知的財産ニュース 政府系研究機関 予算不足で知財権放棄が続出

2013年7月7日
出所: 電子新聞

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確保した特許等の知的財産権を放棄する政府系研究機関が続出している。増加した特許の維持と管理に伴うコストを予算がバックアップできていないためだ。技術事業化に特許がコアなものとなっているなか、維持と管理にかかる予算が不足し、国の研究資産が消えてしまいかねないという懸念の声が高まっている。

7日の主な政府系研究機関によると、特許出願の急増にともない、特許の出願・登録・維持料の納付などの特許管理コストも急速に膨らんだが、管理予算は、間接費項目に編成され、使用が容易では無いという。特許管理予算不足が深刻で、主な研究機関が知財権の創出と保護に頭を抱えている。

韓国電子通信研究院の知的財産経営室のシン・ジョンヒョク室長は、「特許にかかるコストが間接費の予算に縛られ、弾力的な運用ができない。韓国だけでなく、海外への特許出願も難しい状況だ」と説明した。

政府系研究機関の中で最も多い特許を確保したのは、韓国電子通信研究所(ETRI)だ。 ETRIは、米国の特許情報コンサルティング会社「IPIQ」が施行した「米国における特許総合評価」で2年連続1位となった。 しかし、特許管理が難しく、登録をあきらめた特許が少なくない。 韓国特許庁に登録されている2万6947件の中で、消滅した特許は37%の1万36件だ。 シン室長は、「特許管理費が不足しており、新しい特許を出願するために、実態調査を行って価値が落ちている特許はあきらめている。維持料などの問題ですべての特許を維持することは、現実的に無理な話だ」と話した。

他の政府系研究機関も状況は同じだ。昨年末、基礎技術・産業技術研究会に所属している28の政府系研究機関を対象に韓国科学技術企画評価院(KISTEP)が質問調査を行った結果、年間の研究費における特許支出経費の適切な比率は、2.6%程度だという答えが多くなった。 しかし、実際は1.3%に過ぎず、今より2倍以上の予算を確保しなければならない。

こうした政府系研究機関の特許維持料不足は、予算支出が間接費に縛られ、弾力的な運用が難しくなっているのが原因だ。 2002年からの国家研究開発(R&D)事業特許維持料は、科学文化活動費、技術創業出演・出資金と同様に、成果活用支援費項目に間接費として策定されている。これまでは、直接経費に含まれていたが、最近、特許維持料が研究随行の以後に発生するとして、基準が変わった。 KISTEPのイ・ギル室長は、「知財の出願・登録費用は、直接費を内包しているが、実際の運用は間接費として編成されている。間接費の執行により、研究支援の人件費・研究支援機関の運営費に押されて、経費は不足してしまう」と説明した。

特許管理経費を弾力的に策定するため、技術使用料の収益を支出経費に転換できるが、それほど簡単な話ではない。 技術収入が生じると、職務発明の名目で研究者に50%が支給される。 残りの50%から科学技術者共済会に9%を納付すれば、41%が残る。 その7割(ETRI)は、R&Dに再投資されるほか、技術移転拡大の貢献者、機関運営の支援費などに使うと、運用できる予算がないという話だ。

KISTEPは、「大学・政府系研究機関の特許出願が国内外において大きく増加し、経費もさらに必要となったが、創出・管理費用は、相変らず不足している状況だ。間接費の中に特許経費を研究費に比べた一定の比率を編成するか、R&D税額控除の対象にするなどの改善策、ガイドラインなどが検討されなければならないだろう」と述べた。

機関

費用

出願

登録

維持

合計

韓国基礎科学支援研究院所属の政府系研究機関10ヵ所

5,916

1,475

1,184

8,585

産業技術研究会所属の政府系研究機関14か所

13,750

5,870

3,510

23,144

合計

19,666

7,345

4,694

72,551

(単位:100万ウォン)

クォン・ドンジュン記者

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