知的財産ニュース AI動画解析による品質管理技術の特許出願件数で韓国がトップ

2023年11月27日
出所: 韓国特許庁

AIによる品質管理技術の国際出願がここ10年で44倍増加


人工知能(AI)技術の発展は製造業の品質管理でもイノベーションを生み出している。2019年、動画解析により不良品を検出する技術を開発した韓国のスタートアップ企業「SUAラボ」がアメリカのコグネックスに買収された。買収額は2,600億ウォン(1.95億ドル)に達し、海外による韓国のスタートアップ企業の買収額としては最高値だった。コグネックスはSUAラボが保有する知財権を高く評価したが、同社は特許庁のIPランドスケープ事業の支援を受けて特許戦略を立て出願業績のポートフォリオを構築していた。

韓国特許庁がここ10年間主要国の知的財産庁に出願された世界の特許を分析した結果、AI動画解析を活用したスマート品質管理※の技術出願件数で韓国がトップ(25.4%)となった。
※スマート品質管理:製造業の検査工程においてAIなどの技術を採用して物体の大きさ、パターン、文字、形などを迅速かつ正確に判定することで製品の品質を管理する技術

世界の出願動向:スマート品質管理の出願、ここ10年で44倍増加

スマート品質管理技術の分野での世界の出願件数は2011年には6件にとどまっていたが、年平均52.3%ずつ伸び、2020年には44倍の264件に達した。とりわけ、ここ5年間の出願増加率は63.4%となり、この分野での出願が加速化していることがわかった。この背景には2016年からAI技術が本格活用されていることが考えられる。

出願人の国別内訳をみると、1位の韓国が25.4%(202件)と出願件数が最も多かった。次に中国が18%(143件)、3位日本17.5(139件)、4位アメリカ17%(135件)となっている。

主要出願人:サムスン電子が2位、ほかにも韓国の大・中小企業が多く

主要出願人をみると、アメリカのKLAが1位(4.03%、32件)であり、2位がサムスン電子(3.14%、25件)、3位がドイツのシーメンス(2.39%、19件)、4位が韓国生産技術研究院(2.26%、18件)、5位がオランダのASML(1.76%、14件)となっている。

韓国の出願人をみると、10位LG電子(1.26%、10件)、15位コヨンテクノロジー(0.88%、7件)、17位ラオンピープルとヒョンデ自動車(それぞれ0.75%、6件)などの出願件数が多い。韓国は大企業から中小企業まで、製造業からソリューション分野まで、幅広い業界の企業が出願しており、スマート品質管理技術の強国の座を守った。

出願人の分類別の動向:企業がリードし、公共研究機関・大学・個人がフォロー

世界全体のスマート品質管理技術の出願の多くは企業(82.3%)による特許であり、企業がこの分野の技術開発をリードしていることがわかった。韓国の場合、企業が占める割合はやや小さく(66.8%)、公共機関(13.4%)、個人(10.4%)、大学(9.4%)の割合が大きい。

技術分類別の動向:国によって強みを見せる技術分野が異なる

技術分類別(IPC)※にみると、画像データの処理技術(IPC: G06T)の出願件数が最も多かった(29.9%)。中国と日本がこの分野の技術の開発に力を入れており、ドイツは制御システム分野(IPC: G05B)の研究開発に取り組んでいることがわかった。韓国は、技術分野の全般にわたって研究開発をしている。
※技術分類(IPC):発明の技術内容による分類がわかる国際的に統一された特許分類

特許庁のスマート製造審査チーム長は「大学や政府出捐研究機関で開発した競争力のある特許技術を中小・中堅企業が活用できる環境が大事だ」とし、「まだ成長段階にあるスマート品質管理技術の分野でスタートアップ企業などがコア技術の開発に挑戦できるよう関連する分析資料を引き続き提供していく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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