知的財産ニュース 零細業者を商標権の濫用から守るための商標法の改正推進

2012年7月2日
出所: 韓国特許庁HP

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商標の公正な使用環境の確立に向けた商標法の改定立法予告

韓国特許庁(庁長 金ホウォン)は、商標ブローカーによる商標制度を悪用した悪質な商標権侵害紛争に飲食店や美容室などを運営している零細業者が巻き込まれないように保護する一方、商標権者の営業上の信用を不正に利用する目的により、他人が商標を登録した後、それを商号として使用する不正行為の防止など、商標使用の公正な秩序を確立するため商標法を改正する。

また、出願者の商標権取得期間を短縮するため、商標の不使用による取消審判を見直すと共に、商標出願者が意見書の提出期間を順守できなかった場合にも権利救済が受けられるよう、手続の継続制度を新設するなどの商標法改正も行なわれる。

既存の店舗名に類似している商標を勝手に商標登録して、商標権が侵害されたと警告状を送って和解合意の支払い金を求める手法で飲食店や美容室などを運営している零細業者を狙った商標ブローカーの商標権濫用による紛争が多発し、法律知識のない零細業者が被害に遭う例が多くなり、制度の見直しを求める声が高まっていた。

こうした紛争は、零細業者が商標登録をせず、事業者登録だけを行なっていることが背景になっている。それを悪用して零細業者の事業が軌道に乗り始めると、その商号と同一または類似の商標を先に登録して商標権を行使し、「商標権侵害だ」「民事・刑事上に訴えかける」と脅迫して和解合意の支払い金を要求するのが商標ブローカーの主な手口だ。

現在の商標法では、第51条に商号などを「普通に使用する方法で表示」した場合には、商標権の効力が及ばないと規定しているが、「普通に使用する方法」という表現が曖昧であるため、訴訟を通じて裁判で最終的に決定するしかない。そのため、看板などに商号を表示する場合、文字だけでなく記号などを加えると、商標権の効力が及ぶか否か曖昧になってしまう。これまでは、「登録した商標権に効力がある」と商標ブローカーに脅迫された場合、零細業者は、その商号を変えるか、和解合意金を支払わなければならなかったので、関係機関に多くの苦情が寄せられていた。

今回の改正により、商号を記号などと合わせて使用する場合であっても、それを商標権が登録される前から使用していれば、商標権の効力が及ばない範囲となるよう内容を具体化して零細業者が自分の商号を引き続き使用する事ができるようになる。

一方、現行の商標法第51条では、登録済みの商標を模倣して商標を登録し、あとから商号として使用する場合にも、「普通に使用する方法」であれば使用が出来るものと解釈される可能性があり、適法に登録された商標権の効力が及ばなくなるという指摘があった。

商標法の改正案によると、商号と商標の登録、または使用の前後を基準にして、商号が先に使用されていた場合、その商号を引き続き使用することができるが、登録されている商標を模倣して商標登録した後、最初からその商号を使用していれば、商標権者の営業上の信用を悪用しない場合にだけ、引き続き使用できるようにするなど、商標権と商号の両方を保護するための内容が盛り込まれている。

今回の改正は、特許庁がこれまで把握してきた苦情、そして零細業者、主な企業、学界、業界が参加した懇談会などから把握した改正への要求を商標法に反映したもので、商標使用の公正な秩序を確立して商標権の行使を不正から守り、零細業者が使用している商号を商標権者の悪質な権利濫用から保護するために見直したものである。

特許庁の商標デザイン審査局の李ジュンソク局長は、「今回の商標法の改正案は、立法予告、政府機関の協議などを経て10月頃に国会に提出する予定で、今回の改正により零細業者を相手にした商標ブローカーの商標権濫用が大幅に減少すると期待されているほか、企業の大切な商標権の保護と、企業が築いてきた営業上の信用に便乗しようとする不正競争行為によりその効力が無くなることを防げる」とみている。

そのほかに、韓国特許庁の今回の商標法改正案には、商標の不使用取消審判制度を見直し、不使用・取消審判が請求された場合には、係属している出願の審査を中止し、不使用・取消審判が終了してから再び審査して商標を登録させることにより、出願人の本人が改めて商標登録を出願する手間が省かれ、商標権の取得機関を少なくとも9ヵ月早めることになり、出願者の利便性を高める内容も盛り込まれている。

商標法の改正案は、現在立法予告中で(2012年7月17日まで)、詳細な内容は韓国特許庁のホームページで(www.kipo.go.kr)確認できる。

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