知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国における知的財産権QRコード表示

2024年06月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.189)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

韓国特許庁は5月6日に、電子商取引(EC)プラットフォームの事業者・販売者および一般国民を対象に、「知的財産権QRコード表示推奨キャンペーン」を実施すると発表しました。知的財産権の正しい表示への認識向上や虚偽表示の根絶を目的とし、スマートフォン等で手軽にQRコードを読み取ることによって、その権利がどのような状況にあるのかを確認できる点を周知し、正しい知財の認識を啓蒙することが目的となっています。

1.知的財産権の状況を確認

特許権や、デザイン(意匠権)、商標権などは、特許庁における審査を経て、登録要件を満たしたもののみが登録され、その権利の効力を発揮します。ところが、ただ単に出願しただけであって、登録には至っていないものにおいて、あたかも権利の効力を有するかのような表記がなされているもの等が存在しています。例えば、「特許出願済み!」などと表記されているものは、特許出願した事実は真実であっても、特許出願は誰でも可能なため、その事実をもって、何かしらの有利な状況有無を確認することは困難です。もし、「特許権取得済み」のような状況であれば、少なくとも特許庁における審査を通過し、特許権として登録された事実は確認できます。ただし、特許権を取得していたとしても、登録期間を過ぎていたりすると、当該権利の効力はすでに終わっていることもあります。このような種々の状況を正しく理解することは、誤った商品やサービスの認識を防ぐことになり、重要となります。また、あたかも「特許権」を取得しているかのように、悪意を持った表示で、消費者を惑わすような表示が行われることもあり、虚偽表示と認められることもあります。多くみられる知財権虚偽表示の例としては、製品に適用されていない知財権登録(出願)番号の表示、拒絶された出願(登録)番号の表示、消滅された権利の表示、出願中の製品に登録番号を表示、名称の誤表示、出願していない商標・製品に出願(登録)と表示する行為などが含まれます。

2.知的財産権のQRコード

現在、韓国特許庁に出願し、登録になった特許には、特許証が発行されます。ソウルの街中のお店にも、この特許証が飾られている光景を時折みかけます。この特許証には、その登録された発明に関する情報などが記載されていますが、QRコードも記載されています。スマホでこのQRコードを読み込めば、当該特許権に関する詳細な状況を確認することができます。このように容易に知財権の出願や登録の状況を確認できるQRコードのより一層の利用促進を目指して、今回のキャンペーンが実施されることとなりました。

3.ECプラットフォームでの必要性

昨今、現実の実店舗での買い物よりも、インターネットを通じた、ECプラットフォームでの買い物を行う割合が増加してきました。ECプラットフォームでは、現実の物品等の確認ができないため、消費者が知財権の虚偽表示の真贋判定が難しいとの指摘があったということです。
そこで韓国特許庁は、ECプラットフォームの販売者を対象に懇談会と教育活動などを行い、消費者が知財権情報をQRコードでスキャンして簡単に確認できるように、当該知財権QRコードの表示を推奨していく方針を発表しました。また、ガイドライン、SNSイベント、PR動画の制作などでキャンペーンを広く展開していく計画も策定中とのことです。さらに、韓国知識財産保護院ウェブサイトからは、知財権QRコードで知財権情報を確認する参加型イベントも行われ、参加者には抽選で特典を提供するとのことです。

知財権情報を提供するKIPRISのトップページ

まとめ

今回の発表にあたって、特許庁の産業財産保護協力局長は「知的財産権表示は製品に対する消費者の信頼性向上や不要な知財権紛争を事前に防ぐ効果がある」とし、「今回のキャンペーンを実施することで、正しい知財権表示の重要性について消費者の認識が高まるきっかけになってほしい」と述べたとのことです。虚偽表示などの防止としても重要ではありますが、身近な物品などが、実は知的財産権を取得しているという新たな発見になった場合には、どのような状況になっているのか、自分のスマホからその状況を見てみるのも面白いかもしれません。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

どうなる韓国 新・知財最前線は今

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195