知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法の一部改正法律案(議案番号:2108481)

2021年03月03日

議案番号:2108481

提案日:2021年3月3日

提案者:イ・ドンジュ議員外9人

提案理由

現行法は、産業上利用できる発明を特許要件の一つとして規定している。なお、特許庁の例規である「特許・実用新案審査基準」によると、医療行為は、産業上利用することができる発明に該当しないことを根拠に特許の対象から除外しており、大法院の判例も医療行為に関する発明は、産業に利用することができる発明に認められないと判断し、特許の対象にできないと判示している。
ところが最近、医療分野においても産業化が進んでおり、治療や診断方法を産業上利用する可能性があるという意見が台頭しているため、それに対しては、行政規則である例規より、法律でより明確に規定することが必要である。
また、新型コロナウイルスに備えるための先制措置として、カナダ、ドイツなどの多くの国が特許発明の政府使用に向けた、強制実施制度を整備したように、韓国もそれに対して先制的整備措置が必要である。
そこで、例規に規定された医療行為は、特許発明の対象にできないことを法律に明示し、新型コロナウイルスのワクチン及び治療薬の場合のように公益的な目的による特許発明の実施に備えるために、政府による特許の強制実施規定を整備する等、現行法に表れた一部の不備点を補完・改善しようとするものである。

主要内容

  1. 環境保護の重要性を考慮し、環境に深刻な被害を与える恐れのある技術を特許対象から除外する(案第32条第2号)。
  2. 人や動物を治療するための診断や治療方法、又は外科的方法は、特許を受けることができない対象とする(案第32条第3号)。
  3. 特許発明の実施を主務部長官の裁量に基づいて実施できることを明確にし、特許発明を実施することができる政府以外の者を「国家を当事者とする法律」による契約相手方に特定し、政府の事前処分があってから、特許発明を実施することができるように解釈される余地のある文章を事前調査がなくても可能であると明確に表現する(案第106条の2第1項)。
  4. 政府及び政府以外の者に定めている特許発明の実施による補償金の支給主体を主務部長官に一元化し、排他的権限のない通常実施権者は、政府の使用のような法定実施においては、補償を受ける資格がないため、特許発明の実施による補償金の支給対象から除外する(案第106条の2第3項)。


  5. 法律第     号

    特許法の一部改正法律案

    特許法の一部を次のように改正する。
    第32条のうち、「公共の秩序又は善良な風俗に反し、又は公衆の衛生を害するおそれがある」を「次の各号のいずれかに該当する」とし、同条に各号を次のように新設する。
    1.公共の秩序又は善良の風俗に反する発明
    2.公衆の衛生を害するか、又は環境に深刻な被害を与えるおそれがある発明
    3.人や動物の手術、治療又は診断する方法に関する発明
    第106条の2第1項のうち、「政府は」を「主務部長官又は「国家を当事者とする法律」による契約相手方(以下「政府等」という。)は」に、「非商業的に実施する必要があると認める場合には、その特許発明を実施し、又は政府以外の者に実施させる」を「非商業的な目的である場合には、他人の特許発明を実施する」とし、同条第2項のうち、「政府又は第1項による政府以外の者は、他人の特許権が存在するという事実を知り、又は知ることができるときは、第1項による実施事実を特許権者、専用実施権者又は通常実施権者に」を「政府等は実施している他の特許発明を知り、又は実施しようとする他人の特許発明を知ったときは、特許権者、専用実施権者に」とし、同条第3項のうち、「政府又は第1項による政府以外の者」を「主務部長官は、政府等が」に、「実施する」を「実施した」に、「専用実施権者又は通常実施権者に」を「専用実施権者に」とする。

    附     則

    この法律は、公布後3ヶ月が経過した日から施行する。

    新旧条文対照表

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