知的財産ニュース 特許庁初の特許生物資源データベースを構築

2012年10月26日
出所: 韓国特許庁

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名古屋議定書の高波を乗り越えて

韓国特許庁は、名古屋議定書の発効に備え、世界初の特許生物資源データベースを構築した。

名古屋議定書とは、他国の生物資源を利用する際に金銭の支払いなどを義務化した国際条約であり、2010年10月、名古屋で妥結され発効を控えている。議定書が発効されれば、取得及び使用を行う際には生物資源の保有国から事前承認を受けなければならず、その生物資源を利用することで発生する利益を相互合意した条件により分配することになる。

名古屋議定書の協定事務局は、世界の生物資源の価値を700兆ウォンと推定している。これまではただで利用していたのがこれからは巨大な経済的な枠になる。

名古屋議定書に有効に対応するためには、商業化とともに、韓国企業が利用している外国の生物資源、外国人が利用している韓国の生物資源に関する特許情報など、身近な特許生物資源の現状を把握することが重要だ。

韓国特許庁は、こうした認識のもと、今年の3月から「生物資源特許情報の分析及び活用策に関する研究」をスタートさせ、10月に特許生物資源データベース資料の構築を完了した。韓国特許庁が構築したデータベースは、最近の2年半間公開された特許のなかから植物、微生物、動物、ウィルス、昆虫などの生命資源に関する7,973件の特許を選定し、その内容を分析・加工した。

データベースは、生物資源の具体的な種類と用途、入手ルート、関連特許の内容などが含まれている。名古屋議定書に備え、生物資源の原産地も把握して収録した。

分析の結果によると、全体のなかで医薬品・食品・化粧品が約8割を占めていた。これは、韓国の生命工学産業で占める割合と一致する。最も多く使用されている生物資源は、植物(69%)と微生物(24%)で、動物、ウィルス、昆虫などの場合は、活用件数が低いことが分かった。一方、生物資源を利用した特許のうち、外国人による特許は821件で、約1割を占めている。

データベースに収録された3587種の生物資源のうち、韓国でしか分布していない固有種は、10種類にすぎず、全てが植物だ。これは、韓国が生物資源の保有国ではなく、利用国であることを示す。

内国人と外国人に人気のある生物資源が異なる点も興味深い。内国人に人気がある生物資源は、高麗人参、カンゾウ(甘草)、茶の木、豆、トウキ、クワの順となり、主に天然の医薬材料であった一方、外国では、茶の木、豆、オリーブ、ゴマ、葡萄、高麗人参だ。

生物資源の原産地についての認識の見直しの必要性も浮き彫りになった。9.2%である735件の生物資源の由来を表示したが、割合が低いのは、生物資源の由来に関する情報が足りないか、脱落したからだと分析されている。各種の分析結果を含めた今回のデータベースは、整備事業を経て来年の初めから提供する予定だ。

今回に構築されたデータベースは、企業が生物資源の検索に費やすコストや時間を削減でき、名古屋議定書の発効以降に備えた基礎資料として活用できると期待されている。

資料:特許生物資源のデータベースの概要

推進の背景

  • 生物資源の利用及び活用度を向上させるための基礎資料として活用
  • 生物資源の特許情報の分析・提供を通じて韓国のバイオ・製薬会社の競争力を向上

データベースの内容

  • 世界初の特許生物資源データベース
    ※出願番号、生物資源の分類、起源、形態、原産地の検索可
  • 国内の生物資源の特許出願現状を把握
    • 2010.1.1~2012.4.6まで公開された特許のうち、生物資源関連の分類コードに当たる22,229件を分析
      ※A01、A21、A23、A61、C07、C08、C12、C13
      ※未来の成長性を反映して化粧品の分野などを集中的に分析
  • 名古屋議定書の発効時に及ぶ影響を分析
    • 国内出願のうち、国内生物資源及び国外の生物資源の利用現状を把握
    • 国内出願のうち、原産地の表示率の現状を把握

主要な分析結果

  • 分析の対象のなかで、生物資源を利用した特許は7,973(36.9%)件であり、そのうち生物資源の出処が表示されたのは735件(9.2%)であり、外国人出願は、821件(10.3%)
  • 最も多く使用された韓国の生物資源
    • 内国人は高麗人参を、外国人は茶の木を最も多く使用
  • 生物資源の原産地の分布(最多出願人のアモーレファシピック(株)の場合)
    • 国内外(998件、69.4%)、国内(18件、1.3%)、海外(59件、4.1%)、未確認(364件、25.3%)

図:特許生物資源の分野別の割合グラフ、特許生物資源の出願人別の割合グラフ

期待効果及び活用策

  • 有効な特許生物資源の検索に費やされる費用及び時間の削減を図る
  • 外国人の国内生物資源の利用現状のモニタリングが可能

今後の推進計画

  • 1993年(生物多様性協約の発効)からの出願にまで対象を拡大
  • 生物資源の特許技術動向及び変化の推移の分析など、派生の情報を提供し、国内企業の技術開発戦略の確定及び事業の方向設定を支援

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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