知的財産ニュース 中国華為、サムスン電子に特許訴訟を提起

2016年5月25日
出所: デジタルタイムズ

5365

サムスン電子を狙った中国ファーウェイの4世代(G)移動通信関連特許訴訟は、変わった中国企業のステータスを示す「隔世の感」の事件だという分析が出ている。これまで「代表的な偽物」というイメージを持っており、特許訴訟の対象となってきた中国企業がサムスンの「特許狙撃手」として登場し、訴訟の背景や今後の見通しに関心が集まっている。今後、サムスンがクアルコムやノキア等に年間約2兆ウォン(推定値)に上る特許料を支払っているように、中国のファーウェイにも莫大な特許料を支払わなければならない状況に追い込まれかねないという危機感も出ている。

今回の特許訴訟におけるファーウェイの本音は、これまで世界のスマートフォン市場で足を引っ張っていた「チャイナディスカウント」を解消するための戦略的布石だという解釈が出ている。中国製品は「低価模倣品」というイメージが固まっていたために持続的な販売量の増加にもかかわらず、ファーウェイはプレミアムスマートフォン市場では、なかなか力を発揮できなかった。実際ファーウェイの2016年第1四半期のスマートフォン出荷量が2,800万台を記録し、前年同期比62%増加したが、プレミアムスマートフォンの出荷割合は、全体の30%台に留まっている。サムスン電子が60%、アップルが90%を超えるプレミアムフォン販売割合を見せているのとは対照的だ。

ファーウェイは、今回のサムスン特許訴訟の結果に関係なく「世界1位のスマートフォン企業のサムスンに特許料を要求するほど、技術力に優れた企業」というイメージの改善効果を得られるという点を狙ったものと分析される。

今回の訴訟のもう一つの目的は、サムスンとの「特許共有」(クロスライセンス)のためのものだという見方もある。サムスン、アップルに続き、世界のスマートフォン3位となったファーウェイが、サムスン、アップルの両社との格差を縮めるためには、技術特許の共有が必要となる。ファーウェイは、アップルをはじめ、クアルコム、エリクソンやノキア等とすでに特許共有契約を結んだが、サムスン電子とはまだ協約を結んでいない。

サムスンを相手取って特許訴訟という強い「カード」を先に出して、特許共有に向けた交渉を有利に進めようとする目的があるというのだ。これは、同日にファーウェイが発表した声明書からも本音が読み取れる。ファーウェイ側は「我々は、業界のプレーヤーらが協力しなければならないと思い、すでに複数の企業とクロスライセンスを結んだ。ファーウェイがサムスンとともに業界をリードすることができることを期待する」と明らかにした。ウィリアム・プラマーファーウェイの副社長も、あるメディアとのインタビューで「我々は、交渉を通じたライセンス関連紛争の解決を強く望む」と話した。

このようなファーウェイの訴訟の意図は別として、中国通信企業の技術力の成長は、単純な脅威のレベルを超え、近いうちに韓国企業を圧倒する勢いだ。すでにファーウェイの特許出願件数は世界1位の水準となっている。世界知的所有権機関(WIPO)によると、ファーウェイは、2013年世界企業別特許出願件数で3位(2,110件)を記録したのに続き、2014年(3,443件)と2015年(3,898件)2年連続1位を記録した。 一方、サムスン電子は、昨年特許出願件数1,683件と4位を記録した。2013年(1,193件)13位、2014年(1381件)11位より順位が着実に上昇しているが、特許出願件数はファーウェイの半分水準だ。

図:サムスン電子と華為の特許出願件数の比較グラフ(出処:世界知的所有権機関(WIPO))

ファーウェイが技術力を急速に向上できたのは、研究開発(R&D)に対する莫大な投資にある。ファーウェイは、昨年R&D投資費用として売上全体の15%に上る91億8,000万ドル(約10兆8,600億ウォン)を投入した。R&D人材も従業人全体(17万人)の47%である8万人に達している。

これに対し、サムスン電子のR&D投資費は、むしろ減少している。昨年、サムスンのR&D投資費は14兆8,488億ウォンで、前年より3%減少した。売上全体に占める割合も7.4%に留まっている。従業員全体に占めるR&D人材の割合は約22%だ。

業界の関係者は「近いうちに5世代移動通信時代が本格的に始まると、サムスンが中国企業にも特許費用を払わなければならない状況が来るかも知れない。人的、物的攻勢により急速に追いかけている中国企業に対応するための対策作りが急務となった」と話した。

パク・セジョン記者 sjpark@dt.co.kr

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195