知的財産ニュース 5月1日から「商標共存同意制度(コンセント制度)」が施行されます

2024年5月1日
出所: 韓国特許庁

先行登録商標権者の同意があれば、類似する商標であっても登録できる

事例1)飲食店の開業を準備するA氏は、お店の名前を商標登録できなかった。特許庁にすでに類似の商標をB氏が登録したためだ。B氏は、A氏とはお店のメニューも地域も違うので商標を混同する恐れはないと判断し、商標を使用することを認めたが、制度上の問題で、A氏はお店の名前を変え、製作しておいた看板や食器もすべて廃棄せざるを得なかった。
事例2)アパレルネットショップを運営しているC氏は、最近類似の名前の美容グッズショップがあることがわかった。美容グッズショップは、お店の名前を商標登録していたため、C氏が商標権を侵害していることになる。ところが、C氏はお店の名前を変えると、顧客離れにつながる恐れがあるので、困っている状況である。

今年5月1日から同一または類似する商標がすでに登録されていても先行登録商標権者の同意があれば、後行の商標の併存登録を認める。

韓国特許庁は、商標法改正※により、上記のような商標共存同意(コンセント)制度が施行されると発表した。これにより、同一または類似する先行登録商標があった場合、使用を希望していた商標の登録を受けることができなかった小規模事業者の悩みが解消できると思われる。
※商標法の一部改正(法律第19809号、2023年10月31日改正、2024年5月1日施行)

先行登録商標権者の同意があれば、類似する商標であっても登録可能

商標共存同意制度とは、先行登録商標権者および先行出願人が、標章※および指定商品※※が同一または類似する後行出願の商標の登録に同意する場合※※※、当該の商標の登録を認める制度である。
※標章:記号、文字、図形、立体形状あるいは色調、またはこれらの組み合わせ
※※指定商品:出願人が商標権を取得したいものを指定する商品の名称
※※※ただし、商標の指定商品がすべて同一の場合を除く

これまでは、同一または類似する商標がすでに登録されているか、先行出願した商標が存在する場合には、後行出願の商標に対し登録が拒絶されたため、商標の譲渡・移転などにより当該の商標を使用するしかなかった。しかし、商標共存同意制度の施行により、上記のような出願人の不便が解消され、商標権をめぐる紛争も事前に防ぐことができると思われる。

とりわけ、中小企業や小規模事業者にとっては、安心できる商標使用と企業経営の効果が期待される。最近、拒絶査定が確定した商標の約4割以上の拒絶理由が、同一または類似する先行登録商標があったため※であり、このケースに該当する出願人の約8割は中小企業や小規模事業者であった。
※全体の拒絶査定件数(韓国特許庁による2022年の商標審査基準):48,733件、先行登録商標による拒絶査定件数:19,651件

さらに、需要者への保護のために、併存する商標のうち、いずれかが不正な目的で使用されて需要者が誤認・混同する恐れがある場合には、当該商標の登録を取り消すことができる規則を定めている。

商標登録料の返還基準の拡大など、出願人の利便性を高める規定を策定

存続期間満了日の前に更新登録料を納付したが、新しい存続期間の開始前に商標権が消滅・放棄された場合には、納付済みの登録料を返還する規定も施行される。

ほかにも、国際商標出願の分割出願および部分的代替の認定、変更出願時の優先権主張の認定、間違った職権訂正の無効認定などを施行する内容が盛り込まれ、さまざまな側面で出願人の権益保護や利便性向上を実現できると思われる。

特許庁の商標デザイン審査局長は「商標共存同意制度が安定的に定着されるよう、出願人の意見などを積極的に反映して効率性の高い制度を作っていく」とし、「今後も特許庁は商標出願・登録に関わる行政サービスの質を高めるために、引き続き制度を改善していく」と述べた。

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