知的財産ニュース 夢の素材「グラフェン」を利用した薄膜トランジスタの飛躍

2012年8月17日
出所: 韓国特許庁

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グラフェン薄膜トランジスタ関連特許の出願が急増

韓国特許庁は、夢の新素材だと言われているグラフェン(Graphene)[1]薄膜トランジスタの特許出願が急増していると発表した。

グラフェンは、優れた電気輸送機能と柔軟性という特徴を持っているため、テレビ画面が見られる透明ガラス窓、フレキシブル・ディスプレイ、電子紙、着るコンピュータなど、様々な電子素子に利用できるため、応用分野の範囲が非常に広い素材だといえる。

韓国特許庁によると、ここ5年間(07~11年)、グラフェンを用いたトランジスタの韓国特許出願を調査した結果、2007年1件に過ぎなかった出願数が2008年5件、2009年9件、2010年31件、2011年37件と2~3年の間に急増したという(資料1を参照)。

これまで、シリコン半導体の微細な加工技術やデータ処理速度の限界を克服するため、学会や産業界は、シリコンに代わる新しい物質としてグラフェンを研究・開発してきた。

特に、韓国大手企業の研究所が最近、互換性を持った新しい構造のグラフェントランジスタを発表し、関連技術の特許出願はさらに増加すると見られている。

出願人別では、サムスン電子が32件、各大学内の産学協力団26件、韓国科学技術院6件など、サムスン電子と大学内の産学協力団の特許出願が大半を占めている(資料2を参照)。

また、この5年(07~11年)間、国家別の出願を見ると、韓国77件、米国49件[2]、日本9件[3]と調査され、半導体大国である韓国がグラフェンを用いたトランジスタ開発にも積極的に取り組んでいることが示された。

韓国特許庁の関係者は、「大手企業が半導体の主役になり得るグラフェンを用いたトランジスタ常用化の新しい道を切り開いたので、産・学・研の研究結果が特許出願に拡大されると見ている」と述べた。

資料1:グラフェン(Graphene)

グラフェンは、蜂の巣のような六角格子の構造となっている黒鉛から最も薄い厚さで切り取ったようなナノ物質を意味する。2次元の平面形態であり、厚さは0.2mm、すなわち100億分の2mほどと非常に薄く、電気的・機械的・化学的な特徴が優秀かつ安定的な優れた電導性を持った物質だ。シリコンより100倍も速く、銅よりは約100倍の電流を流せる。また、優れた光透過率と弾性力を持つ新素材であるうえ、軽い元素である炭素だけに構成されているため、1次元または2次元のナノパターンを加工しやすく、これを活用すればグラフェンの半導体‐導体性質を調整できるほか、炭素の持つ多様な化学結合を利用して透明ディスプレイ、超高速半導体、高効率太陽電池、センサー、2次電池のエネルギー貯蔵所など、広範囲な機能性素子の製作も可能になる。

図1:グラフェンの模式図

図2:透明ディスプレー

透明ディスプレー

折り畳みできる透明ディスプレー

資料2:グラフェンを用いたトランジスタ関連の特許出願現況 韓国特許庁への出願

1. 年度別・内外国別の特許出願現況

区分

2007

2008

2009

2010

2011

総計

内国

1

4

9

29

34

77

外国

1

2

3

6

合計

1

5

9

31

37

83

2. 年度別・国別の特許出願現況

内外国

国家

2007

2008

2009

2010

2011

総計

内国

韓国

1

4

9

29

34

77

小計

1

4

9

29

34

77

外国

米国

1

2

3

日本

2

2

ドイツ

1

1

小計

1

2

3

6

合計

1

5

9

31

37

83


注記

[1] 資料1・2を参照
[2] 米国特許庁のDBで検索した資料であり、出願後18カ月が過ぎてから公開されるため、2010~2011年の出願件全て又は一部は未反映
[3] 日本特許庁のDBで検索した資料であり、出願後18カ月が過ぎてから公開されるため、2010~2011年の出願件全て又は一部は未反映

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