知的財産ニュース 特許・営業秘密戦略ガイドラインを発行・配布

2021年12月22日
出所: 韓国特許庁

[事例1]製品→特許で保護・工程技術→営業秘密で管理

微生物専門企業のG社は他社の紛争ニュースを聞いて、自社の技術保護戦略を立てることにしました。G社は製品化を準備している微生物に対しては段階的に特許出願して保護することにしましたが、自社が有している新規の微生物を分離して確認する工程技術は、公知化される場合、競合他社が模倣しやすく、盗用されてもそれを立証したり権利を行使したりするのが難しいため、営業秘密で管理することにしました。これからもG社は、微生物そのものは特許で保護し、微生物の生産に関わる工程技術は営業秘密で管理するとの技術保護戦略を立てました。

[事例2]営業秘密で管理→経営戦略の変更→特許取得

バイオベンチャーのQ社は薬の効能を検証する新しい動物モデルを確保しました。Q社はこのモデルを営業秘密で保護していましたが、事業拡大のために投資の誘致が必要でした。一方、市場では当該技術に対する関心が高まってライセンシングの需要が拡大する状況でした。それで、Q社は既存の投資家および株主と協議し、技術を権利化することで技術保護戦略を見直しました。権利化によって当該技術のロイヤルティーを高め、ライセンシングを新しいビジネスモデルに据えて営業戦略を拡大し、その戦略を通じて後続投資をより簡単に誘致することができました。

韓国特許庁は12月22日、最適の技術保護戦略作りに向けた「特許・営業秘密戦略(IP-MIX)ガイドライン」(以下「ガイドライン」)を発行・配布すると発表した。

ガイドラインは、特許と営業秘密のいずれかによって研究開発の成果物を保護するのではなく、模倣しやすいのか否かなどを基準に特許と営業秘密を適切に選択・組み合わせて成果物を完全に保護できるようにするために作成された。

模倣(逆設計)しやすい技術とは、製品の形状・構造などを簡単に分析または類推できる技術である。一方、模倣(逆設計)しにくい技術とは、工程条件(温度・圧力)のように類推しにくく、秘密管理が有利な技術である。特許・営業秘密戦略(IP-MIX)は、特許と営業秘密のいずれかによって研究開発の成果物を保護するのではなく、模倣しやすいのか否かなどを基準に特許と営業秘密を適切に選択・組み合わせて成果物を完全に保護できるようにするためのものである。

特許は技術公開を前提に20年間その技術を独占使用することである一方、営業秘密は営業秘密の保有者が秘密として管理することができれば期間の制限なく非公開の状態のまま使用することができる。

区分 特許 営業秘密
公開有無 出願日から1年6カ月後に公開 公開しない
保護期間 特許権を設定登録した日から特許出願日の後の20年になる日まで 秘密として管理される限り制限なし
長所 ・ライセンシングによって収益創出が可能
・逆設計などを通じて発明の内容把握が容易であるか、製品化されて構成要素に対する侵害事実の立証が容易な場合には特許が有利
・秘密として管理される限り保護期間に制限がない
・営業秘密の対象が特許権より多様かつ包括的である
・工程(機械の工程技術、化学製造技術)、ソフトウェア(アルゴリズム)などのように、公開されたとき、第3者によって模倣されやすく、侵害事実の立証が難しい場合には営業秘密が有利
短所 ・原則的にすべての特許が公開されるため、第3者による模倣または改良発明の権利化などが可能
・特許権存続期間(20年)満了時に誰もが使用可能
・秘密管理に失敗した場合、営業秘密の不正取得ではない限り第3者の使用を禁止することが難しい
・紛争が発生した際に権利行使が難しい

年初に終結したLG化学・SKイノベーションのバッテリー関連営業秘密侵害訴訟からもわかるように、新技術、特に工程技術に対する保護手段として主に営業秘密が活用されており、それによって特許だけでなく営業秘密で保護する方式の重要性も浮上した。

同ガイドラインは特許と営業秘密の長所・短所を比較・分析しており、逆設計の可能性、技術公開時の問題点、経営戦略など、技術保護手段を選択する際に考慮すべき基準を説明している。また、特許と営業秘密の選択・組み合わせ事例を多数盛り込んで、研究現場で概念を簡単に理解し、活用できるようにすることに重点を置いている。さらに、新型コロナと関連してmRNAワクチン開発に関心が集中されている状況を反映し、生産工程別の産出物を保護する方法と関連制度を紹介してワクチン開発企業が技術保護戦略を樹立するのに役立てるようにした。

特許庁の産業財産政策局長は「技術競争がますます激しくなるにつれて技術の成果物を特許で保護するか営業秘密で保護するかの選択が一層重要になっている」とし、「韓国の研究者が研究開発の成果物の保護方法を決める上で、今回発行された『特許・営業秘密戦略(IP-MIX)ガイドライン』が役立つことを願う」と述べた。

一方、「特許・営業秘密戦略(IP-MIX)ガイドライン」は特許庁のウェブサイトの新型コロナ特許情報ナビゲーション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます知的財産保護総合ポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロードできる。

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