知的財産ニュース 2015年国内知財権紛争実態調査結果を発表

2016年6月1日
出所: 韓国特許庁

5369

特許庁が実施した2015年国内知財権紛争実態調査(調査機関:2015年9月~2016年2月)の結果によると、国内知財権紛争の最大の被害者は、中小・ベンチャー企業という。今回の実態調査では、知的財産権紛争に巻き込まれたことのある企業152社※※を対象に、この5年間の紛争について詳しい情報を調べるアンケート調査を実施した。

※調査対象となった知財権の範囲:産業財産権(特許、実用新案、デザイン、商標)及び営業秘密

※※大企業11社(7.2%)、中堅企業26社(17.1%)、中小企業81社(53.3%)、ベンチャー企業34社(22.4%)

主な結果内容を見ると、まず、予想とは違って国内知財権紛争の被害者は、ほとんど中小・ベンチャー企業だった。調査対象となった企業が経験した知財権紛争370件のうち、中小・ベンチャー企業が巻き込まれた紛争は241件と65.1%に達しているが、大企業は6.8%に過ぎない。

第2に、知財権紛争による被害規模も中小・ベンチャー企業で最も高いことが分かった。知財権の侵害により発生する損失額の平均を見ると、中小企業は446万ウォン、ベンチャー企業は149万ウォンと高いのに対し、大企業は6百万ウォンに過ぎなかった。さらに、紛争の最大の被害に売上減少と答えた割合を比べてみると、中小・ベンチャー企業は過半数以上(それぞれ57.1%、56.3%)であるのに対し、大企業は5.3%に留まっている。

第3に、中小・ベンチャー企業は、知財権紛争が訴訟に発展する場合(それぞれ53.9%、60.6%)が多い等、紛争が長期化する傾向があった。その反面、大企業は警告状だけで事件が終結する割合が73.7%に達し、紛争の初期にほとんどの紛争が解決された。これは、資本力や知財権専門性等において、中小・ベンチャー企業と大企業間で能力の差が大きいためと分析される。

第4に、知財権侵害に対する損害賠償額の平均は、5百万ウォンだったが、これは損失額平均289百万ウォンに比べはるかに小さく、訴訟費用の平均額58百万ウォンにも到底及ばない金額だ。今年6月に損害賠償額の立証を容易にする方向に特許法が改正されたが、今後どのような変化や効果をもたらすのかが注目される。

第5に、中小・ベンチャー企業が経験した知財権紛争では、特許紛争の割合が最も高かったのに対し、大企業と中堅企業では商標権紛争の割合が最も高った(それぞれ58.8%、54.5%)。これは、中小・ベンチャー企業は、技術に依存する傾向が高い半面、企業の規模が大きくなるほど、ブランドの重要性が高まるためと見られる。

特許庁のパク・ソンジュン産業財産保護協力局長は「今回の実態調査の結果には、知財権紛争で困っている中小・ベンチャー企業の現実がそのまま反映されていると考えられる。こうした実情を踏まえ、今後中小・ベンチャー企業の知財権紛争への対応能力を強化することに力を入れる方針だ」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195