知的財産ニュース 大企業のイノベーションセンター離れが進む

2018年8月6日
出所: 電子新聞

韓国の全国17カ所の創造経済イノベーションセンター(以下、イノベーションセンター)を専任する大企業が納付した寄付金総額が、最近2年間で3分の1に減少した。参加については大企業の自律に任されているため、この現象は加速化する見通しである。大企業としては、政府の明確なシグナルがない状況で投資を続けることは困難だという立場である。

イノベーションセンターは政府・自治体・大企業がスタートアップを支援する仕組みになっている。これは、世界に類を見ないビジネスモデルである。しかし、設立後4年が経ち、大企業のイノベーションセンター離れが進んでいる。各イノベーションセンターへの大企業の寄付金総額は2015年には327億ウォンに達していたが、昨年は125億ウォンに激減した。今年はさらに深刻な状況である。寄付金を出した大企業が3~4社に過ぎないのである。

これは予想されたことである。多くの大企業は政策に呼応するために、イノベーションセンターに参加した。社会的責任を果たし、企業内に核心的な雰囲気を作りたいという表面上の理由もあっただろうが、実際、選択せざるを得なかっただろう。

それが、現政権に入ってガラリと雰囲気が変わった。政府はイノベーションセンターへの参加について大企業が自ら決定することにした。その以降、大企業は政府の意図を見極めるために奔走している。 

参加については企業が決められるようになったが、若者による起業、地方での起業活性化を訴える政府の基調に従わないわけにはいかない。さらに前政権が展開した事業に積極的に参加していたことがむしろ現政権に嫌われる原因になりかねないという声もある。

匿名を条件に話したある大企業の関係者は、「今年は支援計画を立てていない」として「政府が参加を大企業の自律に任せた本当の意味が分かるまでは、決定を下すことは難しいだろう」と述べた。

イノベーションセンターと大企業間の不協和音も原因である。意思決定における主導権争いが激しいほか、イノベーションセンターを下部機関だと見下ろす一部の自治体まで登場し、亀裂が入ってしまった。まだ整理はついていない状況である。

特定の地域という限られた起業家プールから玉石を見分けることが容易でないのは事実である。これも大企業が参加を躊躇する一因となっている。

あるイノベーションセンター長は「政策変更により、大企業の予算が削減されることは予想していた」とし、「他の企業や投資家を確保するために努力している」と述べた。続いて「政権交代により、大企業が約束を反故にするのは残念極まりない」と指摘した。

イノベーションセンターは換骨奪胎を図っている。大企業のイノベーションセンター離れが進み、新たな代案が必要となった。幸い、中小・ベンチャー企業の支援により、時間を稼ぐことができた。

イノベーションセンターの担当が未来創造科学部から中小ベンチャー企業部(以下、中企部)に変わり、イノベーションセンターが政府の事業に参加する機会が増えた。最近では中企部が推進する「技術革新型創業企業支援事業」の運営機関に選ばれた。若手起業家1,500人に最大1億ウォンずつ支援する事業である。これで、スタートアップ育成というイノベーションセンター本来の役割は果たすことができるようになった。

しかし、専売特許の事業発掘は急務である。これについてイノベーションセンターが独自で生存することができる差別化された事業が必要だという指摘がある。多くのイノベーションセンターは現在、地域の中小・中堅企業、大学を対象に協力パートナーを探している。大企業の空席を埋め、地域社会へより深く浸透するという戦略である。地域起業のハブというイメージも固める目標である。

イノベーションセンターの機能にも変化があるだろう。専任する大企業の性格に合わせた特化事業が一部消えるとみられる。仁川は物流、忠清北道はバイオ・ビューティー、全羅北道は炭素繊維などの主な事業分野で調整を図る見通しである。

開放型イノベーション(オープンイノベーション)の推進エンジンは、さらに強くなる予定である。意思決定の方法が現場中心に変わり、イノベーションセンターの理事会や地域革新創業協議会などと活発な議論を行って決定する構造を作る。

保育・投資機能も再編する。中企部は、投資力のあるイノベーションセンターがアクセラレーターになれるように支援している。仁川イノベーションセンターは最近、仁川地域初のアクセラレーターに登録した。また、中企部は保育企業向けの後続支援プログラムも見直す。さらに、技術保証基金と協力してイノベーションセンターの専門性も高める。  

他のイノベーションセンター長は「イノベーションセンター事業に対して、前政権は強制的であったのに対し、現政権は自律的」とし、「イノベーションセンターが自ら成長できる力を身に着けるまでは、政府や大企業の支援が求められる」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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