知的財産ニュース ブレグジット、EU特許統合に悪影響

2016年7月6日
出所: 韓国特許庁

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英国のEU離脱の決定は、欧州の知的財産権の統合にマイナス影響をもたらすものとみられる。

まず、欧州商標デザイン庁(EUIPO)への一度の出願でEU全域で保護を受けられるEU商標・デザイン制度はブレグジットの手続きが完了した以降は英国には適用できなくなる。

そのため、ブレグジット後、英国で新しい商標・デザインの保護を受けるためには、EUとは別途に英国にも出願をしなければならない。従来に登録されたEU商標とデザインについては、英国内権利消滅による混乱を防止するために、英国政府が別途の立法により自国内で保護する方策をつくるという分析があり、英国の後続措置に対する備えが必要となる。

欧州特許庁(EPO)を通じた従来の欧州特許は、EU設立以前に締結された別途の条約に基づいており、EPOは特許審査だけを行い、権利の登録と管理は各国ごとに独立してきるため、ブレグジットによる変化はない。

しかし、EUが意欲的に推進してきた「単一特許(Unitary Patent)」の導入と「統合特許裁判所(Unified Patent Court)」の設立は、ブレグジットによって支障を生じるものとみられる。単一特許は、一度の出願と登録によりEU全域に同一の効力を持つ特許だ。EUは、出願人の費用・負担軽減、特に中小企業の競争力強化に向け、単一特許の導入を進めてきた。

単一特許及び統合特許裁判所関連条約は必須批准国としてドイツ、フランス、英国を規定しており、統合特許裁判所もパリ、ミュンヘン、ロンドンに設置するよう明示している。 英国の必須批准国地位はイタリアが継承するものと予想され、制度の導入が取り消されることはないと考えられる。しかし、必須批准国の変更や統合裁判所所在地移転の決定が英国のEU離脱の手続きが完了してから行われるものとみられ、単一特許の施行は相当期間遅延されかねない。

特許庁のパク・ソンジュン産業財産保護協力局長は「ブレグジットによって単一特許制度による欧州地域の中小企業競争力強化が相当期間遅延されるとみられる。従来登録されたEU商標・デザインを保有した韓国企業は、英国内の権利変動や英国政府の後続措置に関心を持って備えることが必要だ」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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