知的財産ニュース 大学・公共研の特許に関する規制緩和を行い、技術移転を促進する

2019年1月8日
出所: 韓国特許庁

高品質の特許創出のための特許費用支援の拡大、特許の譲渡手続きの簡素化など

韓国政府は1月8日15時、大韓商工会議所で「第2回科学技術関係長官会議」を開催し、イノベーション成長対策の一環として、「大学・公共研の特許活用の革新方策」を発表した。

今回の革新方策は大学、公共研究機関のR&Dの成果である特許が、民間企業にスムーズに移転され、事業化につながるように、市場収益創出の観点からの高品質の特許創出、質の高い特許創出のための特許費用支援と発明者の権利保障、特許技術の移転・事業化・法制度の改善を骨子としている。

これまで大学・公共研は市場の需要を視野に入れず、量を中心に特許を出願してきた。その結果、特許費用は不十分で価値のある特許も不足しているのが現状である。

※特許出願件数(2016):KAIST 1,009、ソウル大学927、東京大学229、MIT 470、スタンフォード288

※特許出願1件当たりの費用(2016、万ウォン):韓国の大学300、公共研508、ソウル大学386、スタンフォード4,099

また、技術移転収入のうち、実際に企業の売上高に関連する経常技術料の割合は13.6%に過ぎず(注1)、ほとんどは定額技術料として徴収している。このため特許技術の商用化に失敗した際、企業の負担を重くしている。

一方、海外の主要国はスタートアップを育成するために、特許の独占使用を積極的に許可しているが、韓国では複数の企業に特許使用を許可する通常実施が原則である。

その結果、韓国の大学・公共研が保有する特許は34.9%のみ活用されており、企業に移転された技術が実際、売上高につながったのは10.8%に過ぎず、全体の大学の53%は技術移転収入が特許費用を下回っている。

これを受け、韓国政府は大学・公共研が保有する特許技術の移転・事業化を促進し、韓国経済の成長エンジンの確保と雇用創出のために、「大学・公共研の特許活用の革新方策」を発表した。  

方策の内容は以下のとおりである。

第一に、市場収益創出の観点から、高品質の特許を創出する方策を推進する。

これまでは市場の需要を視野に入れずに特許出願をしてきたが、これからは企業の需要がある技術を中心とする特許出願を誘導する。

※出願前に発明の審議・評価を行い、有望技術を選別する「需要を基盤とする発明インタビュー」を強化

政府R&D課題を評価する時、依然として量的特許成果指標が使われているため、これを縮小して経済的成果を中心とする特許成果指標へと転換する。

※優秀な研究成果の権利を先取りするために特許出願件数は維持するが、長期間の戦略的対応が必要な登録件数、海外特許件数などは短期実績評価から除外

企業が懸念する技術事業化のリスクを減らし、大学・公共研が保有する特許の技術成熟度を高めるために、政府が特許の有効性を検証する事業(特許ギャップファンド)を集中的に支援する。

※(現行)単年度、課題を単位にして一回だけ支援→(改善)長年間、機関を単位にして投資‐回収‐再投資する大規模事業へと転換

低価格の特許代理(注2)による不良特許を防止するために、まず国家機関向けの適正な代理人費用勧告(案)を設け、大学・公共研が同勧告案を使用するよう、積極的に誘導する計画である。

第二に、質の高い特許創出のために、特許費用支援を拡大するとともに、有望特許の死蔵を防止して発明者の権利保障を強化する。

強い特許を創出するためには相当な費用がかかるため、高品質な明細書作成、海外出願および海外特許の収益化を支援するファンドを造成する。

※母胎ファンド(fund of funds)の特許アカウントを使用してIP出願(20億ウォン)、IP収益化(50億ウォン)に出資(2018)し、今後、次第に拡大する予定

特許予算不足により有望特許が死蔵しないよう、研究者が特許費用の一部を直接負担するか、大学・公共研による特許出願および権利維持ができない場合には特許を研究者に返す根拠規定を設ける。

有望特許の技術移転・事業化に対して大学・公共研が適切な費用を回収し、再投資できるように、技術料分配前の特許費用先控除根拠(注3)を設ける。

第三に、大学・公共研が保有する特許技術の移転・事業化を阻害する法制度の改善を推進する。

市場を先導していくイノベーション中小・中堅企業を育成するために、これまでは基準が曖昧であるため、現場で適用しくい専用実施(特許の独占使用)の許容基準を明確化するとともに、特許の譲渡も促進するために、大学・公共研の特許技術移転に関する実務ガイドラインを関連部処と共同で作成・配布する。

事業化に失敗すると、企業の負担が重くなる従来の定額技術料納付方式より、売上高に応じて技術料を納付する経常技術料納付方法を拡大するために、標準契約書を開発・普及し、誠実に納付した企業は政府事業の選定時に優遇する。

また、特許を基盤とする起業を促進するために、既存の複雑な特許譲渡手続きの代わりに、簡単かつ公正な特許譲渡手続きを提示し、大学・公共研に適用する計画である。

※(既存)1年以上、移転希望技術を公示→(改善)1カ月間、譲渡予定技術を公示(譲渡予定企業と譲渡条件を明記)

政府は、今回の革新方策が順調に進めば、特許移転を受けた民間企業の売上高は、現在の1兆2千億ウォンから2022年には3兆ウォンへとなり、新規雇用は直接・間接雇用を合わせて現在の5千人余りから2022年には1万人へと拡大され、大学・公共研の技術料収入も現在の1,771億ウォンから2022年には2,700億ウォン程度に増大すると見込んでいる。

特許庁長は、「これまで大学・公共研の特許は厳しく管理する規制に縛られていたが、これからは大学・公共研の特許を企業にスムーズに移転するとともに、事業化につなげることで、韓国企業のイノベーション成長を促進するために今回の改善策を打ち出した」とし、「革新方策に盛り込まれている重要な推進課題が計画どおりに履行されるよう、特許庁は早急に法改正を推進し、関係部処と緊密に協力していきたい」と明らかにした。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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