知的財産情報(知財関連法律改正の動き) デザイン保護法一部改正法律案

2019年10月25日

議案番号:23012

提案日:2019年10月25日

提案者:共に民主党 朴範界(パク・ボムゲ)議員外9人

提案理由

知的財産権は建物などの不動産といった有体物とは異なり、形態のない無体財産権であるため、権利を侵害された時、その価値を評価し適正な損害賠償を受けるのが困難である。例えば、特定の建物に対する価値は公示地価、実際の取引価格など様々な評価指標などにより、侵害による損害の算定が容易である反面、デザイン権の場合、そのデザインが持つ経済的価値はデザイン権者の創作的努力と消費者の評価により決定されるため、その権利を侵害された場合に、その損傷された価値に対する評価が難しい。

デザイン権者が相当な投資と努力を通じて創作したデザインを保護するのは、創作の奨励を通じて消費者の利用の便宜と産業の発展を図ろうとすることに目的がある。このように、他人が創作したデザインを故意に侵害し利益を得ようとする行為は、創作者の創作意志を挫くもので、消費者の便宜性を低下させるのはもちろん、産業発展にも逆行する行為であり、これを厳しく根絶する必要がある。

そこで、本改正法が施行された以降に侵害が発生した場合、他人により登録されたデザインを故意に侵害した者に対し、その侵害による損害額として認められた金額の3倍以内で、賠償額を課すことができるようにし、デザイン権者の効果的な権利救済を図る一方、現在の損害額の算定方式の一つである通常的に受けることができる金額は、市場の基準より低く算定され、適正な損害額の算定ができないという指摘があり、これを合理的に受けることができる金額を基準として変更し、市場の現実に沿う損害額を算定することができるように改善するためである。

主要内容

イ.デザイン権の侵害に対する損害額の算定方式の中、使用料の算定基準を「通常的に受けることができる金額」から「合理的に受けることができる金額」に変更する。(案第53条第2項、第115条第4項)。

ロ.故意にデザイン権者又は専用実施権者の権利を侵害した者に対し、損害として認められた金額の3倍以内で賠償額を定めるようにする。(案第115条第7項及び第8項新設)。

デザイン保護法一部改正法律案

デザイン保護法の一部を次のとおり改正する。

第53条第2項中、「通常的に」を「合理的に」とする。

第115条第4項中、「通常的に」を「合理的に」とし、同条第7項及び第8項をそれぞれ次のとおり新設する。

(7)法院は、他人のデザイン権又は専用実施権を侵害した行為が故意なものと認定された場合には、第1項から第6項までの規定により、損害と認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができる。

(8)第7項による賠償額を判断する時には、次の各号の事項を考慮しなければならない。
  1. 侵害行為をした者の優越的地位の可否
  2. 故意又は損害発生の恐れを認識した程度
  3. 侵害行為によりデザイン権者又は専用実施権者が受けた被害規模
  4. 侵害行為により侵害した者が得た経済的利益
  5. 侵害行為の期間・回数等
  6. 侵害行為による罰金
  7. 侵害行為をした者の財産状態
  8. 侵害行為をした者の被害救済努力の程度

附則

第1条(施行日)この法は公布した日から施行する。

第2条(デザイン権又は専用実施権の侵害訴訟に関する適用例)第115条第7項及び第8項の改正規定は、この法の施行後に発生した違反行為から適用する。

新旧条文対照表

現行 改正(案)
第53条(出願公開の効果) (1)(省略) 第53条(出願公開の効果) (1)(現行と同様)
(2)デザイン登録出願人は、第1項によって警告を受け、または第52条によって出願公開されたデザインであることを知ってそのデザイン登録出願されたデザイン又はこれと類似したデザインを業として実施した者にその警告を受け、または第52 条によって出願公開されたデザインであることを知った時からデザイン権の設定登録時までの期間の間その登録デザイン又はこれと類似したデザインの実施に対して通常的に受けることができる金額に相当する補償金の支給を請求することができる。 (2)デザイン登録出願人は、第1項によって警告を受け、または第52条によって出願公開されたデザインであることを知ってそのデザイン登録出願されたデザイン又はこれと類似したデザインを業として実施した者にその警告を受け、または第52 条によって出願公開されたデザインであることを知った時からデザイン権の設定登録時までの期間の間その登録デザイン又はこれと類似したデザインの実施に対して合理的に受けることができる金額に相当する補償金の支給を請求することができる。
(3)~(6)(省略) (3)~(6)(現行と同様)
第115条(損害額の推定等) (1)~(3)(省略) 第115条(損害額の推定等) (1)~(3)(現行と同様)
(4)デザイン権者又は専用実施権者が故意若しくは過失で自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求する場合、その登録デザインの実施に対して通常的に受けることができる金額をデザイン権者又は専用実施権者が負った損害額にして損害賠償を請求することができる。 (4)デザイン権者又は専用実施権者が故意若しくは過失で自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求する場合、その登録デザインの実施に対して合理的に受けることができる金額をデザイン権者又は専用実施権者が負った損害額にして損害賠償を請求することができる。
(5)~(6)(省略) (5)~(6)(現行と同様)
新設 (7)法院は他人のデザイン権又は専用実施権を侵害した行為が故意なものと認定された場合には、第1項から第6項までの規定により、損害と認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができる。
新設 (8)第7項による賠償額を判断する時には、次の各号の事項を考慮しなければならない。
1.侵害行為をした者の優越的地位の可否
2.故意又は損害発生の恐れを認識した程度
3.侵害行為によりデザイン権者又は専用実施権者が受けた被害規模
4.侵害行為により侵害した者が得た経済的利益
5.侵害行為の期間・回数等
6.侵害行為による罰金
7.侵害行為をした者の財産状態
8.侵害行為をした者の被害救済努力の程度

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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