ラオスの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は3.7%で、観光・運輸などサービス業が牽引。
  • 中国ラオス鉄道の旅客・貨物輸送は倍増。
  • 雨量不足による電力生産は前年割れ、鉱物生産は外需に支えられ増加。
  • 資源セクターを中心に中国からの旺盛な投資が続く。
  • 債務問題への取り組みに苦慮する中、外貨管理を強化。

公開日:2024年10月10日

マクロ経済 
観光・運輸などが経済成長を牽引、電力生産は前年割れ

アジア開発銀行(ADB)の分析レポートによると、2023年の実質GDP成長率は3.7%で緩やかな経済回復が続いた。観光・運輸などのサービス業(前年比5.6%増)が牽引した。国際線フライトは2023年以降、中国各都市(長沙、成都、昆明)などとの主要路線が順次再開し、外国人観光客は2022年の130万人から2023年に342万人(2.6倍)へと増加した。しかし、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)禍前の2019年の479万人を依然下回ったままである。2021年12月に開業した中国ラオス鉄道のラオス区間における旅客輸送は延べ259万人(1.9倍)となった。2023年4月から首都ビエンチャンと昆明間の越境乗客一貫輸送が開始され、同年末までに11万人が利用した。9月には4台目となる電気機関車が納車され、同鉄道による輸出入貨物量は435万トン(2.0倍)と増大した。卸・小売業は韓国系ハイパーマートやコンビニ等の拡大や観光業に支えられたが、高いインフレ(2023年平均31.2%)による内需の制約を受けた。

農業は1.4%成長で5月の猛暑と天候不順(雨季入りの遅れや降雨不足)、インフレによる投入資材コストの上昇や労働者不足などの影響を受けた。主食のコメの生産量は398万トン(5.3%増)と増加した。

工業は2.4%成長と、2022年の4.3%から減速した。エネルギー鉱山省によると、2023年中に国内送電用のナムフンダム(15メガワット〔MW〕)と4つの太陽光発電所(合計17MW)が完成し、発電容量1MW以上の全国の発電所は98カ所(水力81、太陽光12、バイオ4、火力1)で総発電容量は1万1,692MW(水力9,629MW、火力1,878MW、バイオ112MW、太陽光73MW)に拡大した。しかしながら、エルニーニョ現象による降雨不足で電力生産量は4万8,701ギガワット時〔GWh〕(前年比4.6%減)と振るわなかった。うち3万7,538GWh(6.1%減)が輸出された。一方、国内の電力消費は猛暑や暗号資産マイニング事業の増加による消費量が増加し1万1,583GWh(19.4%増)に達した結果、周辺国からの電力輸入も1,765GWhと前年から倍増した。1月にはカンボジア向けの500キロボルトの送電線が完成し、4月には三菱商事らが出資する東南アジア最大級のベトナム向け陸上風力発電所(600MW)の建設が開始された。鉱業は銅、鉄鉱石、カリウム等の増産により輸出が好調だった。110社、202事業で採掘加工が行われている。鉱業からより高い税収を確保する目的で導入されたパイロット事業は、11月までに93社(鉄鉱石37件、金・砂金41件、レアアース13件など)が許可されたが、経済性や監督が難しく通常の認可スキームに戻す方針である。レアアースは従来スキームを含めて28件の事業が進められており、うち3件に対し約2万トンの輸出許可が与えられた。ラオス政府は、レアアース管理にブロックチェーン技術を導入する計画がある。また、鉱物法ではレアアースは輸出禁止品目とされることから、法律改正の準備を進めている。10月には南部セコン県でボーキサイトの採掘が開始した。

製造業は輸出向け労働集約産業を中心に、労働者不足や外需減少により減産した。ラオス政府はインフレに対応するため、2023年10月に月最低賃金を120万キープから160万キープへと引き上げ(33.3%増)、一部の公務員へは月15万キープの給付金の支給を開始した。しかしながら、インフレ率は2月に前年同月比41.3%とピークに達した後も、高止まりが続き、2023年平均で31.2%となった。現地通貨キープは、2023年を通してブラックマーケットでは対ドルで21.3%下落、対バーツで22.3%下落した。高インフレ下での実質賃金の減少や現地通貨の下落により、タイや韓国などへの出稼ぎを選択する労働者が増加した。タイへは40万人以上が違法・合法による出稼ぎに行っていると推定されている。韓国との間では慶尚北道安東市など40以上の市・郡と農業季節労働者制度に関する協力覚書を締結しており、5カ月程度の労働者派遣が急増した。労働社会福祉省によると、海外への出稼ぎ労働者からの本国送金は月5,200万ドル相当と試算している。また、実質賃金の低下によって農業を選択する賃金労働者も増加した。

世界銀行の調査によると、3分の1以上の世帯がインフレのために教育支出を減らした。高等教育の退学率が2018年の7.1%から2023年には12.5%に増加し、国立大学への出願者は38%減少した。同時に、教員不足も大きな課題であり、長期的な人的資源の脆弱化が懸念される。

貿易 
鉱物輸出が大幅増、雨量不足により電力輸出は微増

ラオス商工省によると、2023年の輸出額は83億6,800万ドル(前年比2.1%増)、輸入額は71億8,900万ドル(5.6%増)で、貿易黒字は11億7,900万ドル(15.1%減)だった。なお、内陸国であるラオスは通関を介さない国境貿易も広く行われていることから、実際の貿易額はさらに多いとみられる。

輸出を品目別にみると、鉱物が前年比22.9%増の25億5,100万ドルで、電力を抜いて最大の輸出品目となった。うち、埋蔵量が減少傾向にある金は7億ドル(12.7%減)であった。一方、銅が4億8,200万ドル(21.0%増)、鉄鉱石が4億1,000万ドル(2.5倍)、カリウムが4億100万ドル(25.2%増)と輸出が大きく増加した。2番目に輸出が大きかったのは電力で23億8,200万ドル(1.0%増)であった。エネルギー鉱山省によると、3万7,538GWh(6.1%減)を周辺国へ輸出した。うち、タイ向けが3万2,457GWh(6.1%減)で全輸出量の86%を占める。また、ベトナムへ2,321GWh(2.1%減)、カンボジアへ2,565GWh(6.2%減)、ミャンマーへ98GWh(3.4倍)、中国へ15GWh(81.8%減)、シンガポールへ83GWh(54%減)を輸出した。2018年から開始されていたマレーシアへの輸出は、2022年同様に実施されなかった。

農畜産物の輸出は12億200万ドル(前年比11.5%減)となった。主要品目であるキャッサバが3億3,300万ドル(1.4%増)とわずかに増加したが、天然ゴムは相場が低迷したことから3億1,000万ドル(7.6%減)、バナナは2億900万ドル(11.1%減)となった。コーヒー豆は9,500万ドル(3.6%増)であった。牛および水牛はランピースキン病の流行などにより2,500万ドル(78.8%減)と減少した。9月には中国向けの生きた牛・水牛の輸出が再開した。中国政府から50万頭の免税割り当てが供与されることから牛の飼育への投資は増加しており、今後は畜産輸出が増加すると見られる。また、10月には中国ラオス鉄道の中国側国境駅(モーハン駅)で穀物、芋類、豆類の植物検疫体制が確立した。

加工食品は6億2,100万ドル(前年比10.8%増)と好調であった。うち、サトウキビから精製された砂糖が2億6,500万ドル(12.5%増)、キャッサバから精製されたタピオカ澱粉が1億900万ドル(2.1倍)となった。近年、タピオカ澱粉加工工場の設立が進んでいる。木材・木製品・パルプ・紙は7億9,200万ドル(12.7%減)だった。うち、2021年から生産が本格化した溶解パルプやロール紙の輸出は7億5,000万ドル(11.7%減)だった。電子機器やケーブルハーネスなどの工業製品や縫製・靴製品の輸出は、労働者不足や外需の減退の影響を受け、それぞれ3億9,600ドル(17.9%減)、4億1,000万ドル(7.2%減)と減少した。

輸出を国・地域別でみると、1位のタイは28億8,400万ドル(前年比7.6%減)で輸出総額の34.5%を占めた。うち、電力が降雨量不足の影響を受けて20億4,500万ドル(7.1%減)と減少した。キャッサバが2億8,600万ドル(0.8%増)、電気機械および同部品が8,900万ドル(22.5%減)だった。2位の中国は25億300万ドル(12.0%増)で輸出総額の29.9%を占めた。パルプ・紙が7億3,900万ドル(10.8%減)、銅および銅製品が4億2,500万ドル(27.0%増)、化学肥料として使用されるカリウムが3億4,800万ドル(23.2%増)となった。2023年の中国のカリウム輸入額で、ラオスは4番目に位置する。3位のベトナムは13億9,100万ドル(7.5%増)で、砂糖が2億2,900万ドル(2.2%減)、天然ゴムが2億300万ドル(11.9%減)だった。電力は1億2,800万ドル(97.8%増)、石炭はベトナム国境付近の採掘・輸出が開始されたことで9,900万ドル(前年は実績無し)となった。

輸入を品目別にみると、化石燃料が13億2,000万ドル(前年比1.1%増)で、総輸入額の18.4%を占めた。燃料ガス協会によると、輸入量は燃料不足を招いた2022年から回復して17億700万リットル(28.7%増)となったが、外貨流出の大きな要因でもある。ラオス政府は、2022年の石油不足問題を契機に輸入元の多様化を図るため、ロシア産石油の特恵価格での購入交渉をしているが進捗していない。農畜産物・食品は7億9,400万ドル(15.2%減)だった。うち、最も多かったのは飲料で2億2,300万ドル(10.1%減)となり、多くがベトナムなどへ再輸出されているとみられる。また、機械・電子機器および部品は12億9,600万ドル(13.8%増)で大規模投資用の機械類の輸入などが増加した。同様に車両および部品は10億2,600万ドル(35.8%増)、鉄および鉄製品は5億5,800万ドル(92.3%増)と大きく増加した。電力は主に乾季における電力不足により、1億1,800万ドル(2.9倍)を輸入した。電力輸入の92%はタイからの輸入である。

ラオス政府は外貨不足やインフレへの対策として、国内生産を増やし輸入を抑制する国家アジェンダを打ち出している。2023年10月には、排気量の大きな自動車への物品税率を大幅に引き上げた。また、化石燃料の消費削減のために電気自動車(EV)導入を推進する一方、WTOルールなどに抵触しない方法を模索しながら、ラオス農林省は輸入を抑制して国内生産を促進する作物リストを作成し、ラオス商工省は贅沢品などを中心に輸入制限を行う品目を選定している。

輸入を国・地域別にみると、タイは33億3,400万ドル(前年比0.4%減)と、全輸入額の46.4%を占め、引き続き最大の輸入相手国である。化石燃料が12億1,600万ドル(2.2%増)と最も多く、ラオスの化石燃料の輸入総額の92%を占めた。電気も1億900万ドル(3.1倍)に増加した。2位の中国は43.3%増の23億9,300万ドルと、2年連続で大きく増加し、総輸入額に占める中国のシェアは33.3%に拡大した。EVの輸入増加などで車両および部品は4億6,800万ドル(76.2%増)となった。電子機器および部品は3億3,700万ドル(9.2%増)であった。また、鉄および鉄製品も3億6,800万ドル(2.5倍)に急増した。3位のベトナムは13.1%減の3億4,900万ドルと2年連続で減少した。化石燃料は3,700万ドル(36.9%減)と大幅な減少となった。

ラオス政府は2024年社会経済開発計画において、輸出額を87億2,400万ドル、輸入額を72億8,500万ドル、貿易黒字を14億3,800万ドルと計画している。輸出では、電力を28億1,200万ドル(4万1,867GWh)、鉱物を16億8,500万ドル、農畜産物を13億ドルと計画している。

表1-1 ラオスの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物 2,075 2,551 30.5 22.9
階層レベル2の項目 399 482 5.8 21.0
階層レベル2の項目 805 703 8.4 △ 12.7
階層レベル2の項目鉄鉱石 166 410 4.9 147.5
階層レベル2の項目カリウム 320 401 4.8 25.2
電力 2,358 2,382 28.5 1.0
農畜産物 1,358 1,202 14.4 △ 11.5
階層レベル2の項目キャッサバ 329 333 4.0 1.4
加工食品 561 621 7.4 10.8
木材・木製品・パルプ・紙 908 792 9.5 △ 12.7
工業製品 483 396 4.7 △ 17.9
縫製・靴製品 442 410 4.9 △ 7.2
その他 13 13 0.2 △ 1.3
合計 8,198 8,368 100.0 2.0

〔出所〕ラオス商工省輸出入統計

表1-2 ラオスの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
化石燃料 1,306 1,320 18.4 1.1
階層レベル2の項目ディーゼル 953 952 13.2 △ 0.1
機械・電子機器および部品 1,138 1,296 18.0 13.8
農畜産物・食品 937 794 11.0 △ 15.2
階層レベル2の項目飲料 248 223 3.1 △ 10.1
車両および部品 756 1,026 14.3 35.8
階層レベル2の項目車両(二輪・トラクター除く) 454 580 8.1 27.7
階層レベル2の項目トラクター 77 74 1.0 △ 2.9
木材・木製品・パルプ・紙 440 315 4.4 △ 28.3
鉄および鉄製品 290 558 7.8 92.3
プラスチック製品 206 231 3.2 12.2
電力 40 118 1.6 193.6
その他 1,695 1,530 21.3 △ 9.7
合計 6,808 7,189 100.0 5.6

〔出所〕ラオス商工省輸出入統計

表2 ラオスの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 7,645 7,816 93.4 2.2 5,944 6,621 92.1 11.4
階層レベル2の項目日本 132 104 1.2 △ 20.8 151 159 2.2 5.1
階層レベル2の項目中国 2,234 2,503 29.9 12.0 1,670 2,393 33.3 43.3
階層レベル2の項目香港 81 83 1.0 2.3 21 18 0.3 △ 13.3
階層レベル2の項目韓国 21 15 0.2 △ 28.7 65 80 1.1 22.8
階層レベル2の項目台湾 6 6 0.1 △ 3.9 19 17 0.2 △ 13.9
階層レベル2の項目ASEAN 4,673 4,618 55.2 △ 1.2 3,924 3,841 53.4 △ 2.1
階層レベル3の項目タイ 3,122 2,884 34.5 △ 7.6 3,349 3,334 46.4 △ 0.4
階層レベル3の項目ベトナム 1,294 1,391 16.6 7.5 401 349 4.9 △ 13.1
階層レベル3の項目カンボジア 7 200 2.4 2819.4 1 5 0.1 366.2
階層レベル3の項目シンガポール 141 96 1.2 △ 31.5 84 86 1.2 3.1
階層レベル3の項目マレーシア 13 2 0.0 △ 83.6 58 28 0.4 △ 50.9
階層レベル2の項目インド 102 102 1.2 △ 0.6 24 27 0.4 13.6
階層レベル2の項目オーストラリア 395 385 4.6 △ 2.5 70 86 1.2 24.2
欧州
階層レベル2の項目EU 291 307 3.7 5.7 146 190 2.6 30.2
階層レベル2の項目英国 29 27 0.3 △ 6.9 37 19 0.3 △ 48.1
階層レベル2の項目スイス 76 59 0.7 △ 22.7 282 52 0.7 △ 81.4
北米
階層レベル2の項目米国 111 114 1.4 2.3 314 226 3.1 △ 27.9
ロシア 0 0 0.0 136.2 11 4 0.1 △ 66.7
合計(その他含む) 8,198 8,369 100.0 2.1 6,808 7,189 100.0 5.6

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ラオス商工省輸出入統計

対内直接投資 
中国からの旺盛な投資が続く

ラオス商工省によると、2023年の対内直接投資額(新規登録ベース、自国投資含む)は92億3,700万ドル(前年比0.4%増)と、コロナ禍の2021年から大きく回復した前年実績を上回り、90億ドル台を維持した。業種別にみると、卸・小売・自動車修理業が最大で34億600万ドル(13.2%増)、次いで金融・保険業が8億5,500万ドル(28.0%減)であった。2022年と比較して大きく伸びた業種は、コンサルタント・科学技術(6億6,500万ドル、2.9倍)、観光業の回復を見込んだホテル・レストラン業(3億7,300万ドル、46.1%増)、鉄道事業やドライポート事業などの運輸・倉庫業(2億6,100万ドル、44.2%増)である。

国・地域別にみると、ラオス資本の国内投資が44億9,600万ドル(前年比12.1%増)と全体の半分を占めた。ラオス資本以外では、中国が28億9,500万ドル(12.8%減)と外国直接投資では最大である。次いでベトナムが7億9,800万ドル(42.4%増)、タイが6億5,900万ドル(41.3%増)であった。

表3 ラオスの国・地域別対内直接投資[新規登録ベース、グロス](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 8,839 9,136 98.9 3.4
階層レベル2の項目日本 175 117 1.3 △ 33.4
階層レベル2の項目中国 3,321 2,895 31.3 △ 12.8
階層レベル2の項目韓国 185 56 0.6 △ 69.7
階層レベル2の項目ASEAN 5,086 6,038 65.4 18.7
階層レベル3の項目ラオス 4,011 4,496 48.7 12.1
階層レベル3の項目ベトナム 560 798 8.6 42.4
階層レベル3の項目タイ 466 659 7.1 41.3
階層レベル3の項目カンボジア 8 56 0.6 617.8
階層レベル3の項目マレーシア 25 25 0.3 1.5
階層レベル2の項目インド 10 16 0.2 55.0
階層レベル2の項目オーストラリア 61 14 0.2 △ 77.0
欧州 330 36 0.4 △ 89.0
階層レベル2の項目EU 330 36 0.4 △ 89.1
階層レベル3の項目フランス 291 30 0.3 △ 89.8
階層レベル2の項目英国 0 0 0.0 140.5
北米 20 15 0.2 △ 25.5
階層レベル2の項目米国 13 9 0.1 △ 32.8
ロシア 0 5 0.1 6,766.2
合計(その他含む) 9,204 9,237 100.0 0.4

〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)の合計値。
〔注2〕ラオス企業による対内投資を含む。
〔注3〕2022年1ドル=1万4,035キープ、2023年1ドル=1万8,337キープで算出。
〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

表4 ラオスの業種別対内直接投資[新規登録ベース、グロス](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資
2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産業 380 429 4.7 13.0
卸・小売・自動車修理 3,010 3,406 36.9 13.2
電気・ガス 1,070 443 4.8 △ 58.6
建設 594 825 8.9 38.9
製造 694 673 7.3 △ 2.9
鉱業 884 806 8.7 △ 8.8
金融・保険 1,187 855 9.3 △ 28.0
ホテル・レストラン 255 373 4.0 46.1
コンサルタント・科学技術 228 665 7.2 191.2
不動産 444 233 2.5 △ 47.6
上下水道、廃棄物処理 13 2 0.0 △ 81.9
運輸・倉庫 181 261 2.8 44.2
健康医療 27 24 0.3 △ 9.7
情報通信 43 52 0.6 21.7
教育 23 12 0.1 △ 48.7
エンターテイメント 9 13 0.1 47.3
その他 161 156 1.7 △ 3.4
合計 9,204 9,229 100.0 0.3

〔注1〕ラオス企業による対内投資を含む。
〔注2〕2022年1ドル=1万4,035キープ、2023年1ドル=1万8,337キープで算出。
〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

ラオス企業による国内投資の主な動きとしては、サイサナ・エナジー・ソーラー(Xaysana Energy Sole)などによるナムイームン水力・太陽光発電所の開発合意(4億5,000万ドル)、ADICトレーディング(AIDC Trading)などによるタピオカ澱粉・バイオガス工場建設(5,200万ドル)の開始、ペトロトレーディングラオ(Petroleum Trading Lao)による中部ボリカムサイ県パクサンでのロジスティクスターミナル建設(5,600万ドル)の開始、ポンサワングループ(Phongsavanh Group)による首都ビエンチャンでのスマートシティ開発(1,500ヘクタール)などが挙げられる。サイサナグループ(Xaysana Group)は、政府データを含むビッグデータ管理プロジェクトに関する可能性調査を開始した。ラオスの5,000キープ紙幣にも描かれ、ラオスの工業化を象徴していた国営と中国資本の合弁であるラオ・ヴァンヴィエン・セメント(Lao Vangvieng Cement)工場は、競争の激しいセメント産業から保有する土地や施設を活用する観光開発へ切り替える計画を発表した。その他にも、ASEAN議長国を控えて首都で複数のホテル建設や中部サイソムブン県や南部チャムパサック県、北部シェンクワン県などの大規模観光地開発が進められた。

外国投資では中国からの投資は依然旺盛である。製造業では、中潤光能科技(SolarSpace)が太陽光パネルの生産をビエンチャン郊外のサイセター総合開発区で開始した。ラオス中国電力投資開発は首都での電力工業経済特区開発に関する可能性調査を開始した。中部カムアン県で年100万トンのカリウム生産を行う中農鉀肥(SINO-AGRI POTASH)は43億ドルを投資し、スマートリサイクル工業団地を開発する可能性調査を開始した。アジア最大級のカリウム工業拠点とする計画である。中国広核電力(CGN Power)は中国向け電力開発としてラオス北部3県の総合クリーンエネルギー開発を行う計画で、第1フェーズとしてウドムサイ県での太陽光発電所(1,000MW)の開発合意書を締結した。メコン川本流ダムでは、中国大唐(China Datang)とタイのガルフエナジー(Gulf Energy)が18億8,000万ドルを投資して開発するパクベンダム(912MW)の売電契約を締結した。また、中国政府から4億元の支援で建設された鉄道技術職業学校が開校した。

ベトナムからの投資案件をみると、アミ・エイシー・リニューアブル(AMI AC Renewables)は中部サワンナケート県で252MWの風力発電所の開発合意を締結した。今後20億ドルを投資し、1,220MWへと拡張する計画である。UPCベトナムとラオス企業は合弁で、10億ドルの投資で850MW規模の風力発電所建設を行う可能性調査を開始した。ベトナムは2025年までに3,000MW、2030年までに5,000MWの電力をラオスから輸入する計画である。また、セコン県で採掘される石炭をベトナムへと効率的に輸送するために、両国境間を5.5キロメートルのベルトコンベアで結ぶ事業の可能性調査が行われている。サービス業では、ビンファスト(VinFast)が自社のバッテリー式EV(BEV)を利用したEVタクシーサービス(当初150台を投入)を開始した。

タイからの投資では、10億バーツのソフトローンで建設が進められていたタイ国鉄のラオス国内への延伸事業であるビエンチャン・カムサワート駅が2023年10月に完成した。小売業では、首都でのハイパーマート「Big C」の建設が進んだ。また、9月にはCPオールラオス(CP ALL LAOS)による投資で、ラオス初となるセブン-イレブンがオープンした(2024年6月現在7店舗に拡大)。再生可能エネルギーでは、UACグローバル(UAC Global)がラオスの廃棄物からごみ固形燃料を生産する事業でエネルギー鉱山省と契約した。脱炭素を目指すサイアムセメントグループ(Siam Cement Group)のセメント事業へ供給する計画である。

韓国からの投資では、LVMC(コーラオ)がハイパーマート「コックコック・メガ・マート(Kokkok Mega Mart )」に次いで、コンビニ店舗のフランチャイズ展開や、EVタクシー(トゥクトゥク)事業をスタートさせた。さらに、同社はラオス電力公社(EDL)とEV充電、大型商業施設建設などを行う合弁会社の設立や、韓国の製薬会社と製薬工場の設立に関する合弁契約などを締結し、事業の多角化を加速している。

対日関係 
コーヒー豆輸出が大きく減少

2023年の日本への輸出は1億400万ドル(前年比20.8%減)で輸出総額の1.2%を占めた。うち、ラオス国内工場で加工を行う縫製・靴製品が4,700万ドル(2.3%減)、ケーブルハーネスや電子部品などは1,400万ドル(23.1%減)だった。コーヒー豆は93万ドル(81.0%減)で、日本の財務省統計によると、日本のコーヒー豆の輸入相手国としてラオスは14位(金額ベース)に順位を下げた。日本からの輸入は1億5,900万ドル(5.1%増)で輸入額全体の2.2%相当だった。うち、車両および部品が1億1,400万ドル(17.7%増)と対日輸入総額の71.8%を占めた。

日本からの投資額は1億1,700万ドル(前年比33.4%減)に減少した。三菱商事などが出資する600MWの風力発電所の建設(9億ドル)を4月から開始した。ソラミツは中銀と協力して、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験を開始した。ラオスの新興企業ソクサイグループ(Sokxay Group)は、三井住友海上火災保険と新日本科学とそれぞれ合弁企業を設立した。さらに、日系の海外人材紹介会社・ONODERA USER RUNは特定技能人材の育成事業を開始するなど、技能実習・特定技能人材の送り出しの動きも多く見られた。一方、サイセター総合開発区でガラス基板の製造を行っていたHOYAは需要の減退に伴い工場操業を一時的に休止した。

表5-1 ラオスの対日主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
縫製・靴製品 48,100 47,002 45.0 △ 2.3
階層レベル2の項目 31,031 30,184 28.9 △ 2.7
階層レベル2の項目衣類 17,069 16,818 16.1 △ 1.5
機械・電気機器および部品 65,569 13,788 13.2 △ 0.8
階層レベル2の項目電気製品および部品 17,820 13,699 13.1 △ 23.1
農産物および食品 12,157 9,699 9.3 △ 20.2
階層レベル2の項目コーヒー豆 4,894 929 0.9 △ 81.0
階層レベル2の項目バナナ 2,746 4,783 4.6 74.2
階層レベル2の項目黒炭・白炭 1,856 1,854 1.8 △ 0.1
化粧品・香水 11,972 10,172 9.7 △ 15.0
木製品 125 148 0.1 18.5
その他 41,316 23,576 22.6 △ 42.9
合計 131,822 104,385 100.0 △ 20.8

〔出所〕ラオス商工省輸出入統計

表5-2 ラオスの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
車両および部品 96,806 113,950 71.8 17.7
階層レベル2の項目自動車 75,378 96,860 61.0 28.5
階層レベル2の項目トラクター 7,696 2,750 1.7 △ 64.3
縫製・製靴原料 11,591 15,681 9.9 35.3
階層レベル2の項目綿製品 3,410 4,396 2.8 28.9
機械・電気機器および部品 20,993 14,731 9.3 △ 29.8
階層レベル2の項目電気製品および部品 6,763 4,292 2.7 △ 36.5
階層レベル2の項目ケーブル 2,904 2,675 1.7 △ 7.9
プラスチック製品 3,946 2,275 1.4 △ 42.4
その他 17,701 12,153 7.7 △ 31.3
合計 151,038 158,790 100.0 5.1

〔出所〕ラオス商工省輸出入統計

投資環境上の課題 
債務問題への取り組みに苦慮する中、外貨管理を強化

ラオス財務省によると、公共・公的保証債務のうち89%を対外債務が占め、外貨準備高も十分でない中、2022年初旬から始まったキープ安は2023年を通して続いた。2022年末に就任したソーンサイ・シーパンドン新首相らはその対応に苦慮し、1月には違法なレートを提示し続けているとして全国全ての両替代理店のサービス停止を命じ、6月にはラオス中央銀行(以下、中銀)に外為管理を行う外貨管理局を設置した。また、ラオス商工省は同月、食料や石油など重要品目を輸出入する業者の同省への登録を義務付けた。さらには、7月から輸出入業者に対して、中銀への登録と、ラオス政府による外貨の流れのモニタリングのために商業銀行で輸出入用口座を開設し、輸出売上金を輸出日から180日以内にラオス国内の輸出入口座へ振り込むことを義務付けた。外貨管理局によれば、2022年には、ラオスからの総輸出額の36%相当しかラオス国内に入金されておらず、特にエネルギー・鉱山セクターの輸出の売上が他国で留保されていることが問題視された。

また、7月、8月には首相命令10号、13号をそれぞれ発布し、各省に対し国内でキープの使用を厳格化し、外貨確保を命じた。ただし、外国人給与の外貨払いを認めるなど例外項目も設けられた。これらの措置により、2023年の総輸出額に占める外貨振り込みは55%を超えた。それにもかかわらず、キープ安は進行しており、2024年3月には輸出企業に対してセクター別に一定比率の外貨入金と、一部のキープへの強制兌換を義務付けた。

2023年5月にIMFが発表した債務持続可能性分析報告書によると、ラオスは全体的に「債務危機に陥っている」状態と評し、2019年報告書での「高リスク」から、評価が1段階悪化し、4段階中最低となった。キープの下落によるマクロ経済環境の悪化や、債務額の拡大、債務返済猶予額の蓄積、国営銀行の資本強化のための国債発行などにより、債務状況が悪化していると指摘した。8月に借り換え資金を調達するために、タイで実施した36億バーツのラオス国債の販売は7億8,000万バーツしか販売できず、9月には格付会社トリス・レーティング(TRIS Rating)が、格付けをBBB-からBB+へと引き下げたことでタイ証券取引所での借り換え資金調達の手段が閉ざされた。このため、ラオス国内で30億バーツの国債販売を実施した。

投資環境改善に向けた取り組みでは、2023年3月にサルムサイ副首相・外相を委員長とする貿易運輸円滑化委員会が発足した。ドライポート整備に伴うコスト上昇やサービスの質に関する課題解決が焦点となっている。国境を接する周辺国とのコネクティビティの改善(ランドリンク化)を進める内陸国ラオスは、鉄道やドライポート等のインフラ整備に注力する取り組みの一環で、6月に初めて保税地域に関する政府令(212号)を整備し、ドライポートが保税地域に指定された。また、2月にはトヨタ自動車の輸入卸を行うトヨタ・ラオスが、ラオス初となる優良事業者に対して通関手続きの簡素化などの便宜を与える認定事業者(AEO)として認められた。

ADBによると、歳入は2022年のGDP比14.8%から2023年には14.6%となった。また、歳出は公務員給与への補助金の開始により、2022年の15.0%から2023年に16.6%へ増加した。財政赤字はGDP比2.0%に拡大した。ラオス財務省は徴税の強化や効率化を目的に、徴税情報システム(TaxRIS)を基幹に付加価値税や土地税、資源税などの徴税モジュール開発を進めており、今後全国へ展開する計画である。

ADBは2024年のラオスの経済成長率について外需に支えられ4.0%と、緩やかに景気回復すると予測している。ラオス政府は経済成長率を4.5%、1人当たりGDPを1,787ドル、国民総所得(GNI)を1,668ドルと計画している。また、ASEAN議長国を担う2024年を「ラオス観光年」に指定し、460万人(34.6%増)の外国人観光客を誘致する計画で、観光、貿易、物流などのサービス業の成長が続くと見られる。引き続きクリーンエネルギー分野への投資も活発に行われる見通しである。一方で、2024年も1~6月で為替は対ドルで16.5%下落し、インフレは平均で25.3%と高い水準が続く。中でも債務返済は大きな課題であり、主要債権国との債務再編への合意に至らない限りマクロ経済の不安定さは続くと見られる。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 2.3 2.5 3.7
1人当たりGDP (米ドル) 2,496 2,022 2,004
消費者物価上昇率 (%) 3.8 23.0 31.2
失業率 (%) 21.8 18.5 n/a
貿易収支 (100万米ドル) 1,740 1,390 1,180
経常収支 (GDP比(%)) 2.4 △ 0.1 △ 0.3
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 1,951 1,576 n/a
公共・公的保証債務残高 (GDP比(%)) 89 112 108
為替レート (1米ドルにつき、ラオス・キープ、期中平均) 9,737 14,035 18,337

注:
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所:
実質GDP成長率、為替レート:アジア開発銀行
1人当たりGDP(名目)、経常収支、外貨準備高(グロス):IMF
消費者物価上昇率:ラオス計画投資省統計センター
失業率:ラオス労働社会福祉省
貿易収支:ラオス商工省
公共・公的保証債務残高:ラオス財務省