知的財産ニュース 窓ガラスがディスプレイに?

2012年11月16日
出所: 韓国特許庁

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酸化物の薄膜トランジスタの特許出願が盛んに

最近、窓ガラスが情報を提供するように見える透明ディスプレイ技術が脚光を浴びている。この透明ディスプレイ技術は、情報映像を示すディスプレイ素子に必要に応じて光を透過させる、透明窓ガラスに転換できるようにするものだ。この技術の市場潜在力は非常に大きいとされている。

透明ディスプレイ技術は、酸化物の薄膜トランジスタ(TFT)を利用して具現化する。ディスプレイを動かす従来方式TFTは、素材がシリコンだったため不透明だったが、シリコンに代替する酸化物の半導体が開発されたことで、透明なTFTの製造が可能になったのだ。

この酸化物TFTの特許出願が盛んになっている。酸化物TFTは、高い移動度を持つ。移動度は、磁場に対する移動速度の比で、その値が大きければ大きいほど、大画面での高速駆動が可能になる。

韓国特許庁によると、酸化物TFT技術の特許出願は、2006年以前までは30件弱だったが、2007年から年間60件以上が毎年出願されているという。2003年度以降からの累積出願件数は、597件だ。韓国人による出願が407件(68%)、外国人の出願が190件(32%)を占めている。

2003年度以降の出願件数を出願人別に分析すると、LGディスプレイ106件(18%)、サムスン電子91件(15%)、日本の半導体エネルギー研究所85件(14%)、サムスンディスプレイ79件(13%)、韓国電子通信研究院21件(4%)、キャノン19件(3%)、出光興産18件(3%)、富士フィルム16件(3%)、LG電子13件(2%)などだ。

今年1月、米国ラスベガスで開かれた世界最大の電子製品見本市では、酸化物TFTを搭載した透明スマートウィンドウが公開された。その他、透明モニター、透明キーボード、そして透明ディスプレイを利用した拡張現実など、様々な形態の透明ディスプレイも開発されている。

一方、酸化物TFTは、高電子移動度を持っているため、従来のTFTより高画質と高速駆動に適合している。アップルは、4月に酸化物TFTを適用した「新しいアイパッド」を発売した。高画質の高速駆動製品における酸化物TFTディスプレイへのニーズはさらに高まると予想されている。

韓国特許庁の関係者は、透明ディスプレイ技術をリードしていくためには、そのコア技術である酸化物TFTの研究開発とともに、法律で技術を保護する特許を確保すべきだと強調した。また、本格的な量産化に備えるため、常用化技術開発への取り組みも必要だと述べた。

資料1:酸化物TFTの年度別における国内出願件数

年度別の国内における出願件数

2006以前

2007

2008

2009

2010

2011

2012.10

累計(%)

内国人

13

48

70

81

66

59

70

407(68%)

外国人

17

14

12

52

49

28

18

190(32%)

合計

30

62

82

133

115

87

88

597(100%)

図:酸化物TFTの年度別における出願現況 棒グラフ

資料2:酸化物TFTの出願主体別の出願現状(期間:2003~2012.10)

出願人

出願件数

割合(%)

LGディスプレイ

106

18%

サムスン電子

91

15%

半導体エネルギー研究所

85

14%

サムスンディスプレイ(SMD、サムスンSDIまで含める)

79

13%

韓国電子通信研究院(ETRI)

21

4%

キャノン

19

3%

出光興産

18

3%

富士フィルム

16

3%

LG電子

13

2%

その他

149

25%

合計

597

100%

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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