知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2次電池に関する特許出願が急増!

2023年11月08日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.182)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2023年9月18日に、韓国特許庁から2023年上半期における特許出願のうち、国家コア技術の一つである「2次電池」に関する出願が急増している状況が報告されました。世界的な電気自動車(EV)の開発・普及にともない、標準特許に関しても重要となる動きであり、非常に興味深い結果となっています。今回の報告について、特許出願の面から解説を行います。

1.2次電池とは

今回の記事内容は2次電池に関する内容となりますが、2次電池に対して、一次電池も存在します。一次電池は、アルカリ乾電池やマンガン乾電池のように、使用に伴って電池の起電力が減少するもので、使い切り型のものを指します。これに対して2次電池は、使用に伴い起電力は減少するものの、充電により再度起電力が回復し、繰り返し使用することが可能な電池を指します。目覚まし時計のような身近な製品には、一次電池の利用もまだ多い状況ですが、徐々に、繰り返し利用できる2次電池の利用も増加して一般的になってきました。家庭の電力を蓄えるような大型の2次電池は少し前から普及がなされてきましたが、昨今は EV等の動力としても、2次電池の利用が増加しており、今後もこの傾向が継続するものと思われます。

2.韓国における特許出願に見る動向

韓国においては、産業技術保護法で「国家核心(コア)技術」が指定されています。具体的には、半導体・ディスプレー、2次電池、先端モビリティ、次世代原子力、先端バイオ、宇宙航空・海洋、水素、サイバーセキュリティー、人工知能、次世代通信、先端ロボット・製造、量子となっています。これらの技術に関連する産業は、韓国が世界に誇る高レベルの技術を有する分野であったり、世界的に注目される技術であったりして、研究開発のみならず、技術流出に対する各種検討が現在最も進められている分野となります。これらの技術について韓国国内では、前年度と比べて特許出願がどのような推移を示したのかという報告が 今回のポイントとなっています。
特許の出願件数全体でみますと、2022年上半期が103,437件であったところ、2023年上半期では107,693件となり、4.1%増とやや微増していることがわかりました。コロナ禍の影響にもかかわらず、特許出願件数が減少していないことがわかります。これから経済活動が活発化するにつれ、さらなる増加が期待されます。このような状況の下、上記した国家コア技術は、13.6%増と全体の増加率に比べて3倍以上も増加していることがわかりました。
この中でも特に出願件数が多かったものは、2次電池分野で、前年同期比(1~6月)で 890件増加し8,660 件(11.5%増)となり、高い伸び率となりました。欧州連合(EU)では脱炭素社会に向けてガソリン車の新車販売を2035年から禁止する方向で検討を進めており、世界的にもこの潮流が主流となってきています。この動きに合わせて、2次電池の利用が見込まれるため、技術開発も活発化しており、韓国においても、同技術分野の特許出願が活発化している点がうかがえます。なお、この点に関連して、「韓国貿易協会の報告書(2023 年9月)によると、2023年上半期の韓国の2次電池の輸出規模は、前年同期比66%増の74億 9,000万ドルとなった」と報告もなされています。
また従前から韓国企業の強みである半導体分野においても、特許出願件数が伸びているようです。半導体分野の出願件数は前年同期比881件増加し6,580件(15.5%増)となったと報告されています。主な特許出願人としては、サムスン電子、LGディスプレーなどが挙げられており、2023年上半期の半導体分野の多出願において、上位5位の出願人による出願増加率は、前年同期比で37.6%増と高い伸び率を示しているとのことです。

3.将来展望

特許庁の産業財産情報政策課長は、「世界的な経済低迷が続く中でも、2023年上半期において、2次電池など国家コア技術分野を中心に韓国企業からの特許出願件数が増加したことは有意義である」と述べ、「最近、先端技術関連の特許権を巡る紛争が頻繁に発生しているため、これから、特許出願が増加すると思われる。そのため、韓国企業が特許権を迅速に取得できる専門審査官の確保など、国家レベルの支援政策が必要だ」と述べたということです。すでに、半導体に関しては、迅速な審査を行うことができるように、韓国特許庁内に新たな審査体制を構築済みであり、今後はその他の国家コア技術に対しても、半導体と同様の新たな審査体制を構築することも視野に入れて検討が進められています。韓国での国家コア技術の特許審査を迅速化させ、その結果を世界に展開する戦略が進められることとなります。今後もこれらの技術の特許出願動向に注目して、世界的な技術動向を把握することがビジネス戦略として有効だと考えられます。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学 客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT 知財人材部長等を経て現職。

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