知的財産ニュース 中小企業のガラスの天井、IPで克服する

2019年7月18日
出所: 韓国特許庁

特許庁・中小企業中央会、中小企業のIP競争力強化に向けた業務協約締結

特許庁と中小企業中央会は、7月18日(木曜、午後3時)中小企業中央会(ソウル市永登浦区)で、中小企業のIP競争力強化に向けた業務協約を締結した。

今回の業務協約は、特許庁と中小企業中央会の協力の強化により、中小企業の優秀なIP創出を誘導し、国内だけでなく海外においてもその価値がきちんと認められるように支援することを目的とする。

これまで、中小企業は2015年以降、特許出願件数で大企業を抜いて国内出願件数1位を堅持するなど、国内出願分野で優秀な成果を出してきた。

年度・出願人類型別の特許出願件数推移(単位:件、%)
出願類型201320142015201620172018割合(2018)2017年比2018年増減率
中小企業37,85641,66145,41946,53446,10547,01322.4%2.0%
中堅企業11,99011,33110,18010,52010,12810,1794.8%0.5%
大企業47,00545,98642,64937,02033,56835,24016.8%5.0%
内国個人37,34938,04740,92039,75940,51241,36919.7%2.1%
合計204,589210,292213,692208,830204,775209,9922.5%

しかし、中小企業の海外特許出願率(※)は、4.3%に過ぎず、海外市場においては特許紛争にそのままさらされているのが現状である。

※国内に新規出願された発明のうち、外国にも出願した発明の割合

※主体別の海外出願率(2015年):大企業(36.8%)、研究機関(12.3%)、大学(4.5%)、中小企業(4.3%)

また、2019年7月から特許・営業秘密侵害に対する懲罰的損害賠償制度が施行され、IP保護が強化された一方、費用・人材などの側面から紛争対応に脆弱な中小企業は、紛争で敗訴した場合、経営上、致命的な損失を被る恐れがあるため、万全を期する必要がある。

これを受けて、両機関は業務協約書に、中小企業に対する企業群共通核心技術IP-R&Dを拡大する他、特許庁の各種IP保護事業に中小企業の参加を促すなど、中小企業の優秀なIP創出および保護に向けて協力するという内容を盛り込んだ。

さらに、(1)中小企業のIP活動に対する税制支援の強化、(2)特許共済事業の加入者の確保、(3)中小企業のIP金融サービスの利用拡大、(4)IP基盤スタートアップ連携支援など、計10の協力業務の遂行に向けて特許庁と中小企業中央会が共同で取り組むことで合意した。

特許庁‐中小企業中央会10大の協力業務

  1. IP基盤スタートアップ連携支援を通した創業活性化
  2. 中小企業協同組合など、企業群共通中核技術IP-R&Dの拡大
  3. 中小企業協同組合および中小企業CEOのIP認識の向上
  4. 特許共済事業の加入者確保の協力
  5. 中小企業の海外IPの保護強化
  6. 中小企業の営業秘密保護体系の構築支援
  7. IP侵害・被害申告および紛争調停の活性化
  8. 中小企業の職務発明補償制度の導入拡大
  9. 中小企業のIP金融サービスの利用拡大
  10. 中小企業IP活動に対する税制支援の強化

一方、業務協約と一緒に行われた「特許庁長招請中小企業家懇談会」では、中小企業代表約20人が参加し、IP政策について建議し、特許庁長が直接答弁する時間を設けた。

中小企業界は、(1)優秀特許の事業化支援の基盤整備、(2)特許審査の期間短縮、(3)海外IP支援事業の拡大、(4)IP金融早期定着に向けた価値評価の基盤整備などを建議し、現場の意見が積極的に政策に反映されるよう、特許庁の支援を求めた。

特許庁長は、中小企業界の建議事項に対して、「特許庁は、これからもIPが中小企業の成長をけん引することができるよう、IPエコシステム・イノベーションに取り組む」とし、「その課程で、中小企業の隘路および建議事項を迅速に改善できるように、持続的に中小企業のCEOとの疎通の場を設けていく」と述べた。

これを受けて、中小企業中央会長は、「韓国の経済成長の鈍化は、イノベーション力量の低下から起因するものであり、イノベーション力量の向上のためには、IPの役割がいつもよりまして重要な時期である」とし、「我々の中小企業界もその重要性を認識し、韓国経済における新しいアイデア、そして発明とイノベーションの主役になれるよう、最善を尽くす」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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