知財判例データベース 現代社会の事業特性を考慮してスマートフォンのメッセンジャープログラムと運送予約業、宅配業等との特殊関係を認めた事案

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告個人 vs 被告株式会社カカオ
事件番号
2017ホ5009
言い渡し日
2018年02月06日
事件の経過
確定

概要

「運送予約業、宅配業等」を指定サービス業として登録された本件商標「カトク」に対して、現代社会の事業特性を考慮したうえで、スマートフォンメッセンジャープログラムとして周知の先使用商標「KATALK 카톡(カトク)、KAKAOTALK、카카오톡(カカオトーク)」に対する模倣商標に該当すると見て、その登録を無効にした事件

事実関係

被告は、2010年にスマートフォン用メッセンジャープログラムである「カカオトーク(KAKAOTALK)」を市場に投入し、2013年頃にはメッセンジャープログラム利用者数が1億人を突破した。当該プログラムは「カトク(KATALK)」という略称でも広く使用されている。 2012年頃「カカオトーク(KAKAOTALK)」にてモバイルマーケティングプラットフォームサービスを開始したが、このサービスを用いてマーケティングを繰り広げる企業の業種が101以上に達し、これらの企業を「友達」として登録した数は約3,600万件であった。また、2012年までに「カカオトーク(KAKAOTALK)」をゲーム配布プラットフォームとして使用した「エニパン」というゲームの加入者が300万人に達する等、ゲーム配布プラットフォームとしても相当な売上を収めた。 一方、原告は、本件商標を商品類区分第39類「運送予約業、運送情報提供業、運送業、観光客運送業、構造運送業、宅配業等」に対して出願し、2014年4月14日に登録を受けた。 これに対し、権利者である被告は、本件商標は自身の先使用商標と誤認・混同のおそれがあり、不正の目的に基づいた模倣出願であることを根拠として無効審判を請求し、特許審判院は、被告の主張を受け入れて認容審決を下したところ、原告はこれを不服として特許法院に訴えを提起した。

判決内容

関連法理

旧商標法第7条第1項第12号(注1)(2016年2月29日法律第14033号で改正される前のもの)は、国内又は外国の需要者に特定人の商品を表示するものであると認識されている商標が国内に登録されていないことに付け込んで第三者がこれを模倣した商標を登録して使用することによって、模倣対象商標に築かれた営業上の信用等に便乗して不当な利益を得ようとする等の方法により模倣対象商標の使用者に損害を及ぼそうという目的で使用する商標は登録を許容しないという趣旨である。 不正の目的があるかを判断するときは、模倣対象商標の認知度又は創作の程度、登録商標と模倣対象商標の同一・類似の程度、登録商標の出願人が登録商標を用いた事業を具体的に準備したかどうか、登録商標と模倣対象商標の指定商品間の同一・類似乃至は経済的牽連性の有無、取引実情等を総合的に考慮しなければならない。上記のような判断は登録商標の出願時を基準としなければならない。

被告の先使用商標が知られている程度

被告が「カカオトーク(KAKAOTALK)」を市場に投入して以来、国内利用者数が増加し続け、2012年には3,000万人が利用していた点、被告をゲーム配布プラットフォームとして使用したゲームの加入者が300万人を超えていた点、被告が提供するエモティコンのダウンロードが1億3,000万件を超えていた点等を全て考慮すると、被告の先使用商標は、本件商標出願当時に周知著名な商標に該当していたと言える。

本件商標と先使用商標の類似如何

本件商標と先使用商標は構成文字の差により外観が相違し、両商標いずれも造語商標として観念の対比も難しいが、本件商標と先使用商標「KATALK、カトク」は呼称が一致するので、両商標は類似する。

原告の不正な目的の存否

i)被告が提供するメッセンジャーサービス「カカオトーク」又は「KAKAOTALK」の略称である「カトク」や「KATALK」は、被告が創作した造語であり国内で容易に思いつき難い構成の標章である点、ii)被告が2013年1月頃、従来のナビゲーションサービスをカカオトークにリンクしたモバイルナビゲーションサービスまで公開し、原告の出願以前に既にカカオトークを運送業等と連係させられる基礎を築いておいたと見られる点、iii)著名な商標においては全く異質な分野に使用される場合でも、著名商標権者やそれと特殊な関係にある者によってそのサービスが提供されるものと認識され得る点、iv)本件商標の指定サービス業のうち通信手段と直接的に関連した運送予約業、運送情報提供業等は被告の先使用商標のメッセンジャーサービスと密接な経済的牽連性が認められ、残りの運送業、観光客運送業、構造運送業、宅配業等もメッセンジャーサービスをプラットフォームとして直接活用したりこれと連係して使用できるものなので、これらも被告と特殊な関係にある者によって提供されるものと認識され得る点等に照らして、原告が先使用サービスマークに築き上げられた営業上の信用等に便乗する意図が認められる。

結論

原告は周知の被告の先使用商標に築き上げられた信用に便乗して不当な利益を得ようとする目的で本件商標を出願したものであるため、旧商標法第7条第1項第12号に該当する。

専門家からのアドバイス

本件は、本件商標の指定サービス業である「運送業、宅配業等」が先使用商標の使用サービス業であるスマートフォンメッセンジャーサービスとは多少異質なサービス業と認識されるとしても、被告のメッセンジャーサービスの認知度及び被告のメッセンジャーサービスをプラットフォームとして直接活用したりこれと連係して使用できる点等を考慮して、本件商標が被告と特殊な関係にある者によってそのサービスが提供されるものと誤認・混同するおそれがあると見た事案である。これはスマートフォンメッセンジャーサービスが単純な通信手段を超え、多様な産業分野の各種サービスを連係するプラットフォームの役割をも果たしているという現代社会の事業特性を考慮してサービス業間の牽連関係を判断したという点で意義がある。

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