知的財産ニュース 韓国特許庁、韓国バイオ企業を対象に行った「遺伝資源出所開示」に関するアンケート調査結果を公開

2024年3月12日
出所: 韓国特許庁

韓国バイオ企業10社のうち9社が遺伝資源出所開示制度の導入に負担を感じる

韓国特許庁はスイスジュネーブで開かれる(2024年5月)遺伝資源※出所開示に関する議論※※を控えて韓国バイオ企業を対象に「遺伝資源出所開示に関するアンケート調査」を行い(2024年1月~2月)、3月12日に調査結果を公開した。
※遺伝資源:植物、微生物、動物など遺伝の機能的な単位を有する生物のうち、現在あるいは潜在的に利用価値を持つもの
※※世界知的所有権機関(WIPO)が開催する「遺伝資源に関する知的財産、遺伝資源及び伝統知識」に関する国際的な法的文書の締結に向けた外交会議

遺伝資源出所開示制度
(遺伝資源出所開示)遺伝資源を利用した発明を特許出願した場合、当該遺伝資源の遺伝資源の原産地情報を開示すること
(制裁事項)出願人が遺伝資源出所開示に従わなかった場合、当該の特許を取消または無効にする制裁案を議論中
(遺伝資源出所開示の効果)開発途上国の遺伝資源を利用して高付加価値製品を生産する企業は、その製品で得た収益を遺伝資源の提供者と共有する

※例:中国の遺伝資源の八角という植物を利用して新型インフルエンザの治療薬のタミフルを開発したスイスのロシュ社はタミフルの販売による収益の一部を八角の提供者と共有しなければならない

韓国バイオ企業10社のうち9社が遺伝資源出所開示に負担を感じると答え…原産地の情報把握が難しい

アンケートに答えた韓国バイオ企業10社のうち9社は遺伝資源出所開示制度に負担を感じていることがわかった。

これは、国内企業が仲介業者を介して間接的に遺伝資源を調達した中で仲介業者が出所に関する情報を提供しなかったか、複数の国から調達して原産地情報を把握することが難しいためである。多くの企業は、遺伝資源出所開示制度の制裁水準により、ロイヤルティのほかにも研究開発や特許出願の減少、特許権の設定登録の遅延などマイナス影響を与えかねないと懸念を示している。

遺伝資源出所開示が義務化された際には、韓国企業のロイヤルティ支払いの負担増…年間約900億ウォン推計

調査結果によると、遺伝資源出所開示が義務化された際には、韓国企業が遺伝資源の利用により外国に支払うロイヤルティ金額は年間約900億ウォンに達すると推計される。5月スイスで決まる「出所開示の不遵守による特許無効、特許取消のような制裁水準」により、ロイヤルティ金額は数百億ウォンも増えると見込まれる。

特許庁、業界の意見をヒアリングする懇談会の開催など韓国企業の対応策を考える

これまで特許庁は、遺伝子出所開示に関する動向を共有し、関連業界・機関から意見をヒアリングするため懇談会を開く(2023年8月、12月)など、韓国企業の対応策を模索するために努力してきた。

特許庁の産業財産保護協力局長は「遺伝資源出所開示が義務化された際に韓国産業に与える影響や今回のアンケート結果などを見極め、遺伝資源に関する条約に韓国企業の利益が十分に反映されるよう努力する」と述べた。

アンケート調査結果の詳細については韓国知識財産研究院ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。今回のアンケートは、韓国バイオ企業約1,700社を対象に行われ、回答率20.1%、信頼度95%にサンプリング誤差±5.2%である。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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