知的財産ニュース 特許庁、IP行政の韓流を本格化

2014年9月30日
出所: 韓国特許庁

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韓国特許庁は、9月29日、第54回世界知識所有権機構(WIPO)総会会期中の主な活動内容と成果について発表した。

9月22日、スイス・ジュネーブで開かれたWIPO総会には、世界187カ国のWIPO加盟国が参加し、WIPOの1年間の運営成果を評価し、今後の業務推進のあり方を決定した。

会期中、韓国特許庁は、WIPO総会の基調演説などの公式スケジュールに加え、計16カ国との二国間会議を行い、両国間の協力事項を含めた様々なIP懸案について話し合った。
特に、二国間会議をIP行政の韓流を拡散させるためのセールス外交の場として活用し、アラブ首長国連邦(UAE)に特許情報システムを輸出するほか、サウジアラビアにPCT国際調査サービスを提供することに合意するなどの成果を上げた。

今回の発表には、WIPO総会での成果とともに特許庁で進めているIP国際協力における4大重要課題の最近の成果および今後の推進計画が盛り込まれている。

世界中の注目を浴びた韓国のIP共有活動

キム・ヨンミン特許庁長は、9月22日、スイス・ジュネーブで開かれたWIPO総会の基調演説を通じて、IPを基にした創造経済の実現戦略など、特許庁の主なIP政策の動向を紹介するとともにIP分野の先進国‐途上国間の開発格差(IP divide)を解消するための国際社会の取り組みを強調した。

特に、今回のWIPO総会の付帯行事として韓国信託基金10周年記念行事を主宰し、WIPO事務総長(Mr.Francis Gurry)など主な関係者の参加の下、途上国を対象にIP共有を実行してきたWIPO韓国信託基金事業の10年間の成果を国際社会に広報した。
韓国特許庁は、2004年から毎年、韓国信託基金に出捐し、適正技術の支援、教育コンテンツの開発・普及など、途上国の暮らしの質を改善し、IP力量の強化に貢献してきた。
同行事には、展示会も設けられ、これまで開発した適正技術、生徒向けの創意発明教材および子ども向けのIP教育教材などを展示し、WIPO総会に参加した各国代表団の注目を集めた。

キム特許庁長は、「WIPO韓国信託基金を活用してこれまで推進してきた様々な活動の成果を基に、IP先進5カ国の一員としてIP分野における韓国の経験を共有する事業を一層多様に推進する予定」だと述べた。

セールス外交を通じて花咲くIP行政の韓流の拡散

韓国の特許情報システムをUAEへ輸出する基盤を構築

キム特許庁長は、9月21日、UAE・ドバイで開かれた「韓‐UAE間IP分野における高官級会合」を通じてUAEの特許情報システム構築に関するMOUを締結し、今後、韓国企業により推進される予定であるUAE特許庁のIP情報化システム作りにおいて、特許庁の専門家を派遣するなどの技術諮問を担うことに合意した。

写真:韓‐UAE間IP分野における高官級会合の様子

今回のMOU締結を通じて、UAE政府が特許審査代行とともに情報化システム構築のパートナーとして韓国を選択し、UAEが進めている特許庁の審査基盤作りの事業に韓国が中核的な役割を担うことになった。
※UAE特許審査代行:特許庁は、今年6月から韓国特許審査官を現地へ派遣するとともに特許庁傘下の特許情報振興センターを活用したUAE特許出願の実体審査を代行することで韓国の特許審査サービスをUAEに有料で輸出している。

今回の事業を通じてUAE特許庁が韓国の特許情報システムであるKIPOnetを使用することになれば、ODAの形で進められていた従来の取り組みとは異なり、受取国の政府が全額を負担する初めてのKIPOnet輸出ケースだという点で大きな意味がある。
今回のUAE特許情報システムの輸出は、サウジアラビア、バーレーンなど中東諸国に韓国の特許情報システムの優秀性をアピールするきっかけとなると期待されている。

PCT国際調査サービスの輸出、中東に拡大

一方、キム特許庁長は、9月23日、スイス・ジュネーブにおいてサウジアラビア特許庁長と二国間会議を開き、サウジアラビアの出願人が韓国特許庁のPCT国際調査サービスを活用することに合意し、中東地域におけるPCT審査サービスの輸出への一歩を踏み出した。
今回の合意は、PCT国際調査サービス市場に複数国が参入を試みており、従来の19の国際調査機関も業務の拡大を図るなど、PCT国際調査の誘致争いが激化する中での成果であるだけに、さらに意味がある。
特許庁は、様々な言語による特許文献の検索、高級審査人材などのメリットを活用してPCT国際調査の対象国を拡大していく計画だ。

韓国特許庁をPCT国際調査機関として指定した国(14カ国)

※特許庁は、外国の出願人を対象に年間約2,000万ドルのPCT国際調査サービスを輸出しており、300人以上の理工系高級人材の雇用を創出している。

キム特許庁長は、「今回、韓国の特許情報システムのUAE進出のほか、サウジアラビアにPCT国際調査サービスを輸出することは、中東諸国を対象に韓国のIP行政サービスを輸出することで、外貨を確保するきっかけとなる。これを基にその他中東諸国を対象とするIP行政の韓流を拡散させ、セールス外交を強化していきたい」と述べた。

海外IP情報へのアクセスがより容易に

特許庁、共通特許分類(CPC)の導入を本格化

特許庁は、2015年1月から共通特許分類であるCPC(Cooperative Patent Classificiation)を全面導入することにし、9月25日、スイス・ジュネーブで米特許庁と高官級会合を開催して、CPC主導国である米国と従来の特許分類に関する協力事業を拡大・推進することに合意した。
今回の合意を通じて、特許庁は優秀な分類システムの導入を円滑に進められる基盤を作った。
また、昨年11月から試行的に利用しているCPCを全ての分野に拡大したことで、審査の専門性および主な国際特許文献へのアクセシビリティが一層向上すると期待されている。

欧州のデザイン検索システム、韓国語サービスを開始

特許庁は、9月24日、スイス・ジュネーブで欧州共同体商標意匠庁(OHIM)とデザインデータの交換に関するMOUを締結し、今年12月まで欧州のデザイン検索システム「Design View」において韓国語サービスを開始することにした。
これを通じて韓国のユーザーが欧州各国のデザイン情報を容易に検索できるようになったほか、その情報を活用した付加価値の創出も期待されている。

また、ミャンマー、インド、ブラジルなどの8カ国と会合を開き、ミャンマーとIP協力に関するMOUを締結するなど、新興国・途上国との協力を拡大した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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