為替管理制度
最終更新日:2024年05月03日
- 最近の制度変更
-
-
2024年4月12日
-
2024年3月22日
-
管轄官庁/中央銀行
ラオス銀行外貨管理局
ラオス銀行外貨管理局(Foreign Exchange Management Department, Bank of the Lao P.D.R)
Yonnet Road, P.O.Box 19, Vientiane, Lao PDR
Tel:(+856)-(0)21-264-590
Bank of the Lao P.D.R
為替相場管理
クロール型制度(Crawl-like Arrangement)を導入している。
国際通貨基金(IMF)が毎年発行しているAnnual Report on Exchange Arrangements and Exchange Restrictions2022年版では、ラオスの為替管理は変動相場制と見なされないクロール型制度(Crawl-like Arrangement)に分類されている。
貿易取引
輸出入ではラオスの商業銀行に貿易決済用の口座(米ドル、キープ等)を保有しなければならず、すべての決済は商業銀行や金融機関を介する必要がある。輸出で得た外貨収入については一定の比率で国内の口座へと入金する必要がある。
外貨管理に関する規則
ラオスの居住者・非居住者は、商業銀行の外貨での口座開設や、現金保有が認められている(2022年7月7日付改正外貨管理法第8条)。商品やサービスの輸出者は、輸出の全金額をラオスの商業銀行口座へと入金する必要がある。また入金した外貨をその商業銀行へと販売しなければならないとされる。原料や生産機械や付帯するサービス費の支払いが必要な場合は、その商業銀行から外貨購入を申請することができる(同第12条)。
商品サービスの輸出入に関する外貨管理に関する中央銀行総裁合意第677号(2023年7月24日付)では、輸出入を行う企業は、商工省から輸出入業者登録証明を取得した後、ラオス中央銀行から輸出入業者登録申告証明書を取得し、ラオス国内の商業銀行にて輸出入用口座を開設する原則を定めている。
また、商品やサービスの輸出からの外貨収入の管理に関する中央銀行総裁合意第333号(2024年3月7日付)では、商品やサービスをラオスから輸出する企業が得る外貨収入について、[1]ラオス国内口座への入金規則、[2]商業銀行での現地通貨キープへの両替義務を規定している。詳細は、ジェトロの記事「ラオス中銀、輸出企業の外貨収入管理を強化へ(2024年3月22日付)」を参照。
決済通貨
海外との決済は外貨使用が認められている。一方、ラオス国内での支払いは現地通貨キープによって行われなければならない。ラオスの居住者・非居住者は、商業銀行の外貨での口座開設や、現金保有が認められるが(2022年7月7日付改正外貨管理法第8条)、ラオス国内での商品・サービス・債務・配当金・給与・賃金・政府への税務といった支払いや受領の前に、商業銀行でキープへと両替しなければならないと定められている(同第9条)。ただし、経済特区や免税店など国内で外貨を使用することができる項目をラオス中央銀行が別途規定するとしている。また、外国人雇用者の給与については、外貨払いが例外的に認められている。詳細はジェトロの調査レポート「ラオス投資ガイドブック2024(2024年2月)」第9章および16章を参照。
決済手段(輸出/輸入)
信用状(L/C)をはじめ、基本的な決済手段は利用可能。
外貨支払・受取時の中銀の許認可・報告義務の有無
なし。
貿易外取引
銀行決済システムもしくは金融機関を介して外国とのサービスに関連した出入金を行うことができる(2022年改正外貨管理法第10条)。
技術援助契約に基づく、ラオス国外の海外本社等の企業にロイヤルティーが支払われる場合にも、外貨の利用は認められている(2015年11月25日ラオス銀行金融政策局外国為替管理課へのヒアリング情報)。
資本取引
国内投資、海外投資いずれの場合も、資金送金の都度ラオス中央銀行から許可を得る必要がある。証券取引は2011年より開始され、2024年5月時点で10社が株式を上場している。居住者・非居住者ともに、ラオスの商業銀行での口座開設が可能。外国投資家による利益・配当・初期投資など、本国あるいは第三国への送金も認められている。
対内および対外直接投資に関する規制・許認可
- 対内直接投資
外国投資家は、企業登録証に記載された金額の登録資本金を、ラオスの商業銀行口座に送金する。複数回にわたって資本の輸入を行う場合、政府に認可された対外借入金を含むすべての外国為替取引と資産の輸入については、その都度ラオス中央銀行に申告する。銀行取引明細書、あるいは、資産の場合は税関での申告伝票をもって、ラオス中央銀行は資本金送金証明書を発行する。いずれの証票もない場合は、当該証明書は発行されない。現金を持ち込む場合は国境の関税官へと申告し証明書を取得する必要がある(2022年改正外貨管理法第18条)。
- 対外直接投資
ラオス居住者がラオス国外での直接・間接投資を希望する場合、ラオス中央銀行から認可が必要である(同第19条)。
証券投資に関する規制・許認可
ラオスでは、2011年1月に証券取引所(Lao Securities Exchange:LSX)が設立された。2024年5月時点で株式上場企業は、ラオス外国商業銀行(Banque pour le Commerce Exterieur Lao Public Company:BCEL)、ラオス電力発電株式会社(Electricite du Laos Generation Public Company:EDL-Gen)、ペトロリアムトレーディングラオ株式会社(Petroleum Trading Lao Public Company:PTL)、スワニーホームセンター株式会社(Souvanny Home Center Public Company:SVN)、プーシー建設開発株式会社(Phousy Construction and Development Public Company:PCD)、ラオセメント株式会社(Lao Cement Public Company:LCC)、マハトゥンリーシング株式会社(Mahathuen Leasing Public Company:MHTL)、ラオアグロテック株式会社(Lao Agrotech Public Company:LAT)、ビエンチャンセンターラオ株式会社(Vientiane Center Publich Company:VCL)、ラオアセアンリーシング株式会社(Lao ASEAN Leasing Public Company:LALCO)の10社。
ラオス証券取引所ウェブサイト:Lao Securities Exchange:LSX
ラオスでの居住者・非居住者ともに証券取引が可能である。外国人(非居住者)が証券を売買するためには、証券取引所が発行する投資家登録証(Investors ID)の取得が必要である。
外国人(非居住者)投資家が証券取引を行うまでの流れは次のとおり。
- ラオスに居住する代理人(証券会社)を選定する。現在利用できる証券会社は、BCEL-KT証券、ラオチャイナ証券、ランサン証券の3社。
- コルレス銀行を選択する。BCEL-KL証券あるいはラオチャイナ証券を利用する場合はBCEL銀行に、ランサン証券を利用する場合はラオス開発銀行に自動的に選択される。
- 必要書類を用意して、証券口座と銀行口座を開設する。証券口座の承認を得る。
(出所)ラオス証券取引所ウェブサイト:Trading Procedure-Stock Trading
資金、配当、利益を商業銀行口座を介して外国へ送金することができる(2022年改正外貨管理法第21条)。
対外借入・貸出に関する規制・許認可
個人・法人の対外借入および貸出の際は、次の書類をラオス中央銀行金融政策局外国為替管理課に提出して、認可を受ける必要がある。金額・融資期間・通貨に関する規定は特になく、個別の借入・貸出契約に基づく(2015年10月20日同課へのヒアリング情報)。未許可で対外借入を行った場合、借入額の10%に相当する額の罰金(2回目以降は、前回の2倍)が科せられるので注意が必要(2022年改正外貨管理法第55条)。
- 対外借入の際の必要書類
- 対外借入申請書
- 概要事業計画書
- 借入金利用計画書、借入金返済計画書
- 借入契約書のドラフト、あるいは借入人と貸出人のつながりを証明するもの
- 対外借入に関する株主総会決議書
- 事業ライセンスおよび納税ライセンス(法人の場合)
- 投資ライセンスのコピー(外国人投資家の場合)
- 対外貸出の際の必要書類
- 対外貸出申請書
- 外部監査済みの貸借対照表および財務諸表
- 貸出契約書のドラフト
- 貸出元の理事会決議あるいは株式総会決議
- 貸出先国の信頼できる銀行から発出された返済保証
預金勘定取引
- ラオス居住者の場合
ラオスの商業銀行において、外貨建ての預金口座の開設・利用、利子の受け取りが可能。ラオス居住者は、ラオス中央銀行の認可を受け、次の目的のために国外に銀行口座を開設し、利用することが可能(同第31条)。
- 商業銀行の事業遂行
- 商業ローンを含む外国との融資の受理と支払い
- 関係機関の許可を得た外国への投資、支店や駐在員事務所の開設
- 中央銀行が定めるその他の目的
- 非居住者の場合
ラオスの非居住者は商業銀行においてキープや外貨建ての預金が可能(同第30条)。
利子、配当、利益など、対外送金に関する規制・許認可
投資奨励法に規定される外国投資家による利益、配当、初期投資、利子、サービス費用、帰国した外国人労働者の賃金については、本国あるいは第三国への送金が認められている(外国為替および貴金属管理に関する国家主席令第5条)。
送金の際に必要な書類は次のとおりである。
- 送金申請書
- 預金銀行の銀行口座証明書
- ラオス中央銀行が発行した資本金送金証明書
- ラオス中央銀行が発行した借入許可書(借入金および利息の送金の場合)
- 配当に関する理事会あるいは株主総会の決議
- 計画投資省が発出した、投資ライセンスの延長をしない、あるいは一部またはすべての事業運営が終了したことを示す合意書、あるいは通達(投資期間満了後、あるいは事業の一部またはすべて解消した後の資本金を送金する場合)
関連法
改正商業銀行法第56号(2018年12月7日付)、外国為替および貴金属管理に関する国家主席令第1号(2008年3月17日付)、外国為替および貴金属管理に関する首相令施行令第1号(2010年4月2日付)、証券法(改正)第79号(2019年12月3日付)、改正外貨管理法第15号(2022年7月7日付)
その他
暗号資産取引については、採掘および取引所の運営が試験的に認可されている。また、現金の持ち込み/持ち出しについては、外貨管理法、外貨両替および貴金属管理に関する国家主席令履行ガイドラインに規定されている。
暗号資産取引
ラオス中央銀行は暗号資産について、ラオスにおいて合法的な使用可能な通貨や決算手段ではなく、当局による管理下にもないことから、投資や売買に対してリスクを考慮する必要があるとの勧告(暗号資産の使用と投資に対する中央銀行勧告第314号(2018年8月29日付))を出していたが、2021年9月に方針を転換して6社に暗号資産の採掘、売買を認めるパイロット事業を認可した(暗号資産の採掘、EDLとの電力売買契約に関する首相府令第1158号(2021年9月9日付))。また、デジタル資産ビジネスのパイロット事業に関する技術通信省大臣合意第888号(2021年11月9日付)にて、採掘事業は10MW以上の電力購入契約を行い、電気料金を6.95セント/kWhとすること、採掘した暗号資産はラオス内の取引所にて売買を行うことを義務付けた。取引所の売買には15%の課税を行うとしている。これまでマイニング11社、2取引所が認可されている(2022年6月第3回国会答弁)。
現金の持ち込み/持ち出し
1億5,000万キープ相当以上のキープおよび外貨の現金をラオスへ持ち込む場合は、税関に申告し、持ち込み証明書を発行してもらう必要がある。
1億5,000万キープ相当以上のキープおよび外貨の現金をラオスから持ち出す場合は、中央銀行通貨政策局に申請し事前許可を取る必要がある。ただし、持ち込み証明書を保有する場合は、証明書の金額以内であれば中央銀行への申請は不要で、国境の関税官に証明書を直接提出する。証明書の金額を上回る場合は、中央銀行に申請が必要(ラオスへの現金の持ち込み・持ち出しに関する告示14号(2023年7月13日))。