知的財産ニュース パテントトロールの新ターゲットは「銀行」

2014年10月12日
出所: 電子新聞

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韓国国内銀行の特許出願件数が10年前に比べて10分の1水準に急減し、過去最低となった。モバイル・バンキングなどの情報通信技術(ICT)と融合した「スマート金融3.0時代」が到来したものの、銀行の特許競争力は底をついている。銀行がパテントトロール(NPE)の新しいターゲットになったとの指摘も出ている。

電子新聞と特許情報検索専門企業WIPSがこの10年間(2005年~2014年9月基準)、国内銀行による特許出願現況を分析した結果、今年に入って国内の銀行界で出願した特許はたった2件だった。

銀行界の特許出願件数は2005年の19件から2006年に147件、2007年に394件、2008年に352件と急激な増加を見せた。オフライン基盤のネットバンキングのユーザが増えたことで、特許出願競争が起こったためだ。

その反面、2010年と2011年の出願件数はそれぞれ147件、102件に半減し、2012年には311件と回復傾向を見せたものの、2013年に22件、2014年に2件となり、事実上「開店休業」状態であることが明らかになった。

専門家は、未曾有の顧客情報漏れ事故や金融当局による規制強化、支配構造のリスクなどを受けて、銀行が特許競争力の確保を手放したと見ている。

問題は、海外では既に金融界を対象にした特許紛争が始まったということだ。ICTを融合した新金融ビジネスが本格的に登場したのも紛争の可能性を高めている。製造会社と流通業者、通信キャリアなど、非金融会社が金融市場に大掛かりに参入している状況の中で、特許権も紛争に対応するシステムも備えていないのなら、特許訴訟のターゲットになりかねないという懸念の声が出ている。

都市銀行の関係者は、「韓国では、ある銀行が商品を開発すると、競合会社がコピーを繰り返しても黙認する構造となっている。最近、特許侵害の可能性を言及しつつ、交渉を準備している海外のNPEがあるとの噂がある。」と話した。

その中でもIT基盤の電子金融特許訴訟が世界的に急増している。韓国特許庁によると、電子金融に関する特許訴訟は、2002年の42件から2013年に248件と、約6倍増加した。さらに、フィンテク(Fintech)企業が本格的に金融市場に参入してきたことで、既存の銀行との特許紛争が予想されている。

専門家は、国内銀行の特許競争力を高めるには、徹底した補償システムの導入と保守的な組織の改革が必要だと指摘している。ある銀行の特許担当者は「銀行はIT企業と異なって特許を管理する専従組織がない上、特許を出願しても補償がない。知的財産権の認識を拡散させ、役職員の特許権を認める形で組織再編と投資に取り組まなければならない。」とコメントした。

最近10年間の銀行による特許出願の現況(単位:件)

区分

件数

2005年

19

2006年

147

2007年

394

2008年

352

2009年

330

2010年

147

2011年

102

2012年

311

2013年

22

2014年9月

2

出所:電子新聞‐WIPS共同調査

キル・ジェシク記者

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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