知的財産ニュース 自治体、知的財産都市の育成に重点取組み

2013年1月15日
出所: 電子新聞

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21世紀は知識基盤社会だ。特許や著作権など、高付加価値を創出する無形資産が中心となる知的財産が高く評価される時代が到来した。

現在進行中のサムスン電子とアップルの世界的な特許係争は、示唆するところが多い。その結果によっては、敗訴する企業は桁外れの巨額の対価支払義務を負う。製品を生産売買して得た利益よりも高値の対価を支払わなければならなくなる。

知的財産の保護と育成は、企業だけでなく、国にとっても当面の懸案とされている。

韓国政府は昨年、「知的財産大国の元年」を掲げ、国レベルの知的財産育成政策を発表した。自治体も積極的に取り組んでいる。知的財産都市の育成がその目標だ。知的財産の創出から保護、活用に至る多角的な対策を講じており、一部の自治体は、知的財産政策の専門部署を設ける案も検討している。

ここで、6大広域市の知的財産育成政策案をまとめた。

釜山市:知的財産の先進都市を実現

釜山市は、今年に46億ウォンの予算を投じ、知的財産の活性化事業を推進する。地域内における製造業の割合が徐々に増加しているなか、知的財産中心の産業育成戦略を推進し、グローバル競争に対応して高付加価値を生む先進経済に飛躍する足場を固めるためだ。

釜山市は、「知的財産先進都市の実現」をビジョンとして掲げている。2010年から5カ年計画を立てて推進している知的財産活性化事業は、知的財産の創出・保護・活用・基盤及び新知的財産分野に軸足を置いている。

今年は、他の地域に比べて比較的に割合の低い技術ベンチャー企業及び付設の研究所、研究機関などの設立を集中的に支援するほか、先端産業の知的財産権の創出に重点を置く計画だ。

主な事業として、有望な未来の知識基盤型の中小企業を集中支援、産官学共同研究の活性化事業、医療・バイオ産業の技術開発を支援、造船海洋融合技術開発を支援、グローバルブランド育成事業などに取り組む。釜山テクノパークにある知識財産センターを中心に事業を推進する。

大邱市:知的財産専門組織を新設

大邱市は、地域企業の知的財産を体系的に支援することを目的に、今月中に大邱知的財産基本計画を確定し発表する。基本計画には、地域産業の実情に即した知的財産関連の内容を盛り込む計画だ。

大邱市は、特に、自動車・モバイル分野で内需よりは輸出の割合が高く、グローバル知的財産紛争に備えるべきだという指摘が持続的に提起されてきた。大邱市は、一貫した知的財産政策の推進に向け、現在、新成長政策官の傘下にある知的財産の担当を今後、知的財産系に拡大改編する案を検討中だ。また、大邱商工会議所内で大邱知識財産センターが運営中の大邱知識財産運営委員会も拡大運営する。

大邱市のクァク・ヨンギル新成長政策官は、「各企業の支援期間に単位事業別に補助金を給付しているため、知的財産関連の予算を別途策定してはいない。しかし、知的財産の保護が非常に重要な時期であるだけに、それを体系的に支援できるよう、組織の改編と事業費の増額を前向きに検討している。」と述べた。

仁川市:知的財産スター企業を集中的に育成

仁川市は、「知的財産権中心都市」の育成に向け、今年に33億8000万ウォンを投じる。技術競争力を兼ね備えた強い知的財産権を保有している強小企業を知的財産スター企業として集中的に育成するため、「知財スター企業」を昨年の10社から13社に増やす。

特許出願とデザイン、ブランド権利化コンサルタントの件数も昨年の350件から今年400件に拡大する。優秀な知的財産権を持っている企業が技術を担保に融資を受けられるようにして特許審判訴訟の費用を支援する。

知的財産の重要性を広くアピールするキャンペーンも推進する。「経済首都の仁川、知的財産首都が先です」など、知的財産の重要性を呼び掛けるスローガンを月ごとに制作し、PR活動を展開していく。横断幕のPRとメディアへの寄稿活動をはじめ、企業を対象に広報パンフレットを配布し、公務員を対象に教育を行う。

基礎自治体を対象にした知的財産事業も強化する。仁川地域10ヵ所の群・区全てが知的財産事業に参加できるよう、執行部及び議会に知的財産の重要性の呼び掛けに本腰で取り組む方針だ。また、昨年までは事業に参加していない中区と南区も今年、それぞれ3000万ウォンの知的財産事業費を編成した。

大田市:知識基盤型の都市にシフト

大田市は、「知的財産特化都市、大田」をビジョンとして掲げ、知的財産基本計画を確定し、今年から本格推進する。2016年までに計1525億ウォンを投じ、大田市を知識基盤型都市にシフトさせていくという戦略だ。

こうした動きは、大田市がこれまで大徳研究クラスターなどを基盤に韓国最高水準の知的財産創出の能力を保有しているにもかかわらず、知的財産の特化に向けた戦略的な活動が不十分だったと判断したためだ。

基本計画は、知的財産の創出・保護・活用・基盤、及新知的財産5大政策方向と11大戦略目標、16本の成果目標、及び48件の推進課題の体系に構成された。

2016年までに知的財産の創出拡大及び創出環境の構築などを通じて産業財産権の出願率の全国1位、出願件数約1万8000件の達成を目標としている。

今年には、脆弱だと指摘されてきた知的財産創出分野を強化するプログラムの一環として4大戦略目標と33本の事業を施行する。

主な事業として、コンテンツ・ブランド・デザイン、及びソフトウェアの創出競争力の強化事業、創造型・開放型知的財産創出の環境構築、知的財産保護水準の先進化事業、知的財産の労力、及び人材育成事業、生物資源の知的財産事業化支援事業などを推進する。

光州市:特許情報のコンサルタントサービス

光州市は、光州知識財産センターと共同で地域企業の知的財産を支援するため、特許情報総合コンサルタント事業を行う。今年、知財スター企業の支援事業(6億ウォン)をはじめ、特許総合支援(2億ウォン)、ブランド支援(2億ウォン)、デザイン支援(2億ウォン)に計12億ウォンの事業費を支援する。

2008年から開始された特許情報総合コンサルタント事業は、地域中小企業に特許と実用新案の総合コンサルタントを提供し、特許アイデアから技術開発の権利化及び事業化に至るまで、全ての段階を支援する特許関連のワンストップ総合サービスだ。

主な事業は、特許コンサルタントと専門家プールを活用した特許コンサルタント支援、先行技術調査・国内外の特許出願費用などの特許権利化支援、特許技術事業化の促進に向けたシミュレーション・広報物の制作を支援、特許権利の分析、オーダーメイド型コンサルタントの支援などだ。

中小企業だけでなく、一般人向けの特許情報検索支援、知的財産権に関する苦情相談支援など、地域の特許関連の苦情も総合的に処理する。

蔚山市:知的財産の強小企業を育成

蔚山市は、昨年、「知的財産基盤の産業首都、蔚山の未来価値の創出」をビジョンとした591億ウォン規模の「蔚山市の知的財産推進計画」を策定した。7つの戦略目標と13の成果目標、49の管理課題を推進している。

主な課題として、国内外の特許、商標、デザイン出願費用の支援(特許出願2200件を目標)、企業付設の研究所設立を支援(6件)、中小ベンチャー企業のブランドデザイン開発及び権利化を支援(10件)、蔚山ソフトウェア支援センター運営支援などの事業を推進している。

これと関連し、ドンソハイテック、PR、クギルイントート、アティス、ネオエン、トンシン産業など、24の会社を蔚山グローバル知財スター企業として指定し、知的財産強小企業として育成している。

技術取引促進ネットワーク事業(技術移転25件)、蔚山技術いちばの開催(2回)、優秀な特許技術事業化支援も実施中だ。

蔚山市は、地域の知的財産の振興を図るため、蔚山知識センターなどの政府機関との協力体制を強化し、様々な知的財産事業を選定、推進していく計画だ。

シン・ソンミ記者

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