知的財産ニュース 「世界通用特許」迅速な権利化が強み

2012年3月1日
出所: デジタルタイムズ

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世界で通用する特許を作り出すのは、すべての発明家の夢だ。自身が発明した特許が韓国はもちろん米国、日本、ヨーロッパ、中国など世界全体で同一に特許として優遇され、権利を行使して保護されることを願っている。

しかし、現実的には容易ではない。各国の特許審査システムが互いに異なり、すべての国で一つの発明に対して同一の審査結果を出していないからだ。各国特許庁は、グローバル協力を通じてこれを解決するために様々な方式で国際的議論を進めてきた。

このようなグローバル協力議論を通じて誕生したのが「特許審査ハイウェイ(PPH・ Patent Prosecution Highway)制度」だ。

PPH制度は、両国に特許が共通で出願された場合、先に特許が出願された国で特許が登録されれば、相手国では簡便な手続きで速かに該当の特許を優先的に審査する制度をいう。

例えば、PPH制度を施行しているA国とB国に出願人が同一の特許をすべて出願した場合、A国でその特許が可能だと判断すれば、B国はA国の審査結果を活用して該当の特許を他の出願に比べ速かに審査する。

現在、韓国は10ヵ国とPPH制度を施行している。2007年に日本をはじめ米国(2008年)、デンマーク(2009年3月)、イギリス(2009年10月)、カナダ(2009年10月)、ロシア(2009年11月)、フィンランド(2010年1月)、ドイツ(2010年7月)、スペイン(2011年7月)、中国(2012年3月)等と特許審査ハイウェイを施行し、徐々に特許領域を拡大している。特にこれら10ヵ国は、世界全体の特許出願の70%以上を占める国々で、PPH制度の施行を土台に国際協力体系を構築している。

PPH制度の施行を順次拡大している理由は、他の出願に比べ早い審査を通じて迅速な権利行使ができるというメリットがあるためだ。実際に、米国特許庁に一般出願をする場合、審査結果を受け取るまでかかる時間は、2010年を基準として通常33.5ヵ月程度必要とされたが、PPH制度による出願は2011年を基準として11.62ヵ月あれば可能で、約22ヵ月時間を短縮することができる。それだけ、より迅速に特許を権利化できるということだ。

これとともに、両国に出願された特許の審査結果の活用を通した各国審査官の審査業務の負担を解消でき、また外国の特許庁と特許制度協力を図って、審査情報および審査結果を相互交流しながら国際的な流れを先導することができる。

PPH制度を活用して米国および日本に各々国際特許を活発に出願している代表的な国内企業はLG電子、三星電子、LG化学、三星SDI、LS電線などだ。LG電子と東レセハン、LS電線は日本にIT分野関連の特許を最も多く出願しており、LG電子とLG化学、三星電子、三星SDIは米国にIT分野関連の特許を集中的に出願している。

去る1日から、韓国は最多特許出願国中の一つである中国とPPH制度を施行している。2010年中国特許庁の外国人特許出願件数は9万8000件余りで、このうち韓国の出願は7200件に達するなど、国内企業が中国で特許を確保するための努力が活発になされている。

中国とのPPH制度の施行で、国内企業は中国で特許を獲得するのに必要とされる期間を大幅に短縮することができるようになる。中国特許庁の特許審査処理期間は24ヵ月程度必要とすることが知られている。したがって、中国で特許出願のために審査を受けようとする国内企業は、相対的に早く特許審査を受けることができる韓国特許庁(平均16ヵ月)の特許審査を活用した後中国に特許を出願すれば、審査に必要とする期間を短縮することができる。

合わせて、グリーン技術と専門機関の先行技術調査の提出など、国内の優先審査制度を通じて迅速に特許決定を受けた場合、これよりはるかに短い期間で中国での審査手続きを行なうことができると思われる。

金・ヨンホ特許庁電気電子審査局長は「PPH制度を通した審査結果の共有は、技術とアイデアで武装した革新企業が、グローバルビジネスの舞台で海外の知的財産権戦略を駆使するのに非常に有効だ」とし、「今後、国内企業および発明家が特許を多く出願する国を対象に、PPH制度の施行を積極的に拡大していく計画だ」と話した。

また、「PPH制度が決して相手側の審査結果をそのまま受け入れるのではなく、むしろ相手側の審査結果に対する牽制はもちろん、特許庁間の激しい審査品質競争を意味するものでもあるという点も忘れてはならない」と付け加えた。

李・ジュンギ記者

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