知的財産ニュース 特許審判院の専担審判部が二次電池や次世代通信分野まで機能を拡大

2024年3月5日
出所: 韓国特許庁

高品質の審判行政サービスを提供することで企業の特許紛争への負担を軽減

先端技術分野を支援する専担審判部が半導体、モビリティ分野に次ぎ2024年には二次電池、次世代通信分野まで機能を拡大する。国家戦略技術分野の特許紛争で迅速かつ正確な審判を行うことで、企業の競争力強化、経済安全保障に貢献できると期待される。

韓国特許庁の特許審判院は5日、企業からの要望を積極的に反映してさらに早く、公正な審判行政サービスを提供すると発表した。

①審判部の運営体制をユーザー中心に改善し、②迅速な審理手続きを提供し、③社会・経済的弱者を支援するなど、3つの分野で審判行政サービスの力量を高める方針だ。

①審判部の運営体制改編:二次電子・次世代通信分野までを先端技術専担審判部が担当

専担審判部の業務範囲を半導体、モビリティ(2023年10月)分野から今年は二次電池(2024年3月)と次世代通信(2024年5月)分野まで拡大するなど、国家戦略技術分野を中心に機能を拡大していく。

国レベルで技術確保が至急だと思われる審判事件については審査・審判の経験が豊富な審判官が専担審判部に配置され、一貫性や正確性を持って処理しており、昨年始めた半導体、モビリティ分野を皮切りに、二次電池や次世代通信分野まで機能を拡大する。

分野別に審判件数に差があるため、処理期間にばらつきが生じる問題を解消するために、審判部の人員を処理件数が多い分野に優先して配置(2024年1月)する。これにより、バイオ技術分野や商標分野などで処理期間が長引く問題が解消されるとみられる。

②審理手続きの改善:特許権の設定登録が遅れる可能性がある件を選び、迅速処理

審査処理段階で長期間が要された後、審判が請求された事件については首席審判長が迅速に対応(2024年1月)する。特定期間※が経過した後、特許が登録されたら、特許権の存続期間を延長する必要があるが、延長の対象になる件数が増えているため、迅速な審判を通して延長期間を短縮する目的である。
※(特許法第92条の2)特許出願日から4年と、審査請求日から3年のうちいずれか遅い日より遅れて設定登録される場合、遅れた期間の分を合わせて特許権存続期間を延長

これは、延長対象となる件の6割を、先端分野の源泉技術を多く保有する外国系企業が占めているため、期間を短縮化しないと韓国企業が払うロイヤルティの支給額増加、市場進入の遅れなどが生じ、知財活動にマイナス影響になり得る点を踏まえた措置である。

無効および権利範囲確認審判などの事件については不要な攻防を回避できるよう、集中審理手続き制を積極的に活用(2024年3月)する。迅速な審理手続きにより企業の紛争対応への負担が軽減できると思われる。

「審判参考人制度」を導入(2024年3月15日施行)し、産業界に与える影響が大きいとみられる事件については外部の専門家からの意見を積極的に参考して審理の信頼性を高めていく。

③社会・経済的弱者への支援:審判請求職権補正制度の導入、デジタル審判システムのオープンなど

「審判請求職権補正制度」の導入(2024年3月15日施行)により、審判請求書に軽微で明らかな記載不備や誤記があった場合には審判長の職権で訂正する方針だ。このような行政サービスにより、審判手続きに不慣れな審判請求人の審判書類作成をサポートし、手続きに遅延が生じる問題が一部解消できると思われる。

また、デジタル審判システムをオープン(2023年~2025年の3か年計画のうち、1か年は完了)し、審判書類作成の手続きを簡素化し、AI技術を採用して証拠書類を自動分類する機能を加えるなど、審判請求人の利便性を高める。

国選代理人サービスにおいても代理人の専門分野と審判事件の技術分野のマッチングを強化するなど、新しい第3期体制に改編(2024年1月)される。第2期国選代理人サービスでの勝訴率は52.8%(2022年1月~2023年12月)と、代理人なしで審判を行った事件の勝訴率の21.0%とより2.5倍高く、ユーザーから高い満足度を得ている。

特許審判院長は「特許審判院は企業や弁理士業界からの意見に耳を傾けてきた」とし、「ユーザーの観点で考えて審判行政サービスの改善に取り組み、知財権紛争の一次的な解決機関として充実に努める」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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