知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法一部改正法律案(代案)

2018年12月07日

議案番号:2017085

提案日:2018年12月

提案者:産業通商資源中小ベンチャー企業委員長

代案の提案理由

特許審判で国選代理人を選任する根拠を追加するとともに、特許権又は専用実施権の侵害行為に対して損害額の3倍の範囲内で懲罰的損害賠償制度を導入し、実施料の賠償規定を改正し、侵害行為に対して具体的な行為態様の提示義務を新設するためである。

代案の主要内容

イ. 国選代理人を選任する根拠の追加など((案)第139条の2)

特許審判で国選代理人を選任する根拠を追加し、国選代理人が担当する事件の手数料を減免する。

ロ. 懲罰的損害賠償制度の導入((案)第128条第8項および第9項)

特許権又は専用実施権の侵害行為が故意であると認められる場合は、損害として認められた金額の3倍を越えない範囲内で賠償額を認められるようにする。ただし、侵害行為が故意であるかどうかを判断する際は侵害者の優越的地位の有無、故意の程度、侵害行為の期間および回数、侵害行為によって侵害者が得た経済的利益の程度などを考慮し、特許権又は専用実施権の侵害による被害救済を強化する。

ハ. 実施料の賠償規定の改正((案)第65条第2項など)

特許出願された発明や特許権などの侵害者に請求できる実施料の賠償金額を「通常」受けられる金額から「合理的に」受けられる金額へと変更する。

ニ. 具体的な行為態様の提示義務の新設((案)第126条の2)

特許権者又は専用実施権者が主張する侵害行為の具体的な行為態様を否認する当事者が自ら具体的な行為態様を提示するようにする。

特許法一部改正法律案

特許法一部を次のとおり改正する。

第65条第2項中「通常」を「合理的に」にする。

第126条の2を次のとおり新設する。

第126条の2(具体的な行為態様の提示義務)

①特許権又は専用実施権の侵害訴訟で特許権者又は専用実施権者が主張する侵害行為の具体的な行為態様を否認する当事者は自ら具体的な行為態様を提示しなければならない。

②裁判所は当事者が第1項にかかわらず、自ら具体的な行為態様を提示できない正当な理由があると主張する場合は、その主張の当否を判断するために、その当事者に資料の提出を命じることができる。ただし、その資料の所持者がその資料の提出を断る正当な理由があればその限りではない。

③第2項に基づく資料提出命令に関しては第132条第2項および第3項を準用する。この場合、第132条第3項中「侵害の証明、又は損害額の算定に必ず必要な時」を「具体的な行為態様を提示できない正当な理由の有無の判断に必ず必要な時」にする。

④当事者が正当な理由なく自ら具体的な行為態様を提示しない場合、裁判所は特許権者又は専用実施権者が主張する侵害行為の具体的な行為態様を真実なものと認めることができる。

第128条第5項中「通常」を「合理的に」にし、同条第8項および第9項をそれぞれ次のとおり新設する。

⑧裁判所は他人の特許権又は専用実施権を侵害した行為が故意であると認められる場合は、第1項にかかわらず、第2項から第7項までの規定に基づき、損害として認められた金額の3倍を越えない範囲内で賠償額を定めることができる。

⑨第8項に基づく賠償額を判断する時は、次の各号の事項を考慮しなければならない。

  1. 侵害行為をした者の優越的地位の有無
  2. 故意、又は損害発生の憂慮を認識した程度
  3. 侵害行為により、特許権者および専用実施権者が被った被害額
  4. 侵害行為により、侵害者が得た経済的利益
  5. 侵害行為の期間・回数など
  6. 侵害行為による罰金
  7. 侵害行為をした者の財産状態
  8. 侵害行為をした者の被害救済努力の程度

第139条の2を次のとおり新設する。

第139条の2(国選代理人)①特許審判院長は産業通商資源部令で定める要件を満たす審判当事者の申請により、代理人(以下「国選代理人」という)を選任することができる。ただし、審判請求が、理由ないということが明白であるか、権利の乱用だと認められる場合はその限りではない。

②国選代理人に選任された当事者に対し、審判手続きに関わる手数料を減免することができる。

③国選代理人の申請手続きおよび手数料減免など、国選代理人の運営に必要な事項は産業通商資源部令で定める。

第207条第4項 本文中「通常」を「合理的に」にする。

附則

第1条(施行日)この法は公布後6カ月が経過した日から施行する。

第2条(他の法律の改正)実用新案法一部を次のとおり改正する。

第33条中「第139条、第140条」を「第139条、第139条の2、第140条」にする。

第3条(具体的な行為態様の提示義務に関する適用例)第126条の2の改正規定はこの法の施行後、初めて請求される特許権および専用実施権の侵害訴訟から適用する。

第4条(損害賠償請求権に関する適用例)第128条第8項および第9項の改正規定はこの法の施行後、初めて違反行為が発生した場合から適用する。

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