知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法の一部改正法律案(議案番号:2104191)

2020年09月24日

議案番号:2104191

提案日:2020年9月24日

提案者:イ・スジン議員外21人

提案理由

現行法は、特許侵害訴訟において特許権者を保護するために、法院が当事者の申請により、侵害の証明等に必要な資料の提出を命ずることができるようにしている。
しかし、実際の訴訟過程で資料提出命令の不服に対する制裁手段が不十分であり、侵害行為が行われている相手方の工場等に対する実効的な証拠調査の手続不備等により侵害を立証する証拠確保に限界があるという指摘が継続的に提起されている。
そこで、特許侵害及び損害額を立証するための専門家事実調査制度を導入するとともに、資料の使用を妨害した場合に対する制裁を強化し、資料提出命令について事前に侵害に関連する資料の目録を提出することができるようにする等、特許訴訟において実効性のある紛争解決の手段を設けようとするものである。

主要内容

  1. 特許権の侵害訴訟において、侵害に関する証拠を確保するために専門家による事実調査制度を導入し、調査を拒否・妨害した法人の場合、1億ウォン以下、法人の役員・従業員とその他の利害関係者の場合、5,000万ウォン以下の過料を賦課するようにする(案第128条の3及び第231条の2新設)。
  2. 法院の資料保全命令の根拠を新設し、資料を毀損又は使用できなくした場合に対する、制裁を設ける(案第128条の4新設)。
  3. 資料提出命令の実効性を確保するために、事前に侵害者が保有している資料の目録提出を命ずることができるようにする(案第132条第1項)。
  4. 資料提出申請を受けた相手に資料の提出を拒否する正当な理由について、意見を陳述する機会を与える(案第132条第2項)。
  5. 資料提出申請に関する法院の決定に対して、相手方当事者は独立して不服できないようにする(案第132条第7項新設)。
  6. 営業秘密保護を強化するために、既に秘密を取得した者に対しても秘密保持命令ができるように、例外規定を削除する(案第224条の3第1項)。
  7. 訴訟代理人が依頼人を排除して、相手方の営業秘密を閲覧した場合、依頼人にも秘密を保持するようにする(案第224条の3第6項新設)。
  8. 専門家が秘密保持義務を違反した場合、1年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処するようにする(案第229条の2第3項新設)。
  9. 参考事項

    この法律案は、イ・スジン議員が代表発議した「実用新案法の一部改正法律案」(議案番号第4190号)の議決を前提としているため、同法律案が議決されないか、修正議決される場合には、それに合わせて調整しなければならない。

    法律第     号

    特許法の一部改正法律案

    特許法の一部を次のように改正する。
    第128条の3及び第128条の4をそれぞれ次のように新設する。
    第128条の3(専門家による事実調査)①法院は、特許権又は専用実施権の侵害訴訟において、職権又は当事者の申請により、次の各号の事項を考慮して調査する証拠に関連する分野の専門家を指定し、その専門家にとって相手方当事者の事務室、工場及びその他の場所に出入りして調査を受ける当事者等に質問するか、資料の閲覧・複写、装置の作動・計測・実験等の必要な調査ができるように決定することができる。
    1. 相手方当事者が特許権又は専用実施権を侵害した可能性があるかどうか
    2. 侵害の証明や侵害による損害額の算定に必要かどうか
    3. 調査の必要性と比較して、相手方当事者の負担が相当であるかどうか
    4. ②法院は、第1項の専門家に、次の各号のいずれかに該当する者のうち、1人以上を指定することができる。
      1. 「法院組織法」第54条の2・第54条の3に基づく、技術審理官や検査官
      2. 「民事訴訟法」第164条の2に基づく専門審理委員
      3. 「弁護士法」第4条に基づく弁護士の資格を持つ者
      4. 「弁理士法」第3条に基づく弁理士の資格を持つ者
      5. その他、大法院規則で定める者
      6. ③第1項により指定された専門家は、法院が指定した期日内に調査結果報告書を法院に提出しなければならない。この場合、調査内容を秘密として保持しなければならない。
        ④法院は、調査を受けた者に第3項の調査結果報告書を優先的に閲覧させなければならない。この場合、調査を受けた者が、営業秘密等が調査結果報告書に含まれていると主張する場合には、第132条第1項から第3項までの規定を準用する。
        ⑤法院は、第4項による主張が妥当であると認められれば、侵害の立証や損害額の算定に関連していない営業秘密等に関しては、調査結果報告書から削除して提出するよう、調査した専門家に命じなければならない。
        ⑥特許権者又は専用実施権者は、第3項から第5項までの手続きを経て提出された調査結果報告書を閲覧し、証拠として申請することができる。
        ⑦第1項の規定により調査を受ける者は、専門家が要請する資料を提供する等、調査に協力しなければならない。
        ⑧第7項による調査を拒否・妨害した場合、法院は資料の記載により証明しようとする事実に関する当事者の主張を真実であると認めることができる。
        ⑨第1項の場合、法院は申請した当事者に適切な担保を提供するように命ずることができる。この場合、本項の担保に関しては、「民事訴訟法」第122条、第123条、第125条及び第126条を準用する。
        ⑩その他、第1項による調査の範囲及び手続等に関する必要な事項は、大法院規則で定める。
        ⑪第1項の規定による調査は、「民事訴訟法」における証拠保全の手続にも活用することができる。
        第128条の4(資料保全命令と効果)①法院は、特許権又は専用実施権の侵害訴訟が提起される可能性が高いか、提起された場合、職権又は当事者の申請により相手方当事者に侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を毀損するか、使用できなくしないよう、送達の方法で資料保全の通知をしなければならない。
        ②当事者が次の各号の事由を疎明して資料保全を申請した場合に法院は資料保全の通知を受けた相手方当事者が侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を毀損するか、使用できないよう資料保全を命ずることができる。
        1. 資料保全命令の対象になる資料を特定するのに充分な事実
        2. 資料保全を命じなければ、申請者に回復できない損害が発生する恐れがあるという事実
        3. ③第2項による資料保全の申請には、次の各号の事項を明らかにしなければならない。
          1. 相手方の表示
          2. 証明する事実
          3. 保全しようとする資料
          4. 資料保全の事由
          5. ④相手方当事者が当事者の使用を妨害する目的で、該当する侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を毀損するか、それを使用できなくした場合、法院は資料の記載により証明しようとする事実に関する当事者の主張を真実であると認めることができる。
            ⑤第1項の管轄は、「民事訴訟法」第376条を準用する。
            第132条第1項の本文のうち、「資料」を「資料(その資料の目録を含む)」にし、同条第2項前段のうち、「資料の所持者が第 1 項の規定による提出を」を「第1項の規定による資料の提出申請がある場合、資料の所持者に意見を陳述させることができ、その資料の所持者が提出を」に、「命ずることができる」を「命ずるか、必要な場合、職権又は当事者の申請に第128条の3による専門家による事実調査を命ずることができる」とし、同条に第6項及び第7項をそれぞれ次のように新設する。
            ⑥第1項による申請と関連して、この法律で規定していない内容に関しては、「民事訴訟法」第346条を準用する。
            ⑦第1項について相手方当事者は、独立して不服をすることができない。
            第224条の3第1項の各号外の部分の但し書きを削除し、同条第6項を次のように新設する。
            ⑥第1項による秘密保持命令を受けた訴訟代理人は、彼が代理する当事者が第132条第3項の後段により閲覧をすることができる者から、除外された場合、その当事者にも秘密を保持しなければならない。
            第225条の2を次のように新設する。
            第225条の2(資料保全命令の違反罪)国内外で故意に第128条の4第2項を違反した者は、5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金に処する。
            第229条の2に第3項を次のように新設する。
            ③第128条の3第3項の後段を違反して秘密を漏洩した者は、1年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。
            第231条の2を次のように新設する。
            第231条の2(過料)法院は、第128条の3第7項による調査を拒否・妨害した法人の場合は、1億ウォン以下、法人の役員・従業員とその他の利害関係者の場合、5千万ウォン以下の過料を賦課する。

            附     則

            第1条(施行日)この法律は、公布後6ヶ月が経過した日から施行する。
            第2条(特許権又は専用実施権の侵害訴訟に関する適用例)第128条の3、第128条の4、第132条及び第224条の3の改正規定は、この法施行後最初に提起される訴訟から適用する。

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