または間接的に没収もしくはその結果投資の終了につながる措置等を採らないことを保証する(投資法52条)。
    1. ミャンマー国およびミャンマー国民にとって必要であること。
    2. 措置等が非差別的な方法で行われること。
    3. 措置等が既存の法律に従って行われること。
    4. 迅速、公平かつ適切な補償の支払いが行われること。
  6. 投資優先分野
    投資企業管理局(DICA)は、2017年6月28日にAnnouncement for Prioritized Investment Activities in Myanmar(以下、「本アナウンス」という)を公布した。
    本アナウンスは投資法および投資法施行規則に関するアナウンスであり、ミャンマー投資委員会が優先する分野を規定している。本アナウンスとは別に、投資奨励に関する通達としては、2017年4月1日に投資法に基づき公布された投資促進分野通達(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)が存在する。
    具体的には、本アナウンスは投資家より申請がなされた場合、次の10分野について審査を優先する旨規定されている。
    1. 農業および関連サービス、農産物の付加価値製造
    2. 家畜生産、育成、水産物の生産
    3. 輸出振興関連製造業
    4. 輸入代替関連製造業
    5. 電力部門
    6. 物流業
    7. 教育事業
    8. 医療産業
    9. 低価格住宅建設
    10. 工業団地建設

    これら10分野の外国投資および内国投資のいずれも歓迎し、ミャンマー投資委員会および政府は必要な支援を提供する旨規定している。

    また、ミャンマー投資委員会(MIC)は2021年に、Inviting Investmentを公布した。
    国家開発と国家建設のニーズを満たすため、肥料製造、セメント製造、鉄鋼製造、農業および畜産業とその関係産業、付加価値食品製造、電気自動車製造、医薬品および医療機器製造、公共交通サービスへの外国投資および内国投資のいずれも歓迎する旨規定している。

経済特区法

  1. 租税優遇措置
    投資家および開発者に対する租税優遇措置は次表のとおり(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

    なお、各用語の定義は次のとおり(経済特区法3条)。

    • 「フリーゾーン(Free Zone)」は、ミャンマーの外側とみなされ、管理委員会により指定され、輸入関税が課せられない。また、フリーゾーン事業地域、製造地域、運搬および供給地域、国際卸売取引地域が含まれる。
    • 「フリーゾーン事業(Free Zone Business)」とは、フリーゾーン内の輸出事業および、フリーゾーンとプロモーションゾーンが区別されていない経済特区内に所在するフリーゾーン内の製造業と類似の権利を享受できる事業を意味する。
    • 「プロモーションゾーン(Promotion Zone)」とは、関税地域であり、かつ、フリーゾーン以外の経済特区内の地域または以下に定義されるその他の事業を意味する。
    • 「その他の事業(Other Business)」とは、プロモーションゾーン内の事業および、フリーゾーンとプロモーションゾーンが区別されていない経済特区内に所在するプロモーションゾーン内の製造業と類似の権利を享受できる事業を意味する。
    • 「投資家(Investor)」とは、経済特区で事業を行うことについて管理委員会から許可された国民、外国人または合弁会社を意味する。
    • 「開発者(Developer)」とは、経済特区におけるインフラの整備、事業の運営および維持を行うものとして管理委員会に認められた個人または会社を意味する。
    投資家および開発者に対する租税優遇措置
    税の種類等 投資家(フリーゾーン) 投資家(プロモーションゾーン) 開発者
    所得税 営業開始日から7年間の所得税が免税される。次の5年間の所得税が2分の1に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより得た利益については、次の5年間の所得税が2分の1に減額される。 営業開始日から5年間の所得税が免税される。次の5年間の所得税が2分の1に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより得た利益については、次の5年間の所得税が2分の1に減額される。 営業開始日から8年間の所得税が免税される。次の5年間の所得税が2分の1に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより得た利益については、次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
    赤字の繰越 損失を5年間まで繰り越すことができる。 損失を5年間まで繰り越すことができる。 損失を5年間まで繰り越すことができる。
    関税 生産用の原材料および機械、その代替部品、工場、倉庫および事務所を建設するための資材、事業用車両の輸入について関税等は免除される。輸入する卸売等のための商品および委託商品、車両等の必要な材料に対する関税は免除される。 販売目的でない機械器具、その代替部品、工場、倉庫および事務所を建設するための資材、車両および事業に実際に必要な物品については、それらの輸入開始時点から5年間、関税等が免除される。次の5年間は、50%関税等が軽減される。プロモーションゾーン向けの原材料の免税制度はないが、海外輸出用、あるいは、フリーゾーン向けの原材料に対しては免税措置がある。 建設資材、機械、重機、事業用車両ならびにインフラストラクチヤーおよび自らの事務所を建設するための資材の輸入について関税等は免除される。
    商業税 免税される。国内市場またはプロモーションゾーンから輸入した物品についても免税を申請できる。製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。 所定の期間内のみ免税される。製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。 なし。
    訓練費用等の控除 熟練労働者または官吏職員等のミャンマー国民の訓練のために用いた実費、研究および開発費については課税対象収入から控除できる。 なし。 なし。
  2. 土地の長期賃貸借
    経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められる(経済特区法79条)。
  3. 海外送金
    経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、規則に従い、外貨を交換し、海外または自由区域内で外貨を送金することができる(経済特区法58条)。

その他

特になし。