知的財産ニュース 固体電解質二次電池に関するPCT出願動向

2016年10月17日
出所: 韓国特許庁

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スマートフォンの爆発事故の影響で火災や爆発に対する危険のない、安定化したリチウム二次電池※に対する関心が高まっている。

※リチウム二次電池は、高いエネルギー密度と長い寿命の優れた性能により、スマートフォン、ノート型パソコン、デジタルカメラ等携帯用電源に広く活用される。

しかし、従来のリチウム二次電池に使用される液体電解質は電解液の分解反応等によって発火し、爆発の危険性が存在する。このような問題を解決するために、液体電解質を固体電解質※※に代えている。

※※外部の衝撃による破損時に漏液や爆発の危険性がなく、高温や高電圧の状況でもエネルギー密度を高く維持することが可能。

韓国特許庁によると、過去10年(2006~2015)間の固体電解質二次電池に関するPCT国際出願は219件だった。2010年まで10件強に過ぎなかったが、2011年25件に増加し、2012年23件、2013年45件、2014年28件、2015年50件と、次第に増加してきている。

固体電解質二次電池のPCT国際出願の主要出願人現況

出願人別に見ると、トヨタが24件(10.9%)と最も多く、次いで日立10件(4.6%)、ソニー8件(3.7%)、LG化学7件(3.2%)等の順となっている。

固体電解質二次電池のPCT国際出願の出願人国籍別出願状況

出願人の国籍別に見ると、日本133件(60.7%)、米国40件(18.3%)、韓国20件(9.1%)、ドイツ17件(7.8%)、中国5件(2.3%)の順となっている。

固体電解質二次電池の素材別PCT国際出願現況

出願された技術内容は、従来の二次電池で使用する液体電解質を固体に代替する中核素材である固体電解質の開発に関するものである。

安定性は優れているが、イオン伝導度が低く高温熱処理工程時間が長い酸化物(oxide)系素材が67件(30.6%)、イオン伝導度は高いが、水分や酸素に脆弱な硫化物(sulfide)系素材が44件(20.1%)、リチウムポリマー電池にすでに商用化し、さらなる性能向上を図っている高分子(polymer)系素材が31件(14.2%)、結晶化ガラス状態が得られるためイオン伝導性が高いリン酸塩(phosphate)系素材が17件(7.8%)だった。

特許庁のカン・ジョングァン国際特許出願審査1チーム長は「これまで二次電池は携帯機器用の小型電池としての使用が主流となっていたが、近年、電気自動車用の電源、中大型エネルギー貯蔵装置等へと分野を広げている。最近では爆発や火災の危険がない固体電解質二次電池に関する技術開発が活発に行われており、これによる国内企業の特許出願が増えることを期待する」と話した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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