知的財産ニュース 国家知識財産委員会、中小企業技術保護総合対策を発表

2016年4月6日
出所: 電子新聞

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悪意のある営業秘密侵害が確認されれば、発生した損害の最大3倍まで賠償責任を負わせる「懲罰的損害賠償制」の導入が進められる。営業秘密侵害の際、罰金も10倍高くなる。 また、全国17の地方警察庁に専担捜査チームを設置する等、中小企業の技術保護政策が画期的に強化される。

政府は今月6日、政府ソウル庁舎にて第16回国家知識財産委員会を開き、このような内容を盛り込んだ「中小企業技術保護総合対策」を審議・確定した。

今回の総合対策には、営業秘密侵害により困難が抱えている中小企業を保護するための大胆な政策がたくさん盛り込まれた。韓国の技術流出の被害規模は1件当たり25億ウォン(2014年時点)と、5年間で2倍以上急増した。また、海外の不法技術流出被害のうち、64%が中小企業に集中し、対策作りが急がれるという指摘だ。

主要政策としては、懲罰的損害賠償制の導入、営業秘密構成要件の緩和、処罰対象の拡大、罰金の上限額引上等がある。これに向け特許庁は、年内に「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」の改正を推進する。改正案には、悪意のある営業秘密侵害により発生した損害の最大3倍まで賠償責任を負わせ、罰金額も従来より10倍に高める案が盛り込まれる予定だ。

しかし、法改正までの道のりは険しいものと予想される。特許庁は、昨年「特許権侵害」について懲罰的損害賠償制の導入を推進したが、国会の立法過程で頓挫した経緯がある。営業秘密は公開される特許とは違って、非公知性、経済的有用性、秘密管理性が特徴だが、転職技術者と研究開発者に対する過度な処罰の可能性もあるためだ。

技術紛争事件に対する迅速な対応体制を構築することも主な政策の一つだ。 技術流出の刑事事件の管轄を高等法院所在の地方法院に集中し、裁判を速かに進行する「集中審理制」を導入する。これまで特許・営業秘密侵害事件は判決まで通常1年近くかかり、被害企業の救済が遅れた。また、政府は技術奪取事件に対する調停制度を簡単に利用できるように、統合事務局を運営して中小企業の効率性を高める方針だ。

中小企業保護対策も強化される。現在運営中の「中小企業技術保護統合相談センター」は、被害の通報もできるようにし、警察庁の産業技術流出捜査チームとホットラインを運営する予定だ。また、警察庁は来年上半期までに17の地方警察庁に専担捜査チームを設置し、検察は、弁理士等の専門人材を特許捜査の諮問官として採用する。公取委は、大企業による技術奪取の根絶に向けて下請法上不当な技術資料の要求や流用行為に対する現場職権調査を実施する。

これとともに、国家中核技術の海外流出の防止にも注力する。政府はロボットや新再生可能エネルギーを始めとする新産業や鉄鋼・造船等についても国家中核技術を新たに指定する案を推進することにした。また、海外進出企業に対する侵害調査と法律諮問の支援を強化する計画だ。

今回の総合対策は今年1月、ファン・ギョアン国務総理の指示以降、タスクフォース(TF)が立ち上げられ、集中的に議論されてきた。ファン国務総理は今回の対策にいつにも増して関心を傾けているという。

ファン国務総理は、「優れた中小企業の技術をしっかり保護することは、創造経済の中核であると同時に中小企業の競争力確保の土台となる。技術流出事件では、流出の初期にどれだけ迅速に対応するかが被害を最小限に止めるカギとなるだけに、通報・相談から捜査・起訴・裁判に至るまで、全ての関係省庁が緊密な協力体制を構築しなければならない」と強調した。

一方、この日、国家知識財産委員会では「第2次国家知識財産基本計画(2017~2021)策定指針」と「2016年知識財産イッシュ政策化推進計画」の報告が行われた。また、「国家知識財産施行計画、財源配分方向改善策」も審議・確定された。

ヤン・ゾンソク記者   jsyang@etnews.com

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