知的財産ニュース 2023年IP金融規模が10兆ウォン目前…企業の資金調達に大きく貢献

2024年3月25日
出所: 韓国特許庁

2023年IP金融規模の分析結果を発表、ここ3年間規模額が年平均26.5%増加


(知的財産(IP)担保融資の事例)二次電池や自動化装備を製造するA社は、技術開発の資金が必要だったため、二次電池に関わる特許7件について価値評価を実施し、100億ウォンの融資を受けて事業運営資金を確保し、前年比2倍以上の売上高と営業利益を達成した。さらに、輸出額も昨年から大きく増えた1億9,000ドルとなり、「第60回貿易の日」で「1億ドル輸出の塔」を受賞した。
(知的財産(IP)投資の事例)大規模言語モデル(LLM)と生成AIの実用化に特化した超高速、超低電力のプロセッサー(NPU)を開発するB社は、人材確保と研究開発が必要な時期に、投資会社からNPUの開発能力や特許について価値評価を受け、26億ウォンの投資金を誘致し、2024年はCES2024でイノベーション賞を受賞するなど成果を上げている。
(知的財産(IP)保証の事例)通戦通信機の技術力を持つC社は、原材料の購入資金を確保するために、保証機関から同社が保有する特許1件についてIP保証書の発行を受ける代わりに銀行から事業運営資金3億ウォンの融資を受けた。これで納期まで1年以上かかる原材料を確保し、今後も安定的な売り上げを確保することが期待される。

2023年知的財産(IP)金融※規模が10兆ウォンを目前にし、IP金融が企業の資金調達に貢献していることがわかった。
※企業が保有するIPを基に担保融資、投資、保証などをより資金を調達すること
※※2023年末時点に市中に供給されているIP金融の規模額

韓国特許庁がIP金融規模を調べたところ、2023年IP金融規模は9兆6,100億ウォンとなり、2023年に新しく供給された金額は3兆2,406億ウォンであると発表した。

2023年IP金融規模9兆6,100億ウォン…ここ3年間年平均26.5%増加

2023年のIP金融規模額(9兆6,100億ウォン)はここ3年間(2021年~2023年)年平均26.5%増加※し、IP金融市場は毎年成長を続けている。このうちIP担保融資が2兆③,226億ウォン、IP投資は3兆1,943億ウォン、IP保証は4兆931億ウォンとなっている。
※IP金融規模額の推移(2021年)6兆90億ウォン→(2022年)7兆7,835億ウォン→(2023年)9兆6,100億ウォン

IP担保融資 銀行が企業に知的財産(IP)を担保に融資する
IP投資 投資機関が優れたIPを保有する企業に対し投資する
IP保証 保証期間は企業が保有するIPについて保証書を発行、銀行は融資を実行する

2023年IP金融の新規供給額は3兆2,406億ウォン…IP投資、IP保証の増加傾向が続く

2023年に新しく供給されたIP金融規模額は計3兆2,406億ウォンと、このうち①IP担保融資は9,119億ウォン、②IP投資は1兆3,365億ウォン、③IP保証は9,922億ウォンとなっている。

①IP担保融資(9,119億ウォン)は前年(9,156億ウォン)に比べて小幅減少したが、利上げが続く中で融資を組むことを控える傾向がみられたためである。しかし、信用格付けが高くない非優良企業(BB+以下)に対するIP担保融資の割合は全体の84.16%を占め※(2022年82.07%)、IP担保融資が強い技術力を持つ低信用企業にとっては重要な資金供給の役割をしていることがわかった。
※2023年IP担保融資の企業信用格付け別の割合:非優良(BB+以下)84.16%、優良(BBB- 以上)15.83%
 2022年IP担保融資の企業信用格付け別の割合:非優良(BB+以下)82.07%、優良(BBB- 以上)17.93%

②IP投資(1兆3,365億ウォン)は2022年に初めて1兆ウォンを突破(1兆2,968億ウォン)して以降、2023年には前年比3.1%増え、増加傾向が続いている。政府が母胎ファンドを使ってIP投資ファンドの基盤を構築し、キャピタルなど民間投資機関と緊密に協力して投資する企業を拡大することでIP投資が企業成長の呼び水になると期待される。
※韓国母胎ファンド:韓国政府が中小・ベンチャー企業の育成を目的に直接企業に投資せず、予めファンドを作っておいて、ベンチャーキャピタルに出資する方法でベンチャー企業に対し支援を行う方法

③IP保証(9,922億ウォン)は前年(8,781億ウォン)に比べて13%増え、IP担保融資を受けることが難しい環境にあるスタートアップなどにとって有効な資金調達の手法として機能していることがわかった。

特許庁の産業財産政策協調は「企業は知財に潜んでいる未来価値をIP金融を通じて現実化していけると思う」とし、「今後も特許庁は強い知財を持つ企業がIP金融制度を活用して資金を円滑に調達し、持続的な成長を実現できるよう手厚くサポートしていく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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