知的財産ニュース 第4次産業革命による流通・ショッピング分野における革新技術の出願動向
2017年3月24日
スイスで開かれるダボス会議WWF(The Future of Jobs, 2016)は、第4次産業革命の主な技術変化の動因として人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、ビッグデータ(Big Data)、仮想現実(Virtual Reality)などを提示している。
ダボス会議:1971年設立。非営利財団として経済以外に政治・社会問題に対する方策や対案を提示し、個別の国家政策に影響を与える国際会議である。
特許庁によると、この分野における革新技術の特許がこの5年間(2012年~2016年)、着実に出願されたことが分かった。
5つの革新技術の出願件数は全体で7,881件であり、拡張現実3,354件(42.6%)、人工知能1,621件(20.6%)、ビッグデータ1,236件(15.7%)、モノのインターネット1,069件(13.6%)、仮想現実601件(7.6%)の順で出願された。
各々の革新技術を適用した分野の中で、流通・ショッピングの場合、全体で185件が出願されたことが分かった。出願件数は拡張現実86件(4.8%)、ビッグデータ53件(11.1%)、モノのインターネット27件(3.2%)、仮想現実14件(2.3%)、人工知能5件(1.6%)の順で出願されたことが分かった。
出願人別では大学(産学協力団)、大企業、中小企業、研究所、個人の順で出願しており、大学の産学協力団と大企業がこの分野の技術をリードしていることが分かった。
知能情報化による消費者行動を予測することで、自動購買や商品推薦が可能な「無努力(Zero-Effort)ショッピング、モノが自動的に流通・ショッピングの機能を果たす「モノチャンネル(Thing Channel)」の登場に伴い、売り場を訪問せずに流通・ショッピングの体験や経験が可能なVR/ARなどのスマートな流通ショッピングモールが浮上している。
(無努力ショッピング)アマゾン、イーベイなどを中心にAI、ビッグデータなどに積極的に投資し「人工知能ショッピング秘書」を商用化し、AIとIoT技術を基にモノが人間を介さず、製品を自動的に注文する様々な家電製品の商用化。
(モノチャンネル)AI、IoTの技術を基にプリンターがトナーの残量を感知し、自動的に新しいトナーを注文(サムスン、アマゾン)する。水筒がフィルターを通過する水の総量を測定し、適正な時点にフィルターを自動的に注文する(Brita)。
こうしたことにより(発明の抄録を分析)人工知能、モノのインターネット、仮想及び拡張現実(AR/VR)など第4次産業革命の技術が発展するにつれ、産業間の境界破壊と技術間のコンバージェンスが進んでおり、
特に、価値創出の主な源泉が商品やサービスを、直接かつ単純な対面取引の方式から脱し、消費者のニーズ(Needs)が直ちに生産に反映される、生産・消費価値の欲求に対する知識や情報へと急速に転換していることが明らかになった。
特許庁の金ミンヒ情報顧客支援局長は、「第4次産業革命時代の流通とショッピングはこれまでとは全く違う新たな形態や方式で進む見通しだ。
こうしたグローバルな流通・ショッピングの革新が進み、関連業界では新技術に対する果敢な投資など積極的な対応が求められ、特許庁も今後、革新技術が適用される様々な分野の特許出願動向を先制的に収集・分析して関連情報を提供したい」と述べた。
第4次産業革命による革新技術の特許出願動向(2012年~2016年)については、以下添付ファイルをご覧ください。
なお、ジェトロによる仮訳ですので、内容について正確を期すためには、特許庁のホームページにて原文をご確認ください。
第4次産業革命による革新技術の特許出願動向(2012年~2016年)
1.革新技術の出願動向
12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
人工知能(AI) | 295 | 371 | 367 | 301 | 287 | 1,621 |
モノのインターネット(IoT) | 200 | 225 | 160 | 188 | 296 | 1,069 |
ビッグデータ(Big Data) | 56 | 266 | 298 | 300 | 316 | 1,236 |
仮想現実(Virtual Reality) | 21 | 37 | 84 | 121 | 338 | 601 |
拡張現実(Augmented Reality) | 466 | 783 | 713 | 689 | 703 | 3,354 |
計 | 1,038 | 1,682 | 1,622 | 1,599 | 1,940 | 7,881 |
12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
人工知能(AI) | 0 | 2 | 1 | 0 | 2 | 5 |
モノのインターネット(IoT) | 0 | 0 | 11 | 15 | 1 | 27 |
ビッグデータ(Big Data) | 2 | 13 | 19 | 14 | 5 | 53 |
仮想現実(Virtual Reality) | 0 | 5 | 0 | 6 | 3 | 14 |
拡張現実(Augmented Reality) | 17 | 21 | 28 | 15 | 5 | 86 |
計 | 19 | 41 | 59 | 50 | 16 | 185 |
検索方法:各々の革新技術分野の出願動向を把握するために出願された件数(発明の名称)に加え、発明の抄録(特許庁のDB KOMPASS)部分でも同じキーワード検索で出た件数を合わせた数値である。
※革新技術における全体の出願動向
※革新技術を適用した流通・ショッピング分野の出願動向
2.革新技術を適用した流通・ショッピング分野における出願人別の出願動向
区分 | 個人 | 中小企業(コンビニ、ネットショッピングなど) | 大企業(マート、デパート、免税店など) | 研究所 | 学校(大学、産学協力団) |
---|---|---|---|---|---|
人工知能 | 0 | 1 | 1 | 1 | 2 |
モノのインターネット | 1 | 6 | 8 | 0 | 12 |
ビッグデータ | 6 | 16 | 2 | 3 | 26 |
仮想現実 | 0 | 1 | 2 | 5 | 6 |
拡張現実 | 1 | 20 | 36 | 11 | 18 |
計(185) | 8 | 44 | 49 | 20 | 64 |
※革新技術における全体の出願動向
※出願人別の多出願の技術分野
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