知的財産ニュース 2022韓国政府業務報告「国民と共に作った変化、最後まで責任を果たす政府」

2021年12月28日
出所: 韓国特許庁

デジタル経済をリードし、知的財産大国へ導く

  • 知的財産データを活用して国家技術開発戦略樹立を拡大支援
  • メタバース、人工知能などのデジタル環境に合わせた知的財産保護制度を構築
  • 半導体、ワクチンなどのコア技術分野に3人協議審査を拡大

これまでの成果の実感事例

  1. 新しい技術を開発したA社は特許を出願して海外輸出をしようとしたが、詳しい方法がわからず困っていた。しかし、特許庁を通じて特許出願の諮問、量産企業との連携、海外広報などの支援を受けて、韓国内外に特許を出願し、海外市場への進出に成功した。
  2. コア特許を保有する中小企業B社は、研究開発および生産ラインの構築などのための運営資金が必要であったが、信用度が低く、借り入れが難しい状況であった。しかし、知的財産(IP)担保融資を通じて自社保有特許を担保に市中銀行から運営資金の融資を受け、研究開発に集中することができた。

2022年に期待される変化の実感事例

店の商号を商標登録しないまま経営していたCさんは、メディアを通じて第三者の商標先取りによって店の商号を使えなくなったり、使用料支払いの警告状を受けたりすることがあるという事実に気付いた。しかし、近くの「地域知的財産センター」で提供される知的財産教育を通じて知的財産侵害への対応方法を学び、商標出願の支援も受け、店の商号を第三者に奪われる心配なく店を運営できるようになった。

韓国特許庁は12月28日火曜日、デジタル経済をリードして知的財産大国に飛躍するための「2022年業務計画」を発表した。今回の業務計画はデジタルトランスフォーメーションに対応する知的財産システムを構築し、知的財産の創出・活用・保護が好循環するエコシステムを根付かせるための具体的な実行計画を盛り込んでいる。

(戦略1)優秀な知的財産の創出·活用を促進する。

  1. 知的財産データを活用したデジタル成長戦略の推進
    拡張現実(AR)などの主力産業・新産業分野に対する特許ビックデータ分析を通じて、有望技術を発掘し、国家研究開発(R&D)の方向性の樹立を支援する。
    第6世代移動通信システム(6G)など、国際標準の先取りが重要な分野で標準特許の創出が有望な技術を作り出すための「標準特許戦略マップ」を構築する。
    さらに、官民の研究開発戦略を樹立する際に知的財産データの活用が普及するよう、「産業財産の情報管理及び活用促進法」を制定する。
  2. コア・基礎特許の創出によって技術基盤創業・成長を支援
    BIG3(非メモリー半導体、未来自動車、バイオヘルス)の主要技術分野に特許基盤研究開発(IP-R&D)の支援を拡大(2021年385億ウォン→2022年400億ウォン)する。
    2030青年創業企業にIP事業化資金の支援を拡大(※)し、IP担保融資に必要な価値評価の費用支援を優遇する。
    ※(2021年)547億ウォン(融資157、投資390)→(2022年)810億ウォン(融資200、投資610)
    また、小規模事業者の安定的な成長をサポートするために、知的財産の出願支援など、小規模事業者IP能力強化プログラムを新規で推進する。
  3. 知的財産金融の活性化および取引・事業化の促進
    優秀知的財産に投資する知的財産(IP)基金(ファンド)を拡大運営する。
    ※新規IP直接投資ファンド(400億ウォン)、IP基盤地域革新企業投資ファンド(125億ウォン)
    優秀IP保有の中小企業が金融機関から投資・融資を受けるために必要とするIP価値評価に対する費用支援を拡大(※)する。
    ※ IP金融連携評価支援:(2021年)88億ウォン、2,100社→(2022年)107億ウォン、2,500社

(戦略2)公正な知的財産保護システムを構築する。

  1. 環境変化に合わせた知的財産保護制度の構築
    デジタル環境に新しく登場したメタバース内の商標・デザインと非代替性トークン(NFT)関連の不正競争行為に対する一足早い保護対策を設ける。
    デジタル経済におけるコア資産であるデータの保護制度施行に伴い、データの不正取得・使用の被害に対する行政的救済策を講じる。
    また、有名人の肖像・姓名などの「パブリシティ権」侵害によって発生した経済的被害を救済することで、文化産業の発展に貢献する。
  2. 国内外における知的財産権紛争対応の支援
    中小企業の知的財産紛争対応力を高めるために、紛争情報を分析して紛争のリスクが高い技術分野と特許情報を企業に提供する。
    海外に進出する韓国企業の商標を保護するために、海外無断先取りモニタリング対象国(※)および紛争対応の支援(※※)を拡大する。
    ※(2021年)中国・タイ・インドネシア・ベトナム→(2022年)シンガポールを追加(試行)
    ※※支援企業:(2020年)79社→(2021年)99社→(2022年)110社
  3. 知的財産保護の法的執行力の向上
    オンライン偽造商品を根絶するために、ソーシャルメディアを通じて販売される偽造商品の取り締まりを強化する。
    技術保護の執行力を強化するために、特許庁技術警察の捜査範囲を技術流出の犯罪全般に拡大する案を推進する。
    ※(現行)営業秘密(無断取得・使用・漏洩行為のみ捜査)、特許、デザイン→(拡大)産業技術、営業秘密(無断流出・不当保有行為)の追加
    さらに、不正競争行為の取り締まりの実効性を高めるために、従来の是正勧告だけでなく、是正命令および過料賦課を推進する。

(戦略3)信頼される審査・審判サービスを提供する。

  1. 高品質の審査・審判サービスの提供
    国内外の産業および特許動向の分析を通じて産業別イノベーションを支援するオーダーメイド型審査政策の樹立を拡大(2025年までに全技術分野に適用)する。
    半導体・AI・ワクチンなどの国家コア技術分野に対する3人協議審査を拡大し、特許審判の準司法的地位強化に向けた制度を新設する。
  2. 知的財産審査・審判制度の整備
    デジタル環境に登場する新しいタイプの技術とデザインに対して知的財産権を付与できるように発明・デザインの定義を拡大(※)する。
    ※科学理論などの非発明だけを除いて発明として認め、実物ではない製品のデザインも認定
    一つの出願でさまざまな字体の商標を使用できるよう標準文字商標出願を導入し、商標出願人の便宜を図る。
  3. 知的財産行政サービスの品質向上
    特許検索や特許分類時に人工知能(AI)技術を導入して審査の品質を高め、AIが知的財産関連お問い合わせにチャットで直ちに回答する特許顧客相談向けAIチャットボット国民サービスを実施する。
    また、災害地域の中小企業に対して手数料を減免し(※)、誤納された手数料の返還申請期間を3年から5年に延長して顧客の利便性を高める知的財産行政サービスを提供する。
    ※特別災害地域に住所を持つ個人・法人の知的財産手数料を30%減免

(戦略4)未来に備える知的財産基盤を構築する。

  1. 地域知的財産の能力強化
    地域の知的財産能力を高めるために、地域の主力産業に対する特許分析、地域独自ブランドおよびデザイン開発の戦略を提供する。
    地域特化産業企業に知的財産費用を優先的に支援し、地域産業団地入居企業に知的財産コンサルティング(※)を提供する。
    ※(産業団地)企業需要の発掘および出願費用予算の支援、(地域知的財産センター)IP総合相談、コンサルティング
  2. 知的財産専門人材の育成
    地域産業に特化した知的財産専門人材を育成するために、地域別IP重点大学を拡大運営(※)し、未来新技術分野の学科および事業団に対するIP能力教育課程を新設する。
    ※(2021年)3校(慶尚国立大学、全南大学、忠北大学)→(2022年)4校(忠南大学を追加)
    また、法律消費者が弁理士の技術専門性を積極的に活用できるよう、特許侵害訴訟の際に弁理士と弁護士が共同で代理できるように推進する。
  3. グローバル知的財産協力の拡大
    特許先進5カ国協議体でデジタル時代における話題として浮上している人工知能(AI)創作発明に対する国際規範の新設で主導的な役割を遂行する。
    商標・デザイン先進5カ国協議体で仮想環境内の商標およびデザイン保護制度に対する改善策を議論する。
    さらに、主要貿易協定(CPTPP、RCEPなど)に含まれる知的財産関連条項が韓国の貿易構造に及ぼす影響を分析するなど、知的財産権の貿易環境に積極的に対応する。

特許庁長は「デジタルトランスフォーメーションが加速化するに伴って知的財産データの価値は一層高まっている」とし、「優秀な知的財産データを積極的に活用し、新しいタイプのデジタル知的財産を保護・育成して、目の前に控えているデジタル時代に知的財産を通じた経済成長が実現するよう積極行政を展開していく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
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