知的財産ニュース グローバル特許戦争「中小企業が餌食に」

2013年3月4日
出所: 電子新聞

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韓国の電子・IT産業界は、今年には「グローバル特許紛争」がさらに激しくなるという見通しを示した。特許合戦が国内企業のイメージ向上など、前向きな結果につながるという予測が多少多かった。しかし、訴訟のコストが製品価格の引き下げなどに響き、中小の電子・IT企業では、競争力が大きく弱まりかねないという指摘も出た。

産業全体にはプラス

韓国電子情報通信産業振興会(KEA)の特許支援センターが韓国の電子・IT企業386か所を対象にアンケート調査した結果、今年からグローバル特許紛争が「さらに激しくなる」という答えが62%に達した。自社の技術権利を保護する一方、競合会社の参入を防ぐ傾向が強まると予想している。一方、業界は、スマートフォンを中心としたグローバル特許紛争が電子・IT産業に一部プラスの影響を与えるという意見も提示した。韓国企業の47.4%が産業に「プラスな影響」を与えると答え、「マイナス(43.2%)」より多少多かった。

その理由は、韓国企業のブランド地位が向上するためだ。昨年、サムスンとアップルを筆頭に、グローバル特許合戦が起きた場合、世界市場におけるブランドの認知度が「高まる」と考えている企業は48.7%と最も多かった。「変わらない」と「悪くなる」という答えはそれぞれ33.1%と18.2%だ。特許支援センターは、「国内外のメディアに露出度が高まり、グローバル企業と肩を並べて競争しようとする韓国企業と韓国勢への認識、KOREAブランドのイメージが向上してプラスに働くだろう。デザインや技術などの製品競争が激しくなり、企業の競争力が高まってそれが需要増加につながり、市場シェアが拡大すると考えている企業が多い」と説明した。

紛争のコストと売上の減少は避けられない

プラスでもマイナスでも、特許係争が自社と関係があると答えた企業が選んだ第1の影響は、「売上の減少」(25.8%)だ。売上高が増加すると答えた企業(24.2%)より多少多い。特許合戦が産業全体には良い影響を与えても、自社の被害は別も問題だという認識だ。売上の減少は、特に中小企業で顕著になると予想される。売上高が300億ウォンから1000億ウォンの中小企業43.5%が売り上げの減少を懸念している。売上高1兆ウォン以上の大手企業18.5%のみが売上高減少を予想しているのとは相反する結果だ。

紛争コストも無視できない。特許紛争の激化により、コストが増加すると予想する企業(45.5%)が減少すると答えた企業(4.5%)より10倍も多い。センターは、「動向調査と技術・市場モニタリングのために情報収集のコストが増加するなど、これから発生し得る紛争に備えた支出増加が主な原因だ。売上の規模が大きいほど、コストが上昇するとみていた」と説明した。

特許権の保護が強化され、ライセンス費用(ロイヤルティ)が高まるのも懸念された。ロイヤルティが最近の特許紛争に大きな影響を受けることはなくても、上昇を懸念する企業が27.1%で、減少するという答え(2.5%)より高い。グローバル特許訴訟以降、特許で利益を創出しようとする特許管理会社(NPE)と特許プールが増え、ライセンサーがロイヤルティの引き上げを求める可能性があるというのが専門家の予測だ。

中小部品メーカーのジレンマ

電子・IT企業の35%が自社でも特許紛争が発生する可能性があると答えた。業界平均の2倍水準だ。2009年の調査によると、電子・IT企業の特許紛争発生率は16.1%だ。電子部品業界では、40%が自社も特許紛争に巻き込まれる可能性があると答えた。昨年のKEA調査では、電子・IT産業の半分以上(60%)が電子部品・家電、電子機器部品関連企業だと調査された。大半の産業界が紛争の発生を懸念しているといえる。グローバル特許合戦が産業全体にはプラスに影響しても、個別の部品メーカーにはマイナスの影響を与える可能性が大きいと予想した。

理由として、韓国勢の部品採用率が低下しかねないということだ。特許紛争の当事者であるアップルなど、海外の最終製品企業が韓国勢の部品を採用しないと、その被害は全て部品メーカーが被る。センターは、「最終製品企業同士で特許合戦を始めた時、巨額の訴訟費用の補てん努力が部品の単価引き下げにつながる可能性もある」と説明した。結局、訴訟により、商品の発売が遅れ、訴訟関連の費用が高まって企業経営のみならず、産業全体に悪影響を及ぼすという意味だ。

「中小の電子・IT業界から備えるべき」

スマートフォンなどの最終製品の大手企業は「グローバル特許合戦」が中心だが、その影響は中小企業をはじめとする産業界全体に及ぶ。昨年からサムスンとアップルが製造したスマートフォンが特許合戦の焦点になっているが、影響は「サプライチェーン」全体に及ぶ。KEAは、昨年、「スマートフォンに適用される約500種類の部品、UI/UX、アプリケーションなどのソフトウェア分野まで考えると、サプライチェーンは数千にのぼる」と発表した。

電子・IT産業における中小企業の割合は98.3%だ。中小電子・IT企業は、特許関連の人材、情報、資金難などによって紛争対応力が非常に弱い。KEAが発表した中小電子・IT企業の特許関連実態調査によると、知的財産権の担当者が一人もいない企業が40%だ。特許支援センターは、「技術開発の前に海外市場や競合会社の特許を調査しない企業がほとんど(78%)だ。知財管理コストとして年間1000万ウォンも投資できない企業も半分以上(62%)だ」と述べた。

イム・ホギセンター長は、「10年間米国の特許を分析し、特許紛争予測モデルを開発して紛争可能性の高い技術を予測し、対応戦略を確立・支援するサービスを今年上半期から始める」と紹介した。KEA特許支援センターは、特許紛争が発生したか、発生が予想される品目別特許協議会と紛争予測システムを用いた予測情報の提供など、中小の電子・IT企業の特許紛争対応力を強化し、事前の備えを支援している。

クォン・ドンジュン記者

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