知的財産ニュース 発明振興法の改正を分析

2013年8月5日
出所: 電子新聞

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これまで、研究開発(R&D)人材や従業員などの発明者の権利を強化する職務発明補償制度を求める声が多くあった。保障システムの規定を設けることに、発明家の立場を反映すべきだということだ。6月末の発明振興法の改正案が国会の本会議で議決された。改正法が適用されれば、職務発明のシステムは、米国と類似となる。しかし、インテルなど米国に本社を置いている企業も職務発明補償を人事評価などにのみ反映していることを踏まえ、限界がはっきりしている。逆に企業が紛争を回避するための端緒を与えたという指摘もある。発明を奨励し、知的財産の創出を通じて産業革新をうながすため、現実的な職務発明の保障がなされるべきだという声が出ている。

改正法は、企業が職務発明の特許を取得するためには、発明した従業員と協議し、継承規定を設けるべきだというのが主な内容だ。会社内に職務発明審議委員会を設置し、従業員が参加しないと補償手続きは認められない。ユルチョンのユ・ヨンイル弁護士は、「企業は、職務発明補償に対する産業トレンドの変化を認識すべきだ。来年1月の改正案施行前に、企業内の職務発明プロセスをすべて見直さなければならないだろう」と説明した。

これまで、職務発明の保障がきちんと行われず、紛争にまで拡大したとき、保障の規模などは、大半は裁判所の裁量によって決定されていた。

ジェナ特許事務所のナ・ソンゴン弁理士は、「改正発明振興法が施行され、労使の合意を通じて保障が行われるだろう。保障価値判断の基準を設定するとき、従業員の意見が強く反映される可能性がある」と分析した。

改正発明振興法の限界を指摘する声もある。労働組合がきちんと機能をしている企業では、職務発明審議委員会の運営が容易となる。しかし、大半がエンジニアーで構成される先端製品、ソフトウェアの大手と中小・ベンチャ企業は、労働組合も名ばかりなところが多い。逆に企業の防御手段に転落する可能性もある。補償規定は、労使の合意に基づいて導き出されたというのが法的証拠として利用される。職務発明審議委員会で設けた規定を手続きとしてすべて遵守すれば、それによる補償額は、正当な補償金としてみなされるため、紛争が発生したとき、使用者(企業)は、責任を回避できる。

職務発明補償が現実化するためには、企業の認識の転換が先行するべきだという指摘だ。ユ弁護士は、「改正法の趣旨は、職務発明家の権利を保護して産業の発展に貢献するということだ。正当かつ合理的な保障システムが確立され、企業革新をうながせる方向に見直されるべきだ」と述べた。

クォン・ドンジュン記者

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