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知財判例データベース 需要者を欺瞞するおそれがある登録商標と対比される先使用商標は、必ずしも国内全域にわたり需要者や取引者に知られていないとしても保護される

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
原告 個人A(商標権者) vs 被告 B社
事件番号
2019フ11688
言い渡し日
2020年09月03日
事件の経過
原審破棄差戻し

概要

大法院は、商標登録をせず営業していた被告が、自身の商標と類似の商標を登録した企業(原告)を相手取って提起した商標登録無効審判の上告審において、「商標法上、商標登録をすることができない商標として『需要者を欺瞞するおそれがある商標』に該当するには、対比される先使用商標が特定人の商標や商品であると認識され得る程度に知られていなければならない。ただし、先使用商標が必ずしも国内全域にわたり需要者や取引者に知られていなければならないわけではない」という法理を提示した上で、当該事件における登録サービスマークが先使用標章との関係で旧商標法第7条第1項第11号(注1)に該当しないと判断した特許法院の判決を破棄差戻しした。

事実関係

被告は、特許審判院に本件登録サービスマークは特定人の役務を表示するものと認識されている先使用標章とその標章及び使用役務が同一・類似であり需要者を欺瞞するおそれがあるので、旧商標法第7条第1項第11号等に該当するという理由で商標登録無効審判を請求し、特許審判院は被告の請求を認容した。

これに対し、原告は特許法院に審決取消訴訟を請求し、特許法院は、先使用標章は本件登録サービスマークの登録決定日当時、一部地域に局限して知られていたものに過ぎず、国内需要者に特定人の営業の出所表示として認識される程度に知られていたとは認められないという理由で特許審判院の審決を取り消した。

本件登録サービスマークと先使用標章及び指定役務などは、下表の通りである。

先使用標章

判決内容

1. 関連法理

登録無効審判請求の対象になった登録商標が旧商標法第7条第1項第11号で規定している需要者を欺瞞するおそれがある商標に該当するには、その登録商標や指定商品と対比される他の商標(以下「先使用商標」という)やその使用商品が必ずしも著名でなければならないわけではないが、少なくとも国内の一般取引で需要者や取引者にその商標や商品といえば直ちに特定人の商標や商品であると認識され得る程度には知られていなければならず、その判断は登録商標の登録決定時を基準とすべきである。ここで「特定人の商標や商品であると認識」されたというためには、先使用商標が必ずしも国内全域にわたり需要者や取引者に知られていなければならないわけではなく、特定人の商標などとして認識されたか否かは、その商標の使用期間、方法、態様及び利用範囲等と取引の実情などに照らしてみるとき社会通念上客観的に相当知られているかを基準に判断すべきである。このような法理は旧商標法第2条第3項によってサービスマークの場合にも、そのまま適用される。

2. 先使用標章が知られている程度

イ. 原審の判決理由と原審が適法に採択した証拠によって把握できる事情

1) 被告の社内理事である訴外1は、被告設立前に商号を「웨딩쿨」(「ウェディングクール」のハングル)として「オンライン情報提供業」に関する事業者登録をし、被告の代表理事である訴外2は、同じ商号でウェディングコンサルティング業とウェディングドレス貸渡し業などを本格的に営み始め、先使用標章は、その頃から上記役務の出所を表示する標章として用いられてきた。

2) 訴外2が運営していた「웨딩쿨」個人事業体(以下「被告側」という)は、2005年7月頃から原告の本件登録サービスマークの登録決定日である2012年1月19までの約6年6カ月間、大邱地域で計23回にわたり結婚、ウェディングファッション、婚礼用品などをテーマにした大規模な博覧会を主催した。上記博覧会の名称には大部分「웨딩쿨」という文言が含まれており、イベント進行中に使用された案内文や横断幕などにも上記博覧会を開催した主体が「웨딩쿨」であると表示され、上記博覧会と関連した文章や写真にも「웨딩쿨」という表示と共にインターネットに多数掲載された。

3) 被告側は2010年頃から2011年頃まで大邱MBC TVとラジオを通じて上記博覧会などを広報する内容の広告をし、上記広告にはハングル「웨딩쿨」または英文字「Wedding Cool」で構成された標章が使用された。そのうちTV広告は大邱・慶北地域を中心に2010年には121日、2011年には51日にわたり毎日3回ずつ、1回につき20秒~30秒の分量で放送され、広告費全体で7,700,000,000ウォンが支出された。これと併せて、上記博覧会の開催を知らせながら被告側を大邱・慶北地域のウェディングコンサルティング企業として紹介する内容のインターネット記事も、その頃インターネットに数件掲載された。

4) 2006年から2011年まで大邱・慶北地域で結婚した者のうち相当数が被告側と婚姻相談をするかまたはウェディング契約をするなどにより被告側のサービスを利用した。同期間の被告側の売上高は2006年176,519,512ウォン、2007年255,392,402ウォン、2008年277,572,595ウォン、2009年426,653,096ウォン、2010年539,733,823ウォン、2011年598,591,347ウォンなどと毎年増加してきた。

5) 被告側は、2009年12月頃に大慶大学と産学協力約定を、2011年10月18日に韓国健康管理協会大邱支部と大邱地域の各種健康関連事業について協力して進める内容の業務協約を、2011年12月頃に大邱芸術大学と産学協力約定を各締結するなど、各種社会活動も活発に進めてきた。

6) 大邱・慶北地域の同業界に従事する者の多数は、先使用標章が本件登録サービスマークの登録決定日頃に大邱・慶北地域で被告側の出所表示として相当知られていた旨の陳述をしている。

7) インターネットポータルサイトで「웨딩쿨」をキーワードに設定して検索すると、先使用標章が使用され始めたときから本件登録サービスマークの登録決定日頃までに数千件のブログ文章とカフェ(インターネット上のコミュニティ)文章が掲示されていることが確認され、そのうちの大部分は被告側社員が被告側の事業または博覧会開催を広報する内容であるか、被告側のサービスを利用して博覧会を行ってきた者が感想を明らかにした内容である。

ロ. 上記のような先使用標章の使用期間と方法及び態様、先使用標章に関する広告・広報の程度とメディア報道内訳、売上高の増減の推移、同業界の認識などの様々な事情を先に見た法理に照らして詳察すると、被告側の先使用標章は、本件登録サービスマークの登録決定日頃に国内の一般取引において需要者や取引者に少なくとも特定人の商標として認識され得る程度には知られていたと見るのが妥当である。

3. 結論

それにもかかわらず、原審は、先使用商標が国内全域で登録商標の指定商品の需要者や取引者に特定人の商標や商品として認識される程度に知られていたものでなければならず、先使用商標の使用が国内の一部地域に限定された場合でも、先使用商標が登録商標の指定商品の国内需要者及び取引者全体を基準に判断したとき、特定人の商標や商品として認識される程度に知られているものと見ることができなければならないと前置きした上で、先使用標章は、本件登録サービスマークの登録決定日頃、その使用業種に関して国内需要者と取引者に特定人の営業の出所表示として認識されていたとは認め難いという理由で本件登録サービスマークが先使用標章との関係で旧商標法第7条第1項第11号に該当しないと判断した。このような原審の判断には旧商標法第7条第1項第11号の「需要者を欺瞞するおそれがある商標」に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼした誤りがある。

専門家からのアドバイス

従来の大法院判例は「登録無効審判請求の対象になった登録商標が旧商標法第7条第1項第11号で規定している需要者を欺瞞するおそれがある商標に該当するには、その登録商標や指定商品と対比される他の商標やその使用商品が必ずしも著名でなければならないわけではないが、少なくとも国内の一般取引で需要者や取引者にその商標や商品といえば直ちに特定人の商標や商品であると認識され得る程度には知られていなければならない」というものであった。

上記判示のうち「国内の一般取引で知られている」という要件の意味が、国内全域にわたり需要者や取引者に知られていなければならないのかについて疑問が生じ得る(当該事件の特許法院判決がとった立場であった)。これに対し大法院は、本判決を通じて、旧商標法第7条第1項第11号後段が適用されるために「先使用商標が必ずしも国内全域にわたり需要者や取引者に知られていることが要求されるわけではない」という法理を初めて提示した。

こうした本判決は、旧商標法第7条第1項第11号後段の先使用商標が国内需要者などに特定人の商標として認識されたか否かを判断する上で考慮すべき要素をより具体的に明らかにしたという点で意義がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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