知的財産ニュース 韓国キャラクター産業、違法コピーの取締りが不十分

2016年7月25日
出所: デジタルタイムズ

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韓国のキャラクター産業は成長し続け、今や約10兆ウォン規模(昨年時点)に上るまでになったが、一方ではキャラクターの違法コピーが蔓延しているにもかかわらず、それに対する取り締まりが十分に行われていないのが現状だ。違法コピーされたキャラクターの市場規模は、年間3兆~4兆ウォンに達すると関連業界は試算している。

先月30日、韓国文化コンテンツ・ライセンシング協会によると、キャラクター商品を販売する全国4,321の店舗の中で、偽物を取り扱う業者の割合は63.06%(2014年基準)に達する。韓国キャラクターの違法コピー商品の流通規模は1兆5,781億ウォンと推算される。偽キャラクター商品の流通に係っているが、統計に取られていないものまで含めると、違法コピーによる被害額は3兆~4兆ウォンに達するというのが業界の推算だ。

このように国内でキャラクターの違法コピーが盛んに行われているのは、政府当局が実態をまともに把握できず、取り締まりを怠っているためだという指摘が出ている。 政府は、キャラクターの偽造品を現場ですぐ見分けることができる専門性を持つ調査・取り締まりの人材を確保していない。さらに、官民連携で行われてきた偽キャラクターの流通現状に関する調査作業も昨年から中断されている。

現在、違法コピーされたキャラクターの取り締まり・回収・刑事措置の作業は、文化体育観光部の著作権特別司法警察(特司警)が民間機関である著作権保護センターと共同で行っている。現場取り締まり活動に係る人員は特司警25人、センター20人くらいに留まっている。これらの職員らは全国を舞台に活動しており、キャラクターだけでなく、図書、レコード、映像等さまざまな大衆コンテンツ物の違法コピーを取り締まっている。キャラクターの違法コピーの取り締まりに特化した人材はいない。

キャラクターはその特性上、そのままコピーすること以外に2次著作物または他の製品との多様な結合の形で流通される。そのため、著作権法第133条に基づく回収・廃棄の対象に当たるのかを見極めることが容易ではないだけに、当該分野に詳しい取り締まり職員が必要というのが業界の意見だ。

文体部傘下の職員らの取締り実績は低迷している。違法コピーされたキャラクターを摘発し、刑事処罰を行った件数は2013年2件、2014年0件、2015年2件、2016年現在1件に留まっている。この期間、刑事処罰を受けた販売業者は8人に過ぎない。

著作権特司警関係者は「キャラクターは取り締まり職員が現場で偽物をひと目で見分け、押収するのが難しい。偽物か否かをすぐに把握できるくらいオリジナルキャラクターに対する情報が豊富な専門家が必要となるが、そうでないのが現実」と話した。

さらに韓国政府は、キャラクターのコピー商品の流通現状も十分に把握していない。韓国コンテンツ振興院と民間協会である韓国文化コンテンツライセンシング協会の連携で行ってきた違法キャラクターの流通現状調査事業は昨年中止された。同振興院が被害現況調査事業の予算を本物のキャラクター商品の消費推奨キャンペーンの「本当の親友キャンペーン」事業の予算に回したためだ。同振興院の関係者は「昨年取り締まり・現況調査に集中してきた違法キャラクター政策の方向を、キャンペーン等による正規品使用に関する認識の拡大へとに切り替えたからだ」とその背景について説明した。

これに先立って、同協会は2013年に韓国コンテンツ振興院から予算の支援を受け、ソウル・首都圏の店舗標本調査を実施し、これを通じて2兆4,000億ウォンという全国違法キャラクターの流通規模の推計値を計算した。当時、警察庁国際犯罪捜査隊による捜査も行われた。

2014年には、同協会とコンテンツ振興院が全国4,000余りの売場の現場を調査した結果、全国偽物のキャラクターの流通規模は約1兆6,000億ウォンと、やや減ったことが分かった。2013年に実施した調査・取り締まり・捜査がキャラクターの偽物の流通に歯止めをかけたというのが協会の説明だ。このような効果があるので、着実な実態調査と取締りが行なわれなければならないとの指摘が出ている。業界の関係者は「違法コピーされたキャラクターによる被害が絶えないだけに、キャラクター産業振興政策も重要だが、闇市場の取り締まり・撲滅が持続的に行われなければ、韓国キャラクターの産業生態系が健康に成長することはできない」と話した。

キム・スヨン記者 newsnews@dt.co.kr

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