外国企業の会社設立手続き・必要書類
最終更新日:2024年01月05日
外国企業の会社設立手続き・必要書類
スリランカへの外国企業の進出形態は、2007年法律第7号新会社法(2007年5月3日施行)により、現地法人会社(Incorporated Company)、支社・支店(Registered Overseas Company, Branch Office)、オフショア会社(Offshore Company)、駐在員事務所(Representative/Liaison Office)に分類される。
現地法人会社(Incorporated Company)
2007年法律第7号新会社法の条項に基づき、外国企業はスリランカ国内に、株式非公開会社(Private Company)および株式公開会社(Public Company)を設立できる。
株式非公開会社では、次の制限が設けられる。
- 株式もしくは債権を一般投資家に公開することはできない。
- 株主数の上限は50である。ただし、従業員、もしくは元従業員で株主であった者の数はこれに含めない。
一方、株式公開会社については、7名以上の株主が必要である。コロンボ証券取引所に上場できるのはこの形態のみで、財務諸表は一般投資家も閲覧可能である。なお、株式公開会社は、会社登記局(Registrar of Companies)への登記が義務付けられている。
設立予定の会社の資本金は、スリランカの市中銀行に開設された対内投資口座(IIA)を通して、スリランカに送金されることが必要とされる。
会社登録
会社の登録(設立)は以下の手順で行われる。
- 登録する会社の名称を決め、会社登記局に同名称を保留するようオンラインで申請する。
- 会社登録局ウェブサイト(Registrar of Companies)
- 登録予定の会社の定款の案を作成する。
- 保留を依頼した会社名の承認を会社登記局から受ける(申請が却下された場合は、他の名称を再申請すること)。
- 定款案の承認を受け、以下の書類を提出する。
- 株主の氏名、住所、職業
- 役員の氏名、住所、職業
- 登録予定の会社の登録住所
- 会社登記局長から定款案の承認を受け、定款最終版を5部印刷する。
- 以下の書式に必要事項を記入し会社登記局に提出する。
- フォーム1(2007年会社法第7号に拠る会社登録(設立)申請)
- フォーム18(役員に就任することに同意した者のリスト)
- フォーム19(役員、会社秘書、共同会社秘書就任同意者のリスト)
- 定款および6.のフォームに株主、役員、会社秘書の署名を得る。
- 7.の署名は公証人によって認証されていること。
- 定款と6.に記したフォームを会社登記局に提出する。
- 会社登記局より登録証を受け取る。これが会社設立の証となる。
- 新規に登録された会社は、設立より30日以内に、設立の旨を一般に告知すること。
外国投資家は必ずしもBOIを通して投資をする必要はない。しかし、BOI第16条認可企業となることで、各種政府機関からの許可を得られることがあり、また、関税優遇策を得るためにはBOI第17条企業として認可される必要がある。
- BOIウェブサイト:BOI法に基づく会社設立
申請
BOI法第16条・第17条に基づく(優遇税制を受ける)子会社を設立する場合
スリランカ投資委員会(BOI)に投資認可を申請した後、手順に従って定款草案をBOIに提出する。優遇税制の適用条件を満たしていれば、BOIはこれを認可し、外国企業はBOIから得た認可書と併せて、会社登記局に会社設立申請書を提出する。
BOI法第16条・第17条による認可について
次のカテゴリーに当てはまる投資活動は、スリランカ投資委員会により認可される。
- BOI法第16条認可事業
BOI法第16条の下で認可された外国投資の税務優遇措置はない。同事業は、スリランカの一般の法律に従って運営され、国税法、関税法、外国為替管理法が適用される。
同認可は、次のことを目的とする。- 海外投資を開始するための支援
- 外国株式の新会社設立手続き
- 既存非BOI企業の株式を海外投資家に譲渡または発行
- ビザ発行の推薦
現在BOI法第16条の認可を受けるためには、25万米ドルの初期投資が必要。これには、100%外国投資または現地企業との共同投資が可能。
なお、小売りによる営業活動を行う場合は、外国から最低500万米ドルの資金が送金されることが条件。設立予定の会社の資本金は、スリランカの市中銀行に開設された対内投資口座(IIA)を通してスリランカに送金されることが必要とされる。 - BOI法第17条認可事業
BOI法第17条の下では、事業活動の認可や企業との契約締結を行い、投資の最低額やその他指定の要件を満たすことを条件に、内国税管理法や外国為替管理法、関税法等の法律に対する優遇措置が付与される。BOI法第17条の認可を受けるためには、最低300万米ドルの投資を行う必要がある。このような事業は、2017年内国歳入庁法第24条に基づく資本手当の強化という形で特別な優遇措置を受けることができ、投資額が5,000万米ドルを超える事業については、事業実施期間中のPALおよびCESSの免除も認められる。BOI法第17条の認可を受けた事業は、100%外国投資または現地企業との共同投資が可能。設立予定の会社の資本金は、スリランカの市中銀行に開設された対内投資口座(IIA)を通してスリランカに送金されることが必要とされる。
外国企業が、その他(通常法下で優遇税制を受けない)子会社を設立する場合
BOIの認可を得ずに、会社登記局に、会社設立申請書を直接提出できる。
しかし、事業分野および出資比率に外国資本参加の制限がある場合は、BOI法第16条に基づいて、会社設立前にBOIの承認を受けなければならない。
BOIへ支払う手数料
- BOI法第17条に基づく子会社の場合
- 申請処理手数料:400米ドル
- 第17条認可処理手数料
- 戦略的開発事業:4,500米ドル
- その他の事業:2,500米ドル
- 補足契約が発生する場合
- 戦略的開発事業:4,000米ドル
- その他の事業:700米ドル
- プロジェクト別の年間手数料については次のとおり。
事業の種類 |
年間手数料 (単位:ドル) |
|
---|---|---|
a. 一般の事業 | 3,100 | |
b. 農業分野の事業 | 1,000 | |
c. ココナツ繊維を使った製品およびハンディクラフト製品 | 1,400 | |
d. ホテル、病院、公益事業、観光事業、インフラ事業 ‐事業実施期間中 |
事業規模が300万米ドル未満 | 4,300 |
事業規模が300万以上1,000万米ドル未満 | 8,000 | |
事業規模が1,000万米ドル以上 | 10,700 | |
戦略的開発事業 | 20,000 | |
d. ホテル、病院、公益事業、観光事業、インフラ事業 ‐免税・軽減税率の適用期間中 |
事業規模が300万米ドル未満 | 2,800 |
事業規模が300万以上1,000万米ドル未満 | 6,700 | |
事業規模が1,000万米ドル以上 | 9,400 | |
戦略的開発事業 | 13,400 | |
d. ホテル、病院、公益事業、観光事業、インフラ事業 ‐免税・軽減税率の適用期間終了後 |
1,300 | |
e. 造業、サービス業、戦略的開発事業 ‐免税・軽減税率の適用期間中 |
20,000 | |
e. 造業、サービス業、戦略的開発事業 ‐免税・軽減税率の適用期間終了後 |
軽減率適用期間終了時に適用されている年間手数料の75% |
- BOI法第16条に基づく子会社の場合
- 申請処理手数料:400米ドル
- 定款の審査費用:200米ドル
- 契約書処理手数料:100米ドル
- 年間手数料:500米ドル
いずれの費用においても付加価値税が徴収される。また、すべての費用は支払い時の為替レートで換算したスリランカ・ルピー相当額を支払うこと。
BOI手続き後の会社設立手続き
BOI手続き後、会社登記局で会社設立の手続きを行い、会社設立証明書の発行を申請する。その際、商号の決定、会社登記局における商号の予約申請、覚書および定款の草案作成・提出が必要となる。
会社登記局に提出する書類は次のとおり。
- 定款(株主の氏名・住所・職業、取締役の名前・職業・住所、登記上の事務所住所を明記)
- 様式1:会社登録申請にあたり、会社法(2007年法律第7号)を遵守する旨の宣言書
- 様式18:取締役就任の同意書
- 様式19:取締役、秘書役、共同秘書役に就任した者の一覧表
会社登記局における登記手数料は次のとおり。いずれもVATが加算される。
- 有限会社(Private Companies)
- 定款の承認:2,000ルピー
- 登記申請書(様式1):4,000ルピー+VAT(8%)
- 取締役就任の同意書(様式18):役員1人につき2,000ルピー
- 秘書役就任の同意書(様式19):2,000ルピー
- 公開企業(Public Limited Companies)
- 定款の承認:2,000ルピー
- 登記申請書(様式1):20,000ルピー
- 取締役就任の同意書(様式18):役員1人につき2,000ルピー
- 秘書役就任の同意書(様式19):2,000ルピー
- 非有限会社(Unlimited Companies):15,000ルピー
- 信託会社(Company Limited with Guarantee):30,000ルピー
自主的に閉業する場合は5万ルピーを支払うこと(2007年会社法の498条を参照)。
- 会社登記局ウェブサイト(登記手数料) "Table of Fees"
支社・支店(Registered Overseas Company, Branch Office)
外国企業は、スリランカ国内に支店・支社の開設ができる。まず、登録する会社の名称を決め、会社登記局に同名称を保留するようオンラインで申請する。次にスリランカに事業所を設立した日から1以内に以下の書類を会社登録局に提出する。
- 会社設立の認証謄本もしくは会社設立の証拠となる書類(最近の日付で認証を受けること)
- 会社設立の定款の規定・綱領の認証謄本。ただし、英語で記載されていない場合は、正確な翻訳(英訳)文書が必要。
- スリランカ居住者(1人または複数)に、当該企業の代理人としての権限を付与する内容の委任状(会社印を押印し認証すること)
- 申請書提出の事業年度から過去2年間に遡った外国企業の財務諸表の写し
- 様式44:外国企業の登録事務所または主たる事務所所在地、およびスリランカにおける主たる事務所所在地を記載した供述書
- 様式45:外国企業の取締役一覧表
- 様式46:外国企業を代理・代表し、手続・サービスを受ける権限、および外国企業宛に送付される通知を受領する権限を付与されたスリランカ国内居住者(少なくとも1人)の氏名と住所
- スリランカ国内で行う事業内容を明記した取締役会決議案の認証謄本。
ここで言う「認証」とは、次の方法によって書類が真正な謄本であると証明されることを示す。
- 書類の原本を管理する当該国政府職員による認証
- 当該国の公証人による承認
- 当該国で宣誓を執り行う権限を有する者の面前で行う、外国企業の取締役による承認
- 当該国の政府職員による署名・捺印、当該国の公証人の署名・捺印、または当該国で宣誓を執り行う権限を持つ者の署名・捺印。これらの署名・捺印は、当該国に設置されたスリランカ大使館の職員により認証される(当該国にスリランカの大使館が存在しない場合、当該国に所在するスリランカの通商代表部またはスリランカ政府代表部により認証を受ける。これも不可能な場合、当該国の司法当局の職員により認証を受ける)。
会社登記局は、財務相および通商・消費者問題担当相の承認書を受け取り次第、登録証明書を発給する。登録証明書は、外国企業に対し、スリランカ国内において営業事務所を開設することを認可するものである。
なお、外国企業がスリランカ国内に事業所在地を登録する場合は、会社登記局において6万ルピーを納付する必要がある。
オフショア会社(Offshore Company)
外国企業がスリランカ国外で事業活動を行う場合、オフショア会社としての登録が可能である。オフショア会社の登録のためには、次の書類を会社登記局へ提出する必要がある。
- 登録する会社の会社名(オンラインで申請・承認を受けたもの)
- 申請書類
- 外国企業の定款/会社設立許可書/覚書もしくは類似の書類の認証謄本
- 外国企業の取締役の一覧表(様式 45)。同一覧表には、取締役の氏名、住所、職業、同企業における任務等を記載すること。
- 外国企業のスリランカ国内における1人以上の代理人の氏名・住所(様式 46)。代理人は、スリランカ国籍を有する国内居住者であり、スリランカにおいて外国企業を代理・代表する権限を付与する委任状を所持していなければならない。
- 設立国における会社の登記または主たる事務所の完全な住所を記載した書面、およびスリランカにおける会社事務所の完全な住所を記載した書面。
- スリランカに在住する1人以上の代理人を任命することを示す有効な委任状。
- 銀行発行の証明書(外国企業がスリランカで創業するに足りる資金を持つことを示すもの)
- 毎年1月31日(もしくは登録局が承認するそれ以降の日)までに以下の書類を提出すること。これはオフショア会社がオフショア会社として事業を継続する意思があることを示すためのものである。
- 所定の手数料を所定の方法で支払っていることを示す書類
- 前記3の銀行発行の証明書
スリランカで登記された会社は、オフショア会社としての登録を会社登録局長官宛に申請することができる。同申請は以下の条件を満たす場合に受け付けられる。
- 外国企業をスリランカにおいてオフショア会社として登録することが、外国企業の設立国において外国企業によって提起された裁判・その他の法的手続、または外国企業に対して提起された裁判・その他の法的手続に対し、一切悪影響を与えないこと。
- 外国企業の閉鎖が開始されていないこと。
- スリランカにおけるオフショア事業への従事が、外国企業の設立国において法的に問題がないこと。
- 資産の受取人が任命されていないこと。
- 債権者の権利を停止する指示や命令が出されていないこと。
オフショア企業は、その経費をスリランカにおける事務所が支弁するために、規定の総額10万米ドルを当初、スリランカの銀行に振り込むこと。また、オフショア企業の登録には、15万パキスタン・ルピーを支払う必要がある。登録は毎年更新が必要で、費用は15万パキスタン・ルピーである。オフショア企業は、会社登録機関より登録証明書の発給を受ける。
- 会社登記局ウェブサイト:スリランカでの事業実施ガイド Release of‘A Step by Step Guide to Doing Business in Sri Lanka’
駐在員事務所(Representative/Liaison Office)
外国企業は駐在員事務所を設置することができるが、そのステータスは支店と同様である。本社のための商品/サービス手配、調査・管理、代理店・商品に関する助言の提供、広報、報告を行うが、貿易・投資活動はできないため、売り上げは計上できない。事務所の維持に必要な資金を海外から外貨送金する場合は、証券投資口座(Securities Investment Account)を通じて行う。事務所設置後の1カ月以内に、会社登記局に次の必要書類を提出する必要がある。
- 会社定款等の認証謄本
- 会社役員名簿(氏名、国籍、現住所、兼業の有無)
- スリランカに居住する会社代表者の氏名、会社との関係を示す書類
- 本社住所やスリランカ国内でのビジネスを行う主要地域の供述書
- 会社の法人格を証明する認証謄本
管轄官庁
会社登記局(Department of the Registrar of Companies, Ministry of Finance)
所在地:400 D R Wijewardena Mawatha, Colombo 10
Tel:+94-11-2689208, 2689209
外国企業の会社清算手続き・必要書類
会社の清算については、裁判による清算、任意清算、裁判所の監督下での清算のいずれかの方法で行うことができる(根拠法:Companies Act No.07 of 2007)。
- 裁判による清算
次の条件を満たす会社は、裁判により清算される。- 裁判所により清算されるという特別決議を採択している。
- 会社設立から1年以内に事業を開始していない、または1年間事業を休止した。
- 従業員数が会社法で定められた最少人数を下回っている。
- 会社に取締役が不在である。
- 会社が自社の負債の支払いができない状態にある。
- 裁判所が、清算されるべき会社という見解を有している。
- 任意清算(Section 319 of Company Act No.07 of 2007)
以下条件を満たす会社は、任意清算できる。- 会社存続期間が事前に規定されており、その期間を超過した場合
- 会社の目的がイベントの実施であり、そのイベントが終了した場合
- 取締役会または株主総会で任意清算が決議された場合
- 任意清算されるという特別決議を採っている
任意清算手続きを終えた会社は、清算決議から14日以内に決議を官報にて通知する必要がある。それを怠った場合、10万ルピー以下の企業に対する罰金、および5万ルピー以下の罰金が各取締役に科せられる。
- 支払い能力に関する表明(Declaration of Solvency)(Section 324 of Company Act No.07 of 2007)
会社を任意清算する場合、取締役会にて清算日から12カ月以内にすべての負債を返済できることを決議し、表明する必要がある。同表明は、清算議決日の直近5週間以内に作成されたものであり、最新の詳細な資産状況を含む必要がある。任意清算には、株主による任意精算と、債権者による任意清算がある。
- 裁判所の監督下での清算
会社が任意清算を決議したとき、裁判所は、当該会社が契約に基づき債権者、寄付者等への債務返済、および賠償等の責任を果たすよう、自由に監督することができる。
その他
外国企業のスリランカ国内における資金調達について
外国企業のスリランカ国内における資金調達
スリランカにおける外国企業の駐在員事務所(Liaison Office)は、それぞれの本社からの資金の送金により現地費用を賄う必要がある。駐在員事務所は、スリランカ国内で資金を調達することはできない。
スリランカで登録されている外国企業の支店(2007年会社法7号では海外企業と呼ぶ)は、制限なく国内市場で資金を調達できる。その場合は、銀行や融資機関が定める通常の規則と条件を遵守すること。
スリランカにおける外国企業の現地法人会社は、国内市場で自由に資金を調達し、スリランカの所有会社と同じ便宜と特権を享受できる。融資期間が3年以上であれば、海外から借り入れることもできる。