知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)知的財産を外部から取り入れる韓国企業

2017年05月10日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.104)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野 秀生(特許庁出向者)

技術や流行の変化が早い現代においては自社が持っていない特許等の知的財産を外部から導入することが注目されています。また、自社で使わない特許等を他社に譲渡したり、ライセンスすることへの経営上の要請が高まっています。本稿では韓国における知的財産の取引現状について、韓国特許庁発行の2016年度知的財産活動実態調査の数字を引用しつつ紹介します。

知財導入の現状

(1)導入した企業の割合

2015年の1年で国内から知的財産を導入した企業の割合は10.5%となっています。
日本では、日本特許庁が2014年度に行った調査の報告書(「未利用特許等の知的財産取引ビジネスの実態に関する調査研究報告書」2015年2月)によると、知的財産を導入した経験がある企業の割合が8.6%ですから、日本よりは導入割合が高いと言えます。

(2)1企業当たりの件数と導入形態

2015年に導入実績のある1企業当たりの形態別導入件数(次の図)を見ると、やはり大企業が件数は多いですが、導入形態は企業規模別に傾向がはっきりと分かれています。大企業では購買・譲受で知的財産を自社のものとするケースがほとんどであるのに対し、中堅企業では実施許諾(ライセンス・イン)のケースが主であり、中小企業では相互実施・共有のケースが多くなっています。

大企業は購買・譲受33件、相互実施・共有1件、実施許諾0件、中堅企業は実施許諾17.7件、購買・譲受2.8件、相互実施・共有0件、中小企業は実施許諾1.6件、購買・譲受2.6件、相互実施・共有3.3件。これを全体で平均的にみると、実施許諾4.5件、購買・譲受2.8件、相互実施・共有3.1件。

[図]2015年に導入実績のある1企業当たりの形態別導入件数

(3)導入元

過去3年間で外部から知的財産を導入した企業の比率を導入元別にみると、全般的に国内企業から導入する企業比率が多い(5%強)ものの、大企業は海外企業からが多く(5.3%)、国内大学や公共研究機関が少ない(いずれも1%以下)のに対して、中小企業は海外企業からは少なく(0.5%)、国内大学(3.8%)及び公共研究機関(4.9%)が高いことが特徴的です。
中堅企業は、下請け等の企業から導入する企業が多いですが、大学や海外企業から導入する企業も6%強と比較的多くなっています。
上記(2)導入形態と併せ見ると、大企業は国内外の企業から知的財産を購入する傾向が強いことがわかります。今後の計画についても、大企業は国内外企業からの知財導入を拡大すると答える企業が最も多いのに対し、中堅・中小企業は国内大学・公共研究機関からの導入を拡大すると答える企業が最も多くなっており、対照的な傾向を示しています。

知財提供の現状

(1)提供した企業の割合

2015年の1年で知的財産を国内企業等に提供(売却等)した企業の割合は2.0%と、導入した企業の割合と比べて低くなっています。
日本では、前記調査報告書によると、調査時点で知的財産を提供した経験がある企業の割合が11.8%です。日韓の数値の単純比較はできませんが、日本では導入企業より提供企業の方が多いのに対し、韓国では逆の傾向になっています。

(2)1企業当たりの件数と導入形態

2015年に提供実績のある1企業当たりの提供件数を見ると、全体的には3.1件、大企業13.5件、中堅企業2.9件、中小企業2.2件と、飛び抜けて大企業が多くなっています。ただ、提供形態を見ると売却・譲渡の形態と、実施許諾(ライセンス・アウト)の形態との比率は、全般的に1:1程度となっています。

(3)大学・公共研究機関の実績

2015年の1年間1件以上の知的財産を国内企業などに提供した大学・公共研究機関の比率は全体の67.7%で、平均売却/移転件数は62.5件となっています。
ただし、特許に関して何らかの形で活用を行った比率を見ると、企業の場合は75.8%の特許を活用しているのに対し、大学・公共研究機関では34.6%に留まっています。自身で特許を実施するのが難しい大学・公共研究機関の場合は、他社への提供を通じて更に特許権を活用することが課題となっています。

(4)海外への提供

海外に知的財産を提供した比率は、企業の場合のデータは示されていませんが、大学・公共研究機関の場合、全体の11.5%となっています。韓国では知識財産に関する貿易収支がマイナス(日本はプラス)を続けていることからも、全体的に海外からの導入の方が提供よりも多いという傾向が続いているものと考えられます。
上記(1)で見た傾向からも、技術は自社開発を好む日本と、必要と思えば外部からの導入をためらわない韓国の特徴が表れていると考えられます。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 笹野秀生(特許庁出向者)
95年特許庁入庁。99年に審査官昇任後、情報システム室、審判部審判官、(財)工業所有権協力センター研究員、調整課品質監理室長を経て、2014年6月より現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:浜岸、曺(チョウ)、柳(ユ)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195

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