知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 商標法一部改正法律案

2019年10月25日

議案番号:23010

提案日:2019年10月25日

提案者:共に民主党 朴範界(パク・ボムゲ)議員外9人

提案理由

知的財産権は建物などの不動産といった有体物とは異なり、形態のない無体財産権であるため、権利を侵害された時、その価値を評価し適正な損害賠償を受けるのが困難である。例えば、特定の建物に対する価値は公示地価、実際の取引価格など様々な評価指標などにより、侵害による損害の算定が容易である反面、商標権の場合、その商標が持つ経済的価値は、商標権者の信用に比例するため、商標権を侵害された場合、その損傷された価値に対する評価が難しい。

商標権者が相当な投資と努力で築いた信頼を強く保護するのは、商標権者だけの利益にとどまらず、その商標を信頼して製品を購買した需要者の利益にもなるためである。このように、商標は製品の出所を表す機能、広告宣伝の機能および製品の品質保証の機能も持っている。特に最近には消費に対する消費者の基準が高くなることで、品質保証機能が注目されている。

そのため、需要者の製品選択権などの利益を保証するためには、商標権者の商標と同一であるか、類似する商標を使用して消費者を誤解させる行為を根絶する必要がある。

そこで、本改正法が施行された以降に侵害が発生した場合、その登録された商標と同一・類似した商標を故意に侵害した者に対し、その侵害による損害額として認められた金額の3倍以内で、その賠償額を課すことができるようにし、商標権者の効果的な権利救済を図ろうとするものである。

また、2011年に導入された法定損害賠償の最高限度である5,000万ウォンを、国内商品取引市場の拡大、物価上昇要因などを考慮して、本改正法が施行された以降に商標権を侵害した者に対し、損害額として認められる最大額を1億ウォンに引き上げ、故意的な場合には最大3億ウォン以内で賠償することができるように制度を整備する。

一方、現在の損害額の算定方式の一つである通常的に受けることができる金額が、市場の基準より低く算定され、適正な損害額の算定ができないという指摘があり、これを合理的に受けることができる金額を基準として変更し、市場の現実に沿う損害額を算定することができるように改善するためである。

主要内容

イ.商標権の侵害に対する損害額の算定方式の中、使用料の算定基準を「通常的に受けることができる金額」から「合理的に受けることができる金額」に変更する。(案第110条第4項)。

ロ.故意に商標権者又は専用使用権者の登録商標と同一・類似する商標を、その指定商品と同一・類似する商品に使用し、商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その損害として認められた金額の3倍以内で、賠償額を法院が定めることができるようにする。(案第110条第7項及び第8項新設)。

ハ.法定損害賠償額の最高限度を5,000万ウォンから1億ウォン(故意に侵害した場合には3億ウォン)に引き上げる(案第111条)。

商標法一部改正法律案

商標法の一部を次のとおり改正する。

第110条の第4項中、「通常」を「合理的に」とし、同条に第7項及び第8項をそれぞれ次のとおり新設する。

(7)法院は、故意に商標権者又は専用使用権者の登録商標と同一・類似する商標をその指定商品と同一・類似する商品に使用して、商標権又は専用使用権を侵害した者に対して

第109条にもかかわらず、第1項から第6項までの規定により、損害と認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができる。

(8)第7項による賠償額を判断する時には、次の各号の事項を考慮しなければならない。
  1. 侵害行為をした者の優越的地位の可否
  2. 故意又は損害発生の恐れを認識した程度
  3. 侵害行為により商標権者及び専用使用権者が受けた被害規模
  4. 侵害行為により侵害した者が得た経済的利益
  5. 侵害行為の期間・回数等
  6. 侵害行為による罰金
  7. 侵害行為をした者の財産状態
  8. 侵害行為をした者の被害救済努力の程度

第111条第1項の全段中、「5千万ウォン」を「1億ウォン(故意に侵害した場合には3億ウォン)」とする。

附則

第1条(施行日)この法は公布した日から施行する。

第2条(商標権又は専用使用権の侵害訴訟に関する適用例)第110条第7項及び第8項、第111条の改正規定は、この法の施行後に発生した違反行為から適用する。

現行 改正(案)
第110条(損害額の推定等) (1)~(3)(省略) 第110条(損害額の推定等) (1)~(3)(現行と同様)
(4)第109条による損害賠償を請求する場合、その登録商標の使用に対して通常受けることができる金額に相当する金額を商標権者又は専用使用権者が受けた損害額としてその損害賠償を請求することができる。 (4)第109条による損害賠償を請求する場合、その登録商標の使用に対して合理的に受けることができる金額に相当する金額を商標権者又は専用使用権者が受けた損害額としてその損害賠償を請求することができる。
(5)~(6)(省略) (5)~(6)(現行と同様)
新設 (7)法院は、故意に商標権者又は専用使用権者の登録商標と同一・類似する商標をその指定商品と同一・類似する商品に使用して、商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、第109条にもかかわらず、第1項から第6項までの規定により、損害と認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができる。
新設 (8)第7項による賠償額を判断する時には、次の各号の事項を考慮しなければならない。
1.侵害行為をした者の優越的地位の可否
2.故意又は損害発生の恐れを認識した程度
3.侵害行為により商標権者及び専用使用権者が受けた被害規模
4.侵害行為により侵害した者が得た経済的利益
5.侵害行為の期間・回数等
6.侵害行為による罰金
7.侵害行為をした者の財産状態
8.侵害行為をした者の被害救済努力の程度
第111条(法廷損害賠償の請求) (1)商標権者又は専用使用権者は、自己が使用している登録商標と同じか同一性がある商標を、その指定商品と同じか同一性がある商品に使用して自己の商標権又は専用使用権を故意若しくは過失で侵害した者に対して、第109条による損害賠償を請求する代わりに5千万ウォン以下の範囲で相当な金額を損害額として賠償を請求することができる。この場合、法院は弁論全体の趣旨と証拠調査の結果を考慮して相当な損害額を認めることができる。 第111条(法廷損害賠償の請求) (1)商標権者又は専用使用権者は、自己が使用している登録商標と同じか同一性がある商標を、その指定商品と同じか同一性がある商品に使用して自己の商標権又は専用使用権を故意若しくは過失で侵害した者に対して、第109条による損害賠償を請求する代わりに1億ウォン(故意に侵害した場合には3億ウォン)以下の範囲で相当な金額を損害額として賠償を請求することができる。この場合、法院は弁論全体の趣旨と証拠調査の結果を考慮して相当な損害額を認めることができる。
(2)(省略) (2)(現行と同様)

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