知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 産業技術の流出防止及び保護に関する法律の一部改正法律案(議案番号:2108255)

2021年02月24日

議案番号:2108255

提案日:2021年2月24日

提案者:ソン・ギホン議員外10人

提案理由及び主要内容

現行法は、産業技術の流出防止及び保護のために、産業技術の流出及び侵害行為をすることにより、対象機関に損害を与えた者は、損害を賠償する責任を負わせるよう定めており、産業技術の侵害行為が故意的であると認められる場合、損害として認められる金額の3倍を超えない範囲内で賠償額を決めるようにしている。
しかし、2015年から2017年まで、検察が産業技術の流出事件に関連して起訴した103件のうち、実刑の宣告を受けた事例は3件(2.9%)に過ぎず、執行猶予(56件)及び罰金(36件)が全体の89%を占めており、警察がここ5年間、国家産業技術流出により検挙した人員が1,700人を上回る状況の中で、犯罪抑止力を高めるためには、損害賠償額の引き上げが必要であると指摘されている。
また、2020年12月に法務部が立法予告した「商法」における懲罰的損害賠償額は、損害額の5倍であり、最近制定された「重大災害処罰等に関する法律」での懲罰的損害賠償の限度を損害額の5倍の範囲に明示していることに反し、同様の懲罰的損害賠償にも関わらず現行法の技術侵害に対する損害賠償請求額は損害額の3倍にとどまっている。
なお、国内の中核技術を保護するために、産業技術の不正な海外流出に対しては、処罰規定を定めているが、産業スパイの増加傾向に伴って技術流出も増えているため、開発者と関連企業、そして国家レベルの損失を防ぐためには、処罰をより強化する必要があるという意見がある。
そこで産業技術の流出による侵害行為に対する損害賠償額の限度を現行の損害額の3倍から5倍に引き上げ、産業技術を海外に流出した者に対しては、個人情報を公開するようにすることで、国内の産業技術を保護し、被害を最小限にするためのものである(案第22条の2第2項及び第36条の3新設)。

法律第     号

産業技術の流出防止及び保護に関する法律の一部改正法律案

産業技術の流出防止及び保護に関する法律の一部を次のように改正する。
第22条の2第2項各号以外の部分のうち、「3倍」を「5倍」とする。
第36条の3を次のように新設する。
第36条の3(産業技術を海外に流出した者の個人情報公開等)①法院は、第36条(同じ罪を犯す目的で予備又は陰謀をした者及び未遂犯を含む)及び第36条の2の犯罪を起こした者に対して判決により氏名、住民登録番号及び該当の犯罪要旨を最大30年の範囲で情報通信網を利用して公開する命令を、該当事件の判決と同時に宣告しなければならない。
②第1項による情報の公開期間は、判決が確定した時から起算する。但し、公開命令を受けた者が実刑を宣告された場合には、その刑の全部又は一部の執行を終了するか、又は執行が免除された時から起算する。
③第1項による情報公開の方法及び手続き、公開命令の執行などに必要な事項は、大統領令で定める。

附     則

第1条(施行日)この法律は、公布後6ヶ月が経過した日から施行する。
第2条(損害賠償に関する適用例)第22条の2の改正規定は、この法律の施行後、第14条に違反することにより、損害が発生した場合から適用する。
第3条(個人情報公開に関する適用例)第36条の3の改正規定は、この法律の施行後、第36条及び第36条の2の罪で有罪判決を宣告した場合から適用する。

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